第100話 ゴーレムとは

ザザッ。

もぬけの殻となっていた魔族大使館を、レイヴァーとノエルは調べていく。


初めて見た時は、とても大きなお城といった印象で、貴族が住んでいてもなんの違和感もない建物であった。


しかし、今は見る影もない。


屋根は倒壊し、至る所に端材が散らばり、激しい戦闘が起きたことが窺われる。



「ここの魔族も、アーシェほどじゃなくても相当強いんじゃなかったか?わざわざアテナイに派遣されるんだ、手馴れの戦士じゃなきゃ危険だよな。」

「そうね、前戦った時は数も少なかったし本気じゃなかったとは思うけど、相当の魔力を持っていたわ。それが、こんなにされてしまうまで押されるなんて。」

「奇襲か、それとも単に実力に差が生まれていたか。まあ、今は少しでもゴーレムについての資料が欲しい、くまなく探そうか。」


スタッ、スタッ。

ザザッ、ザザッ。

引き出しを開いては確認し、倒れた端材はどかしながら辺りを確認していく。


これといって、重要なものは転がっていなかった。



「アーシェ!ギルの部屋ってどこかわかるか?」

「そうね、魔族は階級が偉い者が高いところに行きがちだから、もしかしたら最上階かもしれないわね。」

「なるほどな、行ってみるか。サリア!ノエル!俺たちは上を見てくるから、この辺りは任せるぞ!」

「OK!任せて!」


スタッ、スタッ。

2人は階段を登り、上の階に向かう。


軋む音が、建物にガタが来てることを表す。



「それにしても、ひどいな。ここまでボロボロになるほどの攻撃、蠢く会はなんで襲ったりしたんだ?」

「魔族のゴーレムと、蠢く会のゴーレム、私たちには同じ存在に思えてるけど、もしかしたら違うのかもしれないわね。」

「どういうことだ?戦った感じ、アーマーをつけてるかどうかくらいの差しかなかったぞ。」

「それよ。もしかしたら、その力は魔族しか持ち合わせてないのかもしれないわ。」


ガチャ、ガチャ。

2人は固く閉められたドアの前に立つ。



「完全に封鎖されてるな。ちょっくら、乱暴に行くか。」

「いいけど、中の部屋まで壊さないでよ。」

「俺はそんな馬鹿力じゃねえよ! 拳の響ケンノヒビキ初式ショシキイカヅチ!」


バゴーンッ!

扉を正拳突きで突き破ると、他の部屋よりはだいぶマシな空間が広がる。


「ここは、蠢く会に荒らされてなさそうね。」

「ギルがあんなにボロボロだったんだ、死守したってところだろうな。探してみようぜ、何か情報があるかも。」


スッ。

ザザッ。

2人は引き出しや、ファイル、封筒などを確認していく。



すると、



「なに、これ?」

「ん?どうした、アーシェ。」

「これって、じゃない?」

「設計図!?」


ズザッ!

クロウは足早にアーシェの元による。


そこには、ゴーレムの姿が記されてるとともにいろんなモンスターの名前が書かれている。



「我々は、新しく作り出したこのモンスター、と名付ける……ですって。」

「やっぱり、あいつらが作り出してたのか。それに、この素材って?」

融合フュージョン用の素材って書いてあるわね、この辺りのモンスターから、魔族の国、スパルタに棲息するモンスターも多いわ。」

「あとは何か書いてあるか?」



2人が詳しく見ていくと、次のことが分かった。



研究を始めたのは、5年前。


魔族が世界を統治するために必要な力が何か、それは純粋なパワーが必要と判断した。


世界に誇示する、そして周りの者から反抗されないための圧倒的な力が。



そこで考えだされたのが、新生モンスターの作成。


現存するモンスターだけでは、他の国を圧倒することができない。



ならば、作り出してしまえばよい。


その技術は突如もたらされた。



魔王ハデスの側近、エレボスの手によって。


モンスターとモンスターを融合フュージョンさせることで、新たなモンスターを作り出す。



しかし、そう簡単にことは進まなかった。


新たな技術ということもあり、使う側も勝手がわからず苦戦することも多かった。


そんな中、エレボスはある媒体を見つけた。



その媒体を融合フュージョンの架け橋にすることで、ゴーレムという新生モンスターを作り出すことに成功した。



現時点、アーマーゴーレム、シューターゴーレム、バーサーカーゴーレムの計3種類を生成完了。


これ以上の個体を作り出すには、別の方法を考えるしかない。



もう一度、奴らと接触して情報を得る必要もあると考えている。



ギル将軍は、先遣隊を連れ効果の確認と実績を立てられよ。

それが、WC計画ワールドコンクエストを完遂させるための1番の近道になる。



「なあ、アーシェ。これって、魔族達がゴーレムを使って世界を征服しようとしてるってことだよな。」

「そうね、それに詳しくは言及されてないけど、ゴーレムを作り出すのにモンスター以外の媒体を必要とする記述もあるわ。」

「この情報を知ってるギルを、なんで蠢く会は連れ去る必要がある?手を組んでるわけじゃないってことか?」

「その可能性も十分あるわね。最悪の場合、私たちアテナイを含めた各国と、魔族の国スパルタ、第3の勢力の蠢く会がこの世界にいることになるわ。はぁ、考えただけでいやになるわね。」


スタッ、スタッ。

サリアとノエルも後を追いかけてくる。



「2人とも!何か見つけた?」

「ああ、かなり重要な書類だ。ナウサに持って帰ろうぜ、無駄足にはならなかったみたいだしな。」

「分かった、なら早めに動こうか。魔族が駆けつけてきたら厄介だ。」


タタタタタッ。

4人はナウサに向け走り始めた。



スサッ。

その後を追いかける一つの影が、動いた気がした。

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