第173話 限界突破

「また会えたな、エリカリット!お前も感じただろ、このドリュアスのすごさを!」

「そうやな、感じたで、体が震えて仕方ない最高に危険なものならな!うちが壊したるから、覚悟しいや!」

「何言ってるんだよ!お前もこれがあったから外に出て来れたんだろ!それに、これがあればもう器なんて必要なくなるんだぞ!」

「器呼ばわりするな、クソ兄貴! 参の舞サンノマイ悲哀の挽歌ソローエレジー!」


シュイーンッ!

ピキッ。

弾丸のようなスピードで、ドリュアスに傷をつけ切り抜ける。


「はははっ、お前もこの力に引っ張られてるな!この前とは比べ物にならない力じゃねえか!」

「こんな力、うちにはいらへん!……いいや、今は必要やな。」

「そうだろ!エリカリット、俺と一緒に来い!もっといいものを見せてやるからーー。」

「クソ兄貴をぶっ飛ばすために必要なんや!そこんとこ、


ガギーンッ!ガギーンッ!

エリカとソーマの激しい攻防が繰り広げられ始めた。



「クロウ!しっかり!」


ズザッ!

アーシェは全身から血を流すクロウに駆け寄る。


「悪い、何が起きたかわからなかった、応急処置頼めるか。」

「ええ、少し強めのいくわよ。 始まりの力ファーストギア入力オン! 癒せ!回復の霧ヒールミスト!」


フワァァ。

水の霧がクロウを覆い、傷が広がるのを止める。


「助かったぜ、俺の体に何が起きたかわかるか?」

「私にもしっかりは見えなかったけど、ソーマの手から糸のようなものが伸びた気がする、それがあなたの体を切り刻んだんだと思うわ。」

「目に見えない糸か、頑丈な体で良かったぜ。」

「まだ戦況は良くないわ、エリカリットが呼び覚まされたみたいだけど、1人で勝てるような相手じゃーー。」

「俺が、いくさ。」


ザッ。

傷だらけの体を起こし、大剣を構えるクロウ。


「馬鹿言ってるんじゃないわ、そんな体であなたの力を解放したらそれこそ本当に死ぬわよ!」

「だけど、エリカリットをサポートしないとーー。」

「そこは、僕を頼ってくれていいんじゃないかい?」


スタッ。

ノエルが2人の前に降り立つ。


「ノエル、お前あいつの攻撃は見えるか?」

「いや、ほとんど見えないよ。けど、射程はそんなに広くないみたいだ、重症のクロウを狙わないのと、エリカリットのダガーと対等に張り合えてる。なら、近距離の援護が最適だと僕は思うし、彼女の動きをトレースすればなんとかなると思う。」

「危険なのは変わりないわ、最悪ノエルランスの体がーー。」

「ここにくるって決めた時点で、危険なのは承知だよ。それに、やっとエリカリットが出てきてくれたんだ、ちゃんと話をしたいからね。行ってくるよ!」


ズザッ!

ノエルは拳を構え、


力の解放パワーブースト!」


ドゴーンッ!

ノエルも力を解放し、ソーマに突撃する。


「んっ、兄妹の楽しい時間に邪魔者は呼んでねえよ!」

「そうかい?僕はぜひ参加させて欲しいんだが、エリカリット、許可もらえるかい?」

「……ふっ、当たり前や、うちにちゃんと着いてくるんやで!エスコートしたるわ!」

「女性にエスコートされるなんて、初めての体験だな、よろしく頼むよ! ゴウ三の型サンノカタサイス!」


ガゴーンッ!

ノエルの鎌のような蹴りが、ソーマを弾き飛ばす。


「ちっ、邪魔者は早く死ねーー。」

「邪魔者ちゃうわ、うちの大切な仲間のノエルの兄さんや、よーく覚えとき! 撃ち抜け、空の彼方まで!惑星間砲弾マスドライバー!」


ヒュイーンッ!!

バゴーンッ!

無属性の大きな弾丸が、魔銃から放たれる。


「はっ!じゃあその大切なものは俺がいただくとするかな!」


キーンッ!

弾丸を弾き、ノエルに迫る。


「やっぱり、僕狙いか。」

「細切れになれ!」

「右後方50cm!」

「了解!」


ズザーッ!

ノエルはエリカの声に反応し転がる。


シュピンッ!

ノエルがいた地面が目に見えない何かで削り取られる。


「ちっ、お前には見えてるんだな、この魔力が。」

「当たり前や、最悪なことに同じ血が流れとる、その力はアルテミス家のものならみんな見えてまうで!」

「そんじゃあ、もっとペース上げていいよな、エリカリット!」

「勝手にしいや、ノエルの兄さん、うちに合わせてくれや!」

「もちろん!」


ガギーンッ!ガギーンッ!

2人の連携には磨きがかかっており、徐々にソーマを押していく。


「すごい戦いね、エリカリットの力もだけど、それに合わせるノエルランス。あんなに連携が取れたの、2人は。」

「まあ、単純にノエルが適応する天才なんだろうよ、常に俺たちのことを観察して、癖とかを見抜いてるから次の動きも予想ができる。そして、力を解放してそれをさらに加速させてるんだろうな。」

「私たちの良き理解者ってところかしら、嬉しいことね。」

「アーシェ、俺も動けそうだ。タイミング見つけて、2人で援護に入るぞ。」


ズザッ!

2人も戦闘を見届けつつ、タイミングを測る。



「ちっ、邪魔者が本当に邪魔だな!」

「それは、最高の褒め言葉と受け止めるよ、ソーマ!」

「そうかよ、じゃあ、もっと力を引き出してもついて来れるか!」


バゴーンッ!

体から放つ風圧で、2人を突き放す。


「なんだ、今のは魔法じゃない?」

「あれはクソ兄貴の殺気や。それより、力を引き出すっていってもドリュアスにそれ以上の力は……まさか!?」

「さあ!もっと俺と遊んでくれよ!エリカリット!」


パキンッ!

ゴクンッ!

自分の胸からドリュアスを取り除き、そのまま飲み込む。


「あのバカ!アーの姉さん!防御魔法を張るんや!」

「え、わ、わかったわ! 弾け!地の加護レジスト!」

「ノエルの兄さんもこっちに! 盾となれ!森の守護法陣フォレストランパート!」


バゴーンッ!

アーシェとクロウは地面から土の壁が多い、エリカとノエルは木の根っこで覆われる。



その瞬間、


バゴーンッ!


「あはははっ!これだ、これだよ!最高の力ってのはよ!」


そこには、人の形をしていないソーマだったものが。



ソーマの体に何が起きたのか。

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