第80話 彼は何者
キィーッ。
レイヴァーはナウサの町に戻った。
「お帰りなさい、みなさん。ご無事で何よりです。」
「ただいま!リィンちゃん!」
4人は久しぶりにあまり怪我をせずに、討伐クエストから戻った。
そして、彼らの帰りをリィンは心から喜んでいた。
レイヴァーは疲れた体を椅子に座り癒す。
「あ、そうだ!レイヴァーのみなさん!これから先、作戦会議とか必要になりますよね?」
グイッ。
リィンがクロウの顔を覗き込む。
「ん?ああ、まあできたら最高だとは思うな。」
「ふっ、ふっ、ふっ。そう思って!」
バッ!
リィンがギルド内の個室を指差す。
「じゃじゃーんっ!レイヴァーの皆さんのための部屋、ブリーフィングルームを作成しました!」
「え、でもそこって何か使ってたんじゃないの?」
「ご安心ください、アーシェさん!中は倉庫みたいに使ってたのでいろいろ整理して開けちゃいました!」
「すごいな、リィン。中見てもいいか?」
「もちろんです!」
スタッ、スタッ。
レイヴァーがブリーフィングルームを覗くと、
中央には大きな四角い木のテーブル、テーブルの真ん中には大きなマップが敷かれ、作戦会議用に使える黒板とチョークも。
側には、クエスト掲示板もありレイヴァーにお願いしたい内容を貼り出せるようにもされていた。
「すごい!リィンちゃん、完璧すぎるよ!さすが軍師様!」
「えへへ!嬉しいです、クロウさんもどう思いますか?」
「最高だよ、これで俺たちももっと安全に戦える、ありがとうな、リィン。」
スサッ、スサッ。
しれっと、クロウがリィンの頭を撫でる。
「な、なんですか!?」
「ん?バカって言われまくるし、言葉で感謝するのが下手だから、行動で示そうと思ってさ。」
「クロウ、さん。」
気のせいだろうか。
リィンの顔が少し赤みを増しているように見える。
しかし、それを面白く思わない人も。
「ぅぅん!せっかくリィンが作ってくれた部屋よ、早速使わせてもらいましょう。」
スタッ、スタッ。
アーシェは咳払いをして、部屋に入っていく。
ギロッ。
クロウの隣を通り過ぎる際に、鋭い眼光で睨んだ気がした。
「ひっ!?」
「どうしたんだい?クロウガルト?」
「なんだろう、体が恐怖を感じた気がした。」
「気のせいじゃないかい、早く行こう。」
クロウは敏感なのか鈍感なのか、全くわからなくなってきていた。
ブリーフィングルームに入った5人は、アイギオで起きたことをまとめた。
まず現れたのは、アーマーゴーレム。
そしてそれを操っていたのは、蠢く会のメンバーとは違う服装の魔族。
呼び起こされたアーマーゴーレムは、クロウとノエルで対処するがそこで違和感が。
攻撃を弾こうと、受け止めた際に力が増幅したと感じたのだ。
初撃の感覚では、そのまま弾けると判断したが、そこから何かに操られるかのように力が増幅され危険なパワーとなった。
真相を探ろうと、魔族の4人を捕らえようとしたがアーマーゴーレムが暴走。
それまでの危険度が狼レベルだとしたら、腹を空かせ冬の山を降りてきた熊のそれを超えるほど。
だが、力をうまく扱えなかったのかアーマーゴーレムはその場で爆散。
魔族達も何者かに狙撃され、話しを聞けなくなってしまった。
「とまあ、こんな感じだな。」
「そうですか、力の増幅……魔力で底上げとかされたのでしょうか?」
「あり得ると思うわ、あの魔族達は
「ノエルランスくんは、何か分かった?」
サリアは、1人静かに考え込んでいたノエルに問いかける。
「ん?ああ、少し気になったのはゴーレムを改造してるってところだ。」
「そんなこと、あの魔族達は言っていたの?」
「ああ、僕が問い詰めていたらゴーレムを作る力と共にその先の力を手にしたとすら言っていた。それがどんな力なのか聞き出す前に殺されてしまったけどね。」
「改造ですか、そんなことができるんですかね。」
5人は考え込むが、答えは出ない。
静寂を破ったのは、クロウの一言だった。
「そういやさっき知ったんだけどよ、ノエルは光魔法が使えるんだな。俺たちが唯一使えない属性だ。」
「ああ、まあね。そんなに得意ではないけど、ある程度は使えるよ。ニューマンだから、光魔法を使えるのはそんなに珍しくないと思うけど。」
「それなら私から一つ聞いていいかしら。あなたの戦い方、クロウと少し似てる気がするけど何か違う。あなたは、その力をどうやって会得したの?」
スサーッ。
静寂が空間を包む。
「まあ、これくらいは話さないとね。」
ズザッ。
ノエルはみんなの視線を受け、堂々と立つ。
そして、
「僕のフルネームは、ノエルランス・アイアコス。アテナイの王、ラストを支える重鎮、アイアコス家の次男だ。」
「アイアコス、有名な家系なの?」
「あたしは知ってますよ、経済にとても深く関わっている家系で、正直アイアコス家がなければアテナイの経済は回らないでしょう。」
「……君たちは、驚かないんだな。」
ノエルは、周りの落ち着いた反応に少し戸惑う。
自分の正体をバラすことが、彼の中では大きな選択だったからだ。
「まあ、だってよ。オールドタイプでレイヴンズの生き残りの俺に、失墜した前魔王の娘アーシェ、
「……ははっ、そうか。なら嬉しいよ。」
ノエルは少し安心した顔をしていた。
その際、蠢く会については何も触れなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます