追放された者達、旅をしてたら世界を救っちゃった件

第158話 禁忌の魔法

「ガルゥゥ！」

「はぁ！　雨の音（アメノオト）、四式（シシキ）！叢雨（ムラクモ）！」

シュッ！

ガギーンッ！

2刀の突き刺しを、その強靭な歯で受け止める。

「反応も段違いだな、いわゆる限界突破してるみたいなもんか！　雨の音（アメノオト）、二式（ニシキ）！五月雨（サミダレ）！」

ザッ、ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。

もう片方の刀の5連撃が、体に傷をつける。

スッ。

サーベルウルフは素早く距離を取り、攻撃のチャンスを伺う。

「グルァ！」

シュンッ！

高速でもう1体のサーベルウルフが背後から迫る。

「殺気は、流石に消せないみたいだな！　拳の響（ケンノヒビキ）、三式（サンシキ）！猛雷（タケリイカヅチ）！」

グルンッ！

バゴーンッ！

右足を軸にした回転蹴りが、腹を打ち抜く。

「バフウッ！」

ズザーッ！

吹き飛ばされながらも体勢を保ち、エルフ達を視界に捉える。

「ひっ！？」

「ガァ！！」

「行かせないよ！　壊せ！根の侵攻（ルーツバスター）！」

ズザザッ。

バゴーンッ！

地面から根が飛び出し、傷を負ったサーベルウルフを討伐する。

「あ、ありがとう。」

「どういたしまして！ちょっとクロくん！周りのこともっと考えて戦ってよ！」

「無理な注文すぎるだろ！努力はするけど、じゃあ、おれがミスしたらサリアがカバー頼む！」

「分かった、次こっちに吹き飛ばしたらそっちに跳ね返すから！」

「そんなプレゼントはいらねえよ！」

スタッ！スタッ！

2体のサーベルウルフが、挟み込む形でクロウに迫る。

「ふぅ、集中しろ、周りに被害を出さない、安全な戦い方を導き出せ。」

シューッ。

心なしか、クロウから蒸気出てるように見える。

「あれ、すごい集中してる？サリアのおかげかな？」

「なあ、助けなくていいのか？俺たちはいいから、あの人族を。」

「大丈夫、見てて！サリアのリーダーは、すごい人だから！」

ズザッ！

同じタイミングでクロウの左右から迫る。

「よしっ、考えがまとまったぜ！」

スッ。

クロウは２刀を収め、折りたたみ式剣を構える。

ズザッ！ズザッ！

さらにスピードを上げるサーベルウルフ。

そして、

「今だ！　雨の音（アメノオト）、五式（ゴシキ）！驟雨（ムラサメ）！」

シャキンッ！

右側から迫るサーベルウルフの足を切り、体勢を崩す。

スッ！

シャキンッ！

続けて、振り返りざまにもう1体のサーベルウルフの足を斬りつける。

「ガフッ！？」

ドスンッ！

勢いが止められず、2体は正面からぶつかり合う。

そのタイミングを見逃さなかったクロウは、

「これで終わりだ、　 獣の声（ケモノノコエ）、四式（シシキ）！鷲の剛翼（グリフォン）！」

シャキンッ！

ザシュンッ！

空高く飛び上がり、落下する勢いで大剣を突き刺す。

「ガウッ。」

ポトンッ。

3体のサーベルウルフを倒し終えた。

素材はどう見ても通常個体と同じもの、しかし、戦闘能力は飛躍的に上がっていた。

「よしっ、討伐完了！」

「さっすがクロくん！信じててよかった！」

「本当に信じてたか？」

「信じてたよ！だからサリアはこの人たちを守ることに専念できたんだから！」

「まあそう言うことにするか、あんた達も平気か？」

クロウとサリアがエルフ3人のところに向かう。

「あ、ああ。強いな、2人とも。」

「そりゃあ、何度も危険な道通ってきたからな。怪我してるみたいだな、とりあえずセレスまで一緒に行くか。」

「そうだね、もうそんなに遠くないしまた同じようなモンスターが出るかもしれないしね！」

「ありがとう、助かる。」

スタッ、スタッ。

クロウとサリアはエルフを護衛しながらセレスに入った。

そして、入り口でエルフたちと別れ、2人は宿屋に向かった。

キィーッ。

宿屋のドアを開けると、

「あっ、帰ってきたんだね。」

「2人の方が早かったか。何か収穫はあったか？」

「ええ、いろいろ情報は手に入れたわ。でもその前に。」

ドーンッ。

テーブルの上には乗り切らないほどの料理が並んでいた。

「どうしたのこれ！？アーちゃん何をお願いしたの？」

「私じゃないわよ！女将さんがセレスのために頑張ってる私たちにって、たくさん作ってくれたのよ。せっかくだから、先にいただきましょう。」

「ただお前が早く食べたいだけのくせに。」

「何か言ったかしら？クロウ？」

「いやいや、温かいうちに頂こうぜ！」

レイヴァーは席につき、カラフルな野菜の乗ったサラダから、根菜のスープ、鶏肉の丸焼きなど全てのものを食べていった。

主に、アーシェが。

その後、クロウとノエルの部屋に集まり、情報を交換しあった。

「そんな魔法あるのか、魔力を他に受け渡すなんて。」

「私もみたことないから、実際はどんな感じかわからないけどね。それもだけど、禁忌の魔法なんて言われる魔力の貯蔵庫（マジックシェルター）まであるってことは。」

「そうだね、これは人為的に行われたことの可能性が高い。しかも、もし生きてるならその投獄された人かその周りの人の復讐という形で。」

「あっては欲しくないけど、内側に裏切り者がいる可能性も残ってる。明日慎重に聞いてみよう、話はノエルくんに任せていい？」

「ああ、何とかいろんなパターンを考えおくよ。」

スタッ、スタッ。

アーシェとサリアはお休みと告げ、部屋に戻る。

「さあて、僕らも寝ようか、クロウ。」

「そうだな、交渉は任せるぜ、ノエル。失敗したって構わねえ、俺だと可能性が99%失敗に振り切るだろうが、ノエルなら成功6失敗4くらいの確率にはなるだろ。」

「ああ、全力を出すよ。それじゃあ、おやすみ。」

「お休み。」

スーッ。

2人は眠りにつき、次の日、セレスの国からテーベに激震が走ることになる。