第90話 加勢
ズザッ!
レイヴァーはブリーフィングルームで作戦会議をしていた。
「先ほどの男性から、キルキスの状況について聞きました。周りを巡回していた衛兵が、魔族と魔物が侵攻してきてるのをみたとのことです。」
「なんでキルキスを狙うんだ?あの町って、そんなに魔族にとって重要な土地なのか?」
「私の知る限りでは、特別そんな地域じゃないはずよ。」
「ただ、ギルド界隈ではキルキスの冒険者さん達はこの近くの町でもかなりお強い方が多いようです。敢えて、そこを狙ってるとしたら……。」
「ゴーレムの被験体集めってことかしら。」
ズーンッ。
その場の空気が、曇天のように重くなる。
「だとしたら、すぐにでも加勢に行かねえとな。予想じゃなくて、この目で確かめる方が早い。」
「そうだけど、ここからキルキスまではどのくらい距離あるの?」
「約10kmですね、歩いて1時間30分くらいかかってしまいますね。」
「じゃあ、走って行くか。」
ズザッ!
早速、クロウは立ち上がりギルドを出ようとする。
ガシッ!
その右手を、アーシェが力強く引く。
「おわっ!どうした、アーシェ?」
「いや、どうしたはこっちのセリフよ!10kmを走り続けるつもりなの!?私たちはマラソン選手じゃないのよ!」
「だけど、ナウサに馬はいないし、馬車も特にないだろ。なら、俺たちの足で稼がねえと。」
「辿り着くだけでサリア達ヘトヘトになっちゃうよ!」
「であれば、あたしの魔法を使ってください。 呼び覚まして、
ヒュイーンッ!!
3人は体の周りに黄色いオーラを纏う。
「なんだこれ?体が軽い気がする。」
「あたしの補助魔法です。10分だけですが、皆さんの身体能力を一時的にあげられます。」
「本当に器用ね、リィンは。」
「ありがとう!リィンちゃん!じゃあ、今のうちに走っていこうか!」
「ああ、リィンもナウサの警戒は頼むぜ!キルキスだけがターゲットじゃない可能性もあるしな!」
ズザッ!
タッ、タッ、タッ。
レイヴァーは風を切り、ナウサの町を出ていく。
「皆さんも、ご武運を。」
スッ。
リィンは両手を胸の前で重ね、レイヴァーの無事を祈っていた。
ところ変わり、キルキスの近く。
人族の冒険者達は、陣を整えていた。
「早く陣形を整えろ!魔族の奴らはすぐそこまできてるぞ!」
「援軍は?いつくるんですか!」
「分からん、だが要請は辺りの町全てに送った!必ず助けは来る、それまで持ち堪えるんだ!」
ドスンッ!ドスンッ!
少し離れたところから、モンスターが迫ってくる地響きが。
「来た、数は見えるか!」
「ざっと見積もって、100体はいます!種類は、サーベルウルフ、ボアホーン、グリーンドラコ、この近くのモンスターが勢揃いしてます!」
「そんな数を使役してるのか、魔族の連中はーー。」
「炎が来ます!全員、下がってくださーー。」
バゴーンッ!
遠距離の炎攻撃が、人族の冒険者を巻き込む。
「くそっ、どこからだ!?」
「西です!モンスターが来る方向とは逆です!」
「なんでそっち側に!?使役するなら、そばにいないと動かせないはずだぞ!」
「分かりませんが、尚も攻撃は飛んできます!こちらもうってでないと!」
「ちっ、初手から崩されるとは。やるしかない、皆!いくぞ!」
ドダダダダッ!!
冒険者達はモンスターの群れに突撃する。
魔物100体。
魔族4名。
冒険者15名。
圧倒的な戦力差は目に見えていた。
「さあ、冒険者は殺しすぎるなよ。この地の冒険者は利用価値が高い。」
「だが、モンスターにそんな命令はできないっすよ。死んじゃったらドンマイってことで。」
「まあ、それもそうだな。生き残ったやつのみ、我々で捕まえればいい。」
バゴーンッ!バゴーンッ!
猪の顔をした魔族4体が魔法を放ちながら話す。
ザシュンッ!ガギーンッ!
冒険者は、なんとかモンスターを倒していく。
「3人1組で動け!崩れたところは、他の班でカバーしろ!」
髭を生やした、ゴツい男が的確に指示を出していく。
「おっ、あいつはいいんじゃねえか?」
「そうだな、あの体にあの頭脳、器としてちょうど良さそうだ。」
「捕まえるしかねえな!」
シュンッ!
ガゴーンッ!
魔族は瞬時に距離を詰め、指示を出していた男を風で吹き飛ばす。
「ぐはっ。この距離を、一瞬で。」
「リーダー!」
「行かせねえよ!」
ズザッ!
助けに行こうとする冒険者を、魔族が遮る。
「お前は、いい器になりそうだ。その体、もらうぞ。」
「なんだ、何が目的なんだ、お前達は!」
「WS
「人族を、舐めるな!」
ブンッ!
ガギーンッ!
男の剣が魔族に届く前に、粉々に砕かれる。
「っ!?」
「最後まで諦めない姿、いいじゃねえか、やっぱその体もらうぜ!」
「くそっ!リーダー!」
「ちっ、魔族に降るくらいならーー。」
シャキンッ。
腰から短刀を抜き、自分に向ける。
「はっ、そう簡単に死ねると思うな!」
グッ!
男の手が強く掴まれる。
しかし、その手は目の前の男のものでも魔族のものでもない。
「そうだ、そう簡単に死なれたら困る。」
「っ!?お前はーー。」
「そう思うだろ、猪の魔族!」
ガゴーンッ!
ズザーッ!
猪の魔族が、拳によって吹き飛ばされる。
「ふぅ、なんとか間に合わせたぜ。」
「君は、いったい。」
「ナウサから特急で来た、1人の戦士だ。おっさん、ここからだろ、俺たちのお楽しみは!」
チャキンッ!
男を助けたのは、クロウであった。
そして大剣を構え、モンスターの方を向く。
「応援部隊、第1陣!クロウガルトが通るぞ!斬られたくないやつは俺の前からどけっ!」
クロウが戦線に参加した。
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