第69話 2人の全力
「ぐぉぉ!!」
クロウから、獅子の如き低く鋭い咆哮が。
「その仮面が、あなたを狂わせてるのよね。なら、やることは1つ!」
「せやね、仮面を外させたらうちらの勝ち、外せなかったら負け、分かりやすくてええわ!」
「ああぁぁ!!殺す殺す!」
シュンッ!
瞬きした次の瞬間、クロウの2刀がアーシェの目の前に。
「炎の手となれ!
ボァァ!!
ガギーンッ!
炎でできた鋭い槍で、アーシェは迎え打つ。
ガゴーンッ!ガゴーンッ!
一撃一撃が、辺りの地面を削る。
「エリカリット!」
「任せとき!
ブンッ!
スッ!
回転射出したダガーが、クロウの顔スレスレを通過する。
「嘘やろ、完全に捉えてたっちゅうのに!」
「私たちも、倒すつもりでいかないと止められないわ! 眠りなさい!
シュインッ!
クロウの目の近くを、闇の魔法が雲のように包み込む。
「これならどうや! 削り取れ!
ヒュイーンッ!!
大量の葉っぱがドリルのように突き進む。
「ぐぁぁ!!」
ズザッ!
何と言うことだ、闇魔法によって視界は消されていたのに、感覚だけでエリカリットの植物魔法を宙を舞い避ける。
「チートすぎるやろ、クロの兄さん!」
「ぐぁぁ!!」
ガギーンッ!
ズザーッ!
クロウの拳を、ダガーで何とか受け止める。
「うぐっ、ほんま冗談きついわ。一撃拳を受け止めただけで、全身から体力根こそぎ削られるわ。」
「離れて!エリカリット! 弾け!
ゴゴゴゴゴッ。
グルンッ!
地面が隆起し、クロウの周りを囲む。
「がぁ?」
「空に気をつけや! 降り注げ!
シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!シュッ!
クロウを囲んだ壁の上から、無属性魔法の弾丸が雨のように降り注ぐ。
しかし、
キンッ!キンッ!キンッ!
2刀を目にも留まらぬ速さで振り抜き、弾き返す。
「がぁぁ!!」
バゴーンッ!
壁を貫き、大剣でエリカリットを貫かんと突き進む。
「あかんっ!?……なんて言うと思うたか!!」
ボァァ!!
ドゴーンッ!
エリカリットの目の前に、火の柱が地面から生まれクロウを包み込む。
「ナイスタイミングや、アーの姉さん!」
「全く、信じるとは言ったけど流石に信頼しすぎよ。」
「それが仲間っちゅうもんなんやろ?……うちには分からんけど。」
「がぁぁ!!」
バゴーンッ!
クロウは雄叫びを上げ、炎を打ち消す。
「なあ、本当にクロの兄さんは人族なんか?神かなんかとちゃうんか?」
「私の知る限り、クロウは正真正銘、オールドタイプで仲間想いすぎるバカな男よ。」
「がぁ、がぁ。」
流石に疲れが出たのか、クロウも息を切らす。
「エリカリット、後何分いける?」
「持って、3分やな。アーの姉さんは?」
「持って1分30秒かしら。本当、もっと鍛えとくべきね。」
「せやな、もっと強くなっとかんと、大切なものをそばに置いとくことすら叶わん。まあ、今回は無理を通してでもやったる!!」
シュンッ!
さらにスピードを上げ、エリカリットはクロウに突撃する。
「殺す、殺す、殺す!」
「何度も言わせんで、兄さんには誰も殺されへんで!
グルルッ!
ガギーンッ!
縦回転しながらの斬りつけを、大剣で受け止める。
ズザッ!
エリカリットに集中した瞬間、背後にはアーシェが。
「少し痛いわよ! 審判よ!
ピカーンッ!
ドゴーンッ!
クロウの足元が真っ白に光り、雷の柱が駆け上る。
「追い打ちや! 撃ち抜け、空の彼方まで!
バゴーンッ!
魔銃から、巨大な無属性魔法の砲弾が射出される。
次の瞬間、
バギーンッ!
雷の中から折りたたみ式の剣が顔を出し、砲弾を弾き返す。
「んなっ!?」
バゴーンッ!
エリカリットは反応しきれず、弾き返された弾丸に吹き飛ばされる。
「エリカリット!」
「よそ見したらあかん!姉さん!」
「っ!?」
ブワンッ!
