第216話 悲劇
「餌とは随分な言い方だな、黒服。私たちに何か用があるのだろう、他の町のように無闇に破壊してるようではないからな。」
「勘がいいな、でかい女!まあ、焦んなくてもすぐ答え合わせさせてあげるよ!」
ズザッ!
捉えられた巨人族の人達が、魔法だろうか、見えない何かでクロウたちの前に引き摺り出される。
「こいつっ、ふざけたことしやがってーー。」
「クロウ、ここはノエルランスとリィンに任せましょう。2人が今の状況では最適だわ。」
「……ああっ、分かった。」
クルッ。
2人はノエルとリィンを振り向く。
そして、意図を察した2人は前に出る。
「蠢く会の人ですよね、なぜこんなことをするのですか、何が目的ですか!」
「そんなの簡単だ、白き世界成就のために決まっているだろう!それに、誇りに思ってもらいたいね、その贄にお前たちもなれるのだから!」
「何を言ってる!その人達にも生きたい未来がある、勝手に人生を決める権利を君は持ち合わせてない!」
「いいやあるね、あたしはこの世界を変える者、いわば未来の道先案内人、だから許されるのさ!」
「そんな理想間違ってます!みんな、平等に未来を選ぶ権利がある、それに、あなた達が作ろうとしてる世界に、笑顔で暮らしてる人達のビジョンがあたしには浮かびません!」
ライアに、ノエルとリィンが説得を始める。
「その人達が罪を犯しましたか?捕まらなくちゃいけないことをしたんですか?」
「したね、あたしに歯向かった!力を持ち、未来を作れるこのあたしに!」
「驕るのも大概にするんだ!君は、この世界の神にでもなったつもりか!無駄に命を散らすな、その人たちを解放しろ!」
「神……か、それはいい響きだね。けど、あたしは神すらも超える存在になる!こいつらを使ってね!」
シュインッ!
ライアの右手には、大きな赤い石が。
その石は奇妙に光を放ち、まるで吸い込まれそうな悍ましさを持つ。
「なんだ、あの赤い石は?」
「クロウ、あれってあなたの指輪と同じものじゃない?」
「え?」
スッ。
クロウが自分の嵌めてる指輪を見ると、
カチャッ、カチャッ。
大きな赤い足に反応するかのように、指輪の石も震える。
「なんだ、何が起きてる?」
「見て!ミラさんの指輪も!」
サリアが指差す先には、ミラもクロウと同じく嵌めている赤い石のついた指輪が震えていた。
「私の指輪も反応している、あの石、まさか!」
ズザッ!
ミラは斧を構えライアに向け突撃する。
「おい!ミラ!」
「アレス!いや、誰でもいい!あの石を壊せーー。」
「もう遅いよ、この子はもうお腹を空かせて待ってるの。ほーら、美味しいご飯だよ!しっかり食べつくしな!」
スッ!
バギーンッ!
ライアは石を巨人族たちに向け投げ、バラバラに砕く。
すると、
ヒュイーンッ!!
赤い光が周りを包み、巨人族たちの姿が見えなくなる。
「うわぁ!誰か、助けてくれ!」
「くそっ、こんな事をするなんて、下衆な人間が!」
ガギーンッ!
ズザーッ!
ミラは赤い光に弾き返される。
「ミラさん!大丈夫ですか!」
「何が起きてるの!?あの光、すごい嫌な感じしかしない、ノエルくん、これって。」
「最悪だ、この感覚、間違いない。」
ボワァ。
巨人族たちを覆っていた赤い光が、ゆっくりと晴れていく。
その先には、
「ぐぉぉ!!」
今までに見たことのない、全長10mはあるだろう巨大なゴーレムが。
辺りには血が飛び、巨人族が身に付けていただろう装備は地面に落ちていた。
そう、数十人の巨人族達が1体のゴーレムに変えられてしまったのだ。
「ぁ、ぁぁ。」
「ゴーレム、てことはやはり新生モンスターは人が媒体にされてたってことね。鬼畜な軍団ね、蠢く会はーー。」
ドスンッ。
アーシェの目の前で、クロウは膝をつき脱力したように崩れ落ちていた。
「っ!?しまった、クロウ!クロウ!」
「ぁ、ああ、目の前で、あと数メートルの所で、助けられなかった。」
「落ち着きなさいクロウ!あなたのせいではないわ、これは私たちの罪よーー。」
「あははは!!助けられなかったね、クロウガルト!あなたがポヤポヤしてるから、目の前で多くの命が奪われちゃったよ!本当、バカで愚かな人!」
「あなたっ、いい加減にしなさい。次一言でも話したら、塵すら残さないわよ。」
ギリッ。
アーシェの睨みが、ライアを捉える。
「あはっ!いいねその目!ゾクゾクするよ、それにこれは楽しい遊びだよ!未来を作り出すあたし達の力、とくとご覧あれ!」
「ぐぁぁ!!」
ドスンッ!ドスンッ!
ゴーレムが6人に向け突き進んでくる。
「アーシェさん!クロウさんを連れて撤退してください!あたし達4人で、ライラとゴーレムを対処します!」
「くそっ、倒さなくちゃいけないのが元人間と突きつけられた後だと、流石にしんどいね。でも、僕らが解放してあげないと。」
「アーちゃん!早くクロくんを連れてーー。」
「殺す。」
ドクンッ!
クロウの全身を、熱湯のようにふつふつとした血が滝の如く駆け巡る。
それは、そばにいるアーシェにも感じられた。
「ダメ!とらわれないで!あなたは、クロウは私のーー。」
「あの女、殺す!」
パリーンッ!
シュンッ!
指輪の赤い石の割れる音がすると同時に、クロウはアーシェの前から姿を消していた。
「いひっ!」
ガギーンッ!
ライアは、槍でクロウの拳を受け止めていた。
「やっと出てきてくれたね、烏の化け物さん!」
「てめえは、俺が殺す!」
バヒューンッ!
2人から、台風に負けない風圧が生まれる。
「そんな、クロウ……私はまた、守れなかった。」
「アレス、君までとらわれてしまったのか。なら、この手で私が。」
「ぐぉぉ!!」
意気消沈するレイヴァーに、ゴーレムは容赦なく突っ込んでくる。
そこに、一筋の光が。
「まだです!!あたし達の戦いは終わってません!希望はここにあります!」
リィンの心からの叫びが響き渡る。
「リィンちゃん。」
「やることは2つです!1つ目、目の前のゴーレムとライラを倒します!2つ目、クロウさんを取り戻します!いろいろ調べて分かってることもあります、だから皆さん!奇跡を起こすまで諦めないで!」
「……そうだね、僕たちはレイヴァーだ。リーダーがいないと始まらない!まずは僕たちでゴーレムを!その後で、クロウを引きずり戻す!やれるさ、この5人なら!」
「アフロディテ、目の前の現実を受け止めよう。そして、大切な仲間だからこそやるべきことをするんだ!」
「……えぇ、この体がどうなろうとも、クロウを連れ戻す。それが、彼に誓った私の覚悟、待っててね、クロウ。」
烏の仮面を再び付けたクロウ、目の前で作り出された大型のゴーレム、はたしてこの戦いの結末は。
第41章 完
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第41章まで読んで頂きありがとうございました。
無事に合流した6人。
だが、近くの町ではゴブリンが暴れ、更には蠢く会のライラも現れる。
そして、目の前で作り出されたゴーレムと、仮面を再びつけたクロウ。
この戦いは、どうなるのか。
ゴーレム戦スタート!
クロウを救い出せるのか!?
レイヴァー応援してるぞ!
と思ってくださいましたら、
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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!
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