第212話 久しぶりの再会
スタッ、ザザッ。
サリア、ノエル、リィンの3人は怪我をした巨人族たちを手当していく。
「少し痛みますよ、すみません。」
「うぐっ、いいや、生きてるだけでいくらお釣りが出るかわからねえよ。ありがとうな、勇敢なニューマンの姉ちゃん。」
「いえ、あたしだけの力じゃありませんよ。皆さんが命をかけて戦ったから得られた勝利です。」
「ふっ、町長がいたら良かったんだけどな、少し前から姿を見なくなっちまった、俺たちだけじゃ出来る礼が小さくなっちまう。」
「お礼なんて気にしないでください。ですが、町長さんがいらっしゃらない?あたしが来た時はお会いした気がするんですが。」
同じくサリアとノエルも応急処置を終え、怪我のひどい人は医者に診てもらっている。
3人もここまでの経緯を話し合っていた。
「なるほど、ジュールさんからの手紙でレイヴァーの皆さんはエリュシオンにいらしてたんですね。それで、ミラさんを探すために別行動を。」
「うん、サリアたちはミラさんの家のこととエリュシオンについて調べてたから、本人には会えてないんだけどね。もしかしたら、クロくんたちは出会えてるかも。」
「そして、リィンさんはミラさんとエリュシオンに入ってきたと。」
「はいっ、ジュールさんとミラさんから修行をして頂いて、ミラさんがエリュシオンに一度戻るとのことだったので実戦として連れてきてもらったんです。」
「それが、数日前にミラさんが急用が出来たとだけ告げて、この町ヒオスの場所だけ伝えて消えてしまったと。ミラさん、何かに巻き込まれてるのかな?」
3人はこれまでの情報を共有していた。
図書館で見つけた、ダウンタウンのこと。
エリュシオンの歴史のこと。
その中で、リィンは1つ気になることを耳にしていた。
それが、
王国が何者かに乗っ取られてるのではないかという噂
理由は簡単、今まで各町に統治の権限が与えられていたが、血のホワイトデイ以降、少しずつ国が干渉してきていた。
それも、町が裕福になるような話ではない、国が税を倍にしたり、徴兵をするようなあまりにも理不尽なものだった。
もちろん、それに怒りを覚えた巨人族は直接王国に向かったが、帰ってきた者は誰1人いない。
恐れをなした町々は、静かに国の言うことに従っていたと。
そして、追い打ちをかけるように上がってきた噂。
そう、仮面を付けた戦士の出現。
何ヶ所も町が襲われ、王国が動くこともあったが見過ごされて地図から消える町も出ていたと。
今、エリュシオンは不安と恐怖で溢れかえっていた。
「確かに、この国に何か起きてるのは間違いなさそうだね。」
「はい、さらにダウンタウンが存在することは噂程度で聞いたことはありました。実際に見たわけではありませんが、嘘だとも決めつけられません。」
「もう少しこの町で聞き込みしてみないか?町長さんがいなくなったのも、関係してるかもしれない。」
「そうですね、もう一度今の情報も踏まえて聞いてみましょうか。」
スタッ、スタッ。
3人は別々に、ヒオスの人たちに話を聞いていった。
その中で、リィンは1つ気になる情報を耳にする。
「死神がエリュシオンを壊してるですか?」
「ああ、見たのは一瞬だったが、倒れてる男の近くにもう1人仮面をつけてる女がいたんだ。あの恐怖は、これまで生きてる中で1番の経験だった。あいつが、各町からいなくなってるやつを殺してるに違いない。」
「なるほど、ちなみにその現場を直接確認された方はいますか?」
「いや、俺の周りにはいねえな。ただ、その死神が持ってた斧には血が付いていた。仕留めた後だったんだろうさ。」
「そうですか、お時間頂きありがとうございました。」
スタッ、スタッ。
リィンはここで1つの可能性を考えていた。
(あたしは、ミラさんが死神と呼ばれてるなんてサリアさん達に聞くまで知らなかった。それもそのはず、それまでのミラさんの行動は誰かを守るために全力で行使してた。なら、仮にミラさんが仮面を付けてる人だとしても殺すとは思えない。)
リィンの中で導き出した答え。
それは、
(ミラさんは、仮面を剥がす、あるいは壊すために自分の力を使っていた。なぜなら、自分がその力を使いこなせるから。激しい戦闘の中で、どちらかが怪我をして出血してもおかしくない。あたしの知るミラさんなら、生きさせるための行動をとる。)
町の人から聞けた情報は、噂や状況証拠のみ。
そう、テーベの時と同じように。
だが、1点ちがうとしたら、
今回は、国が民衆を操っている。恐怖という感情を植え付けることで。
そして、ミラ・アトラースという1人の人間を追い詰めようとしてる。
それが何のためなのか、まだ彼女たちは知らない。
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