アーシェの腹目掛け、クロウの拳が迫る。
「くっ、間に合わなーー。」
何とか両手で衝撃を緩和しようとした瞬間、
1つの言葉がアーシェの耳に届く。
「に、げ、ろ。」
「っ!!クロウーー。」
ガゴーンッ!
「うはっ!」
「姉さん!」
ズザーッ!
クロウの拳で、アーシェも吹き飛ばされエリカリットのそばによる。
「生きとるか!アーの姉さん!」
「……えほっ、えほっ。ええ、何とかね。エリカリット、勝機が見えたわ。」
「はっ?そんなのどこに?うちには分からへん。」
「クロウは、少しだけど意識を取り戻しつつある。その証拠に、とても気に食わないことをさっき言ったわ。……逃げろって。」
「……ははっ、冗談きついですわ。」
ザザッ。
アーシェは腹を抑え、エリカリットは右腕を抑え起き上がる。
「うちらに逃げろなんて、クロの兄さんは舐めとるな。」
「ええ、本当よ。もう1度教え込んであげないとね、私たちの諦めの悪さを。」
「ぐがぁ、ぁ。」
クロウはその目に2人を捉える。
「これが最後のチャンスよ、エリカリット。」
「分かっとるで、やったる!援護は任せるで!アーの姉さん!」
「ええ!私たち3人でこの争いを終わらせましょう!」
ズザッ!
サリアはダガーを構えクロウに突進する。
「兄さんの反射で、うちのスピードを捌けるか、見せてもらおうやないか!」
「ぐぉぉ!!」
キンッ!キンッ!キンッ!
エリカリットは上下左右、目にも留まらぬ速さで斬り刻む。
それに対抗するクロウも、2刀でギリギリのタイミングで防ぐ。
(アーの姉さんの狙いはわかっとる。一気に力を消耗させて、クロの兄さんの意識を表に出させる。その瞬間に、仮面を取り外して終わりや!)
ガッ、ガッ、ガッ!
2人の激しい攻防が、お互いの体に傷を生み出していく。
「今使える、私の最大限の力を放つ。クロウの頑丈さなら、心配いらないわよね。」
ヒュイーンッ!!
「クロウ、死なないでよ! 呑み込め!
ズザーッ!
ザプーンッ!!
大量の水が、滝のような勢いでクロウに迫る。
「ぐがっ、あっ!?」
「逃さへんよ! 捕えろ!
ヒュッ!
パシンッ!
地面から枝が伸び、クロウの両足を捕らえる。
ザザァァ!!
大きな波がクロウを飲み込む。
「ぶぶぶっ。……がぁ!!」
シャキーンッ!
大剣の鋭い一撃が、水を切り裂き霧散させる。
「がぁ、がぁ。」
肩を上下にしながら、息を整える。
すると、
「クロウ、終わらせるわよ!」
「早う戻ってき!兄さん!」
ズザッ!
2人は距離を詰め、クロウの真正面に立つ。
「はぁ、はぁ、ふた、り、とも。」
クロウの声が小さくこぼれる。
そして、
「うちらに貫けないものは!」
「なにもない!
バキキキッ!
ガゴーンッ!
木の弾丸を作り出し、氷で覆って射出する。
そのスピードは、音を置いてくるかのよう。
「……。」
スカーンッ!
氷の弾丸が、クロウの仮面を擦り半分にひび割れる。
ポトッ。
仮面が外れたと共に、いつものクロウの顔が。
「はぁ、はぁ、わる、か、った、2人、と、も……。」
バタンッ。
クロウはその場に勢いよく倒れ込む。
「はぁ、はぁ、流石にうちも疲れたわ。後は任せるで、サリアリット。」
シューンッ。
エリカリットはサリアに戻る。
「げほっ、げほっ。本当、手のかかるおバカさん、ね……。」
バタンッ。
アーシェも力尽きる。
「えほっ、えほっ。誰か、助けを呼ば、ないと。」
スサッ。
ボロボロの体でサリアは起き上がり、ナウサの町の方を見る。
「あ、あれ、は。」
スーッ。
パタンッ。
サリアもその場に倒れ込む。
彼らの運命は、いったい。
第13章 完
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第13章まで読んで頂きありがとうございました。
クロウ達は、ゴーレムを倒すことに成功!
しかし、感情に支配されたクロウが暴走しアーシェとサリアの全力で何とか止める。
だが、行動不能になってしまった3人、いったいどうなるのか……。
久しぶりなほのぼの会!?
違う争いが起きる!?
レイヴァー応援してるぞ!
と思ってくださいましたら、
ぜひ、レビューの記載
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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!
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