第59話 影は続く
スタッ、スタッ、スタッ。
ハーデンが3人の前に姿を現す。
「生きてくれてて嬉しいよ、アレス。それと、アフロディテ、さらにはアルテミスまで。」
「俺だけじゃなく、アーシェのこともサリアのこともよく知ってるみたいだな。何もんだ、てめえ。」
「まあいいだろう、お前たちを今ここでどうこうするつもりは俺にはない。」
「どういうこと、この前のライアは殺す気満々だったわよ。」
ギリッ。
アーシェの鋭い眼光がハーデンを捉える。
「ああ、彼女は少し血の気が多くてな、俺はあまり疲れることはしたくないんだ。」
「だから、モンスターを使ってるってこと?今のアリゲイルも含めたチップを埋められたモンスター、あなたたちの仕業だよね?テイマーと同じ波長で、モンスターを洗脳している。」
「ほお、そこまで分かってるのか。なら、俺たちの目指す世界も知っているな?」
「白き世界成就ってやつか?」
ニヤリッ。
ハーデンが不敵な笑みを浮かべる。
「そうだ!最高だとは思わないか、全てを無に返すこの作戦を!」
「何言ってるの、あなた。」
「考えてもみろ、なぜこの世界は4つの種族がバラバラに統治している?そんな面倒くさいこと、誰が命じた??」
「その言い草、てめえまさか!」
クロウの目も狼のように鋭くなる。
「そうさ!俺たちがこの世界を1つにしてやる!争いが絶えない?食糧が足りない?そんなのは簡単、国を違う王が統一しようとするからさ!ならば、全てを何もなかった状態に戻し、1から世界を作り替えれば解決ではないか!」
「てめえ、そのために何人の人が犠牲になるか考えたことあるか!!」
「はっ!いつの時代にも、革命を起こすために多少の犠牲はつきものだ!未来の糧になれるのだ、誇りにすら思って欲しいな!」
「ふざけないで!そんな世界、本当にこの世界の皆が望む世界だとでも?今隣にいる人を失う可能性を含んでまで、作り替えたいと思うの?あなたは!」
お互いの意見が飛び交う。
「この世界は徐々に衰退していっている、多くの地は自然が減り、生き物が生きづらい世界になりつつある。なぜだ!生きるために全ての種族は自然を壊し、家畜を自分たちのために育て、全てを食らう!なのになぜ、この世界の全種族が間引かれることがないのだ!」
「世界の種族を間引く?……ねえ、あなたの作ろうとしてる世界ってまさか!?」
「聡いな、アルテミス!そうさ、選ばれた者しか生きられない世界を俺たちは作り上げる!この世界に必要最低限な者だけが生きる世界なら、世界は安泰になるというもの!」
「何、言ってやがる。そのためなら、何人もの犠牲を生み出しても構わないってのか!てめえは!」
クロウは今にも飛びかかりそうな勢い。
「そうさ、その世界こそが文化を生み出し、自然破壊を繰り返し、この国全体を衰退させた者達の罰だ!だからこそ、次の新世界の指導者に俺たちがなってやるのさ!」
「狂っているわ、あなた達は!」
「本当にそう思うか!お前達も見てきただろう、今まで自分のために周りの者を陥れてきた者達を!そんな奴らのために、自分の力を使いたいと思うか!そうだ、お前達も来いレイヴァー!お前達なら、選ばれた者の中に入れてやれる!」
ハーデンの語る姿に、3人は心底驚いている様子。
しかし、ハーデンの手を取ろうとする者は誰1人いなかった。
「悪いな、こっちにはこっちの予定があるんだ、てめえらに協力はできねえよ。」
「はっ!馬鹿者どもが、貴様らのその力が周りの醜い奴らに使わされていることになぜ気づかない!」
「醜いのはあなた達も同じよ!モンスターを自分のいいように使い回し、その手で命を奪うことの重大さを知ろうとしない!そんな人たちが、新しい世界を作れるとでも?」
「そこまで俺たちも暇ではないんだよ、新世界への道を作るのは大変でな。」
スタッ。
ハーデンはレイヴァーの3人から距離を取る。
「やはり、貴様らとは分かり合えないようだな。」
「当たり前だ、俺たちは新しい世界を作り出すつもりなんてねえ。今の世界をどうこうする力が、俺たちにあるとも思えない。」
「ならば諦めると?この世界が崩れていくのを、お前達はただ見守るというのか!!」
「違うわ、私たちはこの世界で皆で生きる方法を見つけ出す。そのために犠牲を生み出していいとは思えない、命は皆平等なの、誰かがその命を奪う権利なんてないわ!」
ズザッ!
アーシェも言葉に熱がのる。
「そうか、ならお前達と潰し合うことになるのは仕方のないことのようだな。ならば、せいぜい足掻いてみせろ、新世界の邪魔をする癌ども!」
「俺たちが癌なら、てめえらも同じ癌だ。毒をもって毒を制す、俺たちがてめえらの侵攻を止めてやるよ、他の誰でもない俺たちの意思で!」
「はっ、蠢く会の大きさも分かっていないお前達に何ができるかな!」
「何だってできるわ!人のする事に、不可能なんてないわ。ハーデン、不可能ってものは、その人が諦めて初めて生まれる言葉なのよ。諦めなければ、必ず道は開ける!……頭に刻み込んだ?」
バッ。
ハーデンは後方に闇できた輪っかを生み出す。
「ならば見せてみろ、お前達の作る世界を。」
シュインッ!
ハーデンはその場から消える。
スサーッ。
レイヴァーを優しい風が撫でる。
「やってやるよ、ハーデン。俺たちはお前達を止める。そのためにこの世界を生きてやる、お前達の思うようにはさせねえ。」
レイヴァーは蠢く会の目的を知った。
そして、真っ向から対抗する事も誓う。
彼らの進む先に、何が待ち受けているのか。
第11章 完
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第11章まで読んで頂きありがとうございました。
クロウ達3人は、新武器の準備をし謎の男の依頼で外に出る。
するとそこには、蠢く会のモンスターとハーデンが。
蠢く会の考える未来と、レイヴァーの考える未来はぶつかり合う。
そして、次回彼が動き出す??
ギルドにきた男は誰!?
新武器登場!
3人とも応援してるぞ!
と思ってくださいましたら、
ぜひ、レビューの記載
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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!
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