第85話 帰還、まずは体から
スタッ、スタッ、スタッ。
3人はアイギオの調査を終え、ナウサに戻ってきた。
キィー。
ギルドのドアを開けると、
「あ、レイヴァーの皆さん!お帰りなさい!」
「おう、帰ったぜ。」
「リィン、早速なんだけどブリーフィングルーム使っても良いかしら?」
「構いませんよ!あたしもすぐいきます!」
スタッ、スタッ。
4人はブリーフィングルームへ入る。
まずは、クロウが仕入れた情報から話していく。
「ライラから聞いたのは、ゴーレムは囚人とモンスターをどうにかして改造して、作り出してるってことだ。命を弄んでるとしか言いようがない。」
「なるほど、てことは蠢く会はどこかの国の囚人を集めてモンスターも捕獲し、新たな生命、つまりゴーレムを作り出す。なかなか、イかれたやり方ですね。」
「ねえ、本当に囚人だけだと思う?」
ズーンッ。
その場の空気が、アーシェの一言で一気に重くなる。
「アーちゃん、それってまさか。」
「そうよ、囚人だけだと私は思えないわ。」
「一般市民も実験体にされてると言うのか?」
「あり得る話でしょ。これは憶測でしかないけど、モンスターの量や質、それの器となる人達も力量がある人ならさらに強いゴーレムになれると予想した方が腑に落ちるわ。」
ギリッ。
クロウの歯に何でも噛み砕きそうなほどの力が入る、
「クロウ、落ち着けとは言わないけど、その殺気はしまいなさい。不殺の掟を破るつもり?」
「くっ、悪い、アーシェ。ありがとう。」
クロウは静かに元に戻る。
「それじゃあ、魔族たちが使っていたアーマーゴーレムはどう思いますか?作りが同じだとしても、レイヴァーの皆さんを圧倒できるほどの力、そして耐えきれずに爆発した存在、蠢く会の仕業でしょうか?」
「まだはっきりとはいえないけど、サリアは魔族は魔族で蠢く会と似た力を手に入れてるんだと思うな。じゃないと、制御できないゴーレムを使わせて、余計なことを話される前にターゲットを処理する。そんな面倒なことをわざわざするとは思えないな。」
「サリアの言う通りね。蠢く会が生み出した力を、魔族に流用してその先にある力を手に入れようとしてる。白き世界の成就と、
「はあ、厄介だな。蠢く会だけでも面倒なのに、魔族も同じかそれ以上の力を行使してくる。敵だらけじゃねえか。」
4人はこれまでに得た情報を整理し終えた。
「今はこれくらいですかね、考えすぎるのも良くありませんし少し気晴らしに行かれてはどうですか?」
「気晴らし?何かあるの?」
「アーシェの気晴らしなんて、ドカ食いすることくらいしかーー。」
ゴスッ。
アーシェの右足が、勢いよくクロウの左足を踏む。
「痛っ……。」
「次は頭にいくから。」
「ほらほら!2人とも!リィンちゃんの話聞いて!」
「あははっ、仲が良いですね。じゃなくて、この近くに治療整体師さんがいるらしいんですよ!」
「何?その治療整体師って?」
アーシェは食い気味に質問する。
「あたしもさっき行ってきたんですけど、体の筋肉の疲労と骨の位置を正しい位置に戻してくれるすごい方なんですよ!おかげで、あたしの体は軽くなりました!」
「すごい!そんな人いるんだ!早く会いに行こうよ!」
「あたしから紹介はしておきましたから、すぐ通してもらえるはずですよ!」
「何から何までありがとうね、リィン。」
スサッ、スサッ。
アーシェは優しくリィンの頭を撫でる。
「えへへっ、皆さんに頭を撫でてもらえて嬉しいです!ギルドを出て右にある、大きな手の看板があるお店が目的地ですよ!」
「ありがとう、アーちゃん!クロくん!行くよ!」
「ああ。」
「サリー、そんなに焦らないで。」
キィーッ。
3人は外に出る。
スタッ、スタッ。
数分歩くと、例の看板が見える。
「あのお店か?」
「多分そうね、最近人気らしいから人も多いかもしれないわね。」
「待つだけの価値はあるよ!早く入ろう!」
キィーッ。
ドアを開けると、
「あっ、お客さんかい。……その見た目、出来上がった体、リィンさんが言ってたレイヴァーだね?」
「ん?あ、ああ。そうだけど、よく分かったな。」
「見た目で十分だよ、相当な訓練をされた体だ、こりゃ腕がなるね。すまん、申し遅れた、わしはリヒター・マルタ。ここで、治療整体師をしている。」
リヒター・マルタ……白髪混じりの黒髪で、歳は50近そうだ。
白衣を纏っており、ベテラン感ある風貌が皆を安心させてくれる。
「俺はクロウだ。そんで、治療整体師ってどんな職業なんだ?」
「簡単に言えば、体の筋肉を回復させ、骨を正常な位置に戻す役割だ。容態にもよるが、30分もあれば治るじゃろう。」
「すごーい!今日空いてますか!?」
「見ての通り、閑古鳥がないとるよ。いつでもウェルカムじゃ。」
「じゃあ、俺からお願いして良いか?」
スッ。
クロウはリヒターに連れられ、奥の部屋に入る。
「では、仰向けに寝てくれ。」
ガチャッ。
武器を全て外し、ベッドの上に横になる。
「そんじゃあ、始めていくよ。」
「ああ、頼む。」
グイッ。
両手の親指で、右脇腹を押される。
「痛っ!」
「少し痛いじゃろうが、何とか耐えておくれ。」
「いや、少しどころじゃない気がーー。」
ゴリッ。グイッ。
いろんな音が体から発していく。
「待て待て待て、今の折れてないのか?」
「平気じゃよ、骨が正しい位置の戻った音じゃ。」
「痛みが半端じゃないって!」
ここから約1時間、クロウの苦しみもがく声が小さく外にも聞こえていた。
「クロくん大丈夫かな?」
「平気じゃない?これまで何度も死にかけてるんだから、耐性は高いはずよ。」
1時間後、クロウは部屋から出てくる。
「クロくん!どうだった?」
「なんか、疲れてない?」
2人が寄ってくると、
「すっ。」
「すっ?」
「すげぇ楽になった!体が嘘のように軽いし、最初は痛みがすごかったけど今はすこぶる調子がいい!」
「そうじゃろ?これが治療整体じゃ。さっ、次はどちらさんかね?」
「あ、じゃあ私が。」
そこから、アーシェとサリアも治療を受ける。
2人の悲鳴が響いたのは、言うまでもなかった。
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