第58話 猛攻の鰐、鎖の解放

バゴーンッ!

辺りの小石が空高く弾け飛ぶ。


「アーちゃん!!」


サリアの声が響き渡る。



「うっ……っ!?クロウ!?」

「はぁ、はぁ、よお、生きてるか?」

「あなた、まさか。」

「ああ、そのまさかだ! 歓喜の鎖ラックチェーン解除リリース。」


ガギーンッ!

クロウがアレス家の力を解放し、音を置いてくるスピードでアーシェを守った。


「グァ??」

「悪いな、こっちには時間があまりねえんだ。一気に終わらせるぞ、アリゲイル!!」


シュッ!!

瞬きした瞬間、アリゲイルの視野からクロウが消え、背後に嫌な気配を感じとる。


「俺を捉えられるか! 拳の響ケンノヒビキ六式ロクシキ! 疾風迅雷シップウジンライ!」


ドゴーンッ!

高速で近づき、右後ろ足に裏拳を叩き込む。


そこには、綺麗に手形が残る。


「ガァァ!」

「痛いだろ、もっと味わえよ!  獣の声ケモノノコエ五式ゴシキ犬の子の戯スキュラ!」


シュンッ!

ジャギンッ!ジャギンッ!

アリゲイルの反撃する時間も許さずに、瞬発力を一時的に上げたクロウが、全身に大剣で傷を生み出す。


「ウガァァ!!」


ヒュイーンッ!!

なんとか抵抗しようと、体全体に魔力を纏う。


「くそ、時間が惜しいってのに!!」

「クロくん!任せて! 守れ!守護シールド!」


ブワァ!

ガギーンッ!

クロウの周りに葉っぱの鎧が生まれ、土魔法の衝撃波を受け流す。


「さすがだぜ、サリア!  獣の声ケモノノコエ四式シシキ! 鷲の剛翼グリフォン!」


ズシャン!

空から雷のように降り注いだ一撃が、背中に突き刺さる。


「ウガァァ!!」

「クロくんだけじゃないよ! 参の舞サンノマイ! 悲哀の挽歌ソローエレジー!」


シャキンッ!シャキンッ!

素早いダガーの一撃が、両前足にさらにダメージを入れる。


「ガァァ!」


グルンッ!

回転し、サリアとクロウを剥がす。


「はあ、はあ、はあ。」

「クロくん、まだいける?」

「ああ、けど長くは持たない。それに、魔法を完全に受け流すなんてことはできねえはずだよな。」


ポタッ、ポタッ。

激しい攻防が故に、クロウの体の傷が開き始め、血が滴り落ちる。


「うん、どんな生き物でも100%は無理だよ、体の構造的に吸収なんてこの世界の生き物はできない、何かあるはず。」

「サリア、その原因を見つけ出してくれ。俺が時間を稼いで、その隙をアーシェに狙ってもらう、それでどうだ?」

「いいけど、そんな無理したらーー。」

「無理じゃねえよ、これが1番可能性の高い作戦だ。もちろん、無理だと判断したらすぐに逃げる、だから俺を信じてくれ!」

「……うん、分かった。アーちゃん!」


反対側にいるアーシェに声を届ける。


「なに?」

「クロくんがアリゲイルの動きを止めてくれる、その間に弱点をサリアが探すから、魔力を溜めておいて!」

「けど、私の魔法じゃこいつにダメージを与えられないわ!」

「いいや、どの生き物にも1つは魔法の弱点がある。ほとんどの魔法を使えるアーちゃんなら、必ず倒せる!お願い!」

「わ、分かったわ、クロウ!絶対死ぬんじゃないわよ!」


シュッ!

ガギーンッ!ガギーンッ!ガギーンッ!

クロウとアリゲイルの一騎打ちが繰り広げられる。


「導け!分析スキャン!」


シュイーンッ!

サリアの周りに木の根っこが生え、全神経を集中させアリゲイルの体を解析していく。


(体の表皮が硬いのは言うまでもない。けど、雷の衝撃痕はないし氷の裂傷もない。けど、サリアの植物魔法とクロくんの物理はなんとか通る。……魔法攻撃の特徴は、魔力を貯めてから一気に放つ。まさか、そう言うこと!?)


ガギーンッ!

「ぐはっ!」


ズザーッ!

前足の攻撃を受け流せず、クロウは土煙を立てなんとか耐える。


「グァァ!」

「ちっ!」


シュッ!シュッ!

増幅された瞬発力で、アリゲイルを翻弄していく。


(あと持って10秒、どうする。)


「クロくん!あと1回、動きを止めて!」

「無理を言いやがる、けど、分かった!」

「アーちゃん!サリアに合わせて魔力を練って!」

「ええ!」


ズザッ!

クロウは大剣を構え、真正面から突撃する。


「ウァ!!」


ブンッ!

バギーンッ!

足技を弾き、大剣を手から離す。


そして、


雨の音アメノオト四式シシキ! 叢雨ムラクモ!」


シャキンッ!シャキンッ!

折りたたみ式剣で、連続で足を突き刺しながら突き抜ける。


「ガァァ!!」


ドスンッ!

バランスを崩し、アリゲイルは伏せる。



「えほっ、えほっ。」


ズザッ。

クロウは力を解除し、片膝をつく。


「頼んだぜ、アーシェ、サリア。」

「いくよ、アリゲイル! 撃ち抜け、空の彼方まで!惑星間砲弾マスドライバー!」


ピュイーンッ!!

ドゴーンッ!

魔銃に巨大な魔法を溜め、隕石のように加速した弾丸を顔面目掛け射出する。


「グァァ!」


バゴーンッ!

その魔法を、後も容易く弾き飛ばす。


「はぁ、はぁ、それでいいの、それがあなたの弱点!」


シュンッ!

アーシェはアリゲイルの体の真下に潜り込む。


「なるほどね、サリアのおかげで分かったわ。あなたは魔法を全て打ち消せるんじゃない、ある一点に魔法だけを完全に弾く力を発動できる。けど、今のあなたはサリーの力に反応して私の魔力を感知できてない!」

「ウガァ!?」


自分の真下にいるアーシェに気付いたようだが、もう手遅れ。


「終わらせるわ! 弾け飛べ!闇の波動ダークパニッシャー!」


ヒュイーンッ!!

ドスンッ!

両手をアリゲイルに触れさせ、そこから強力な闇の波動を撃ち出す。


「ウガァ!!」


ドゴーンッ!

その衝撃を無効化できなかったアリゲイルは、数十メートル吹き飛ぶ。



シュイン。

遠くで素材へと変わる。



「はぁ、はぁ、はぁ、勝てた、わね。」

「う、うん。なんとか、勝てた。クロくん!」

「えほっ、えほっ。大丈夫だ、動けないほどじゃねえ。」


3人は満身創痍でアリゲイルを討伐する。


スタッ、スタッ。

3人は合流し、素材を回収する。


「なんとか倒せたけど、助けられなかったな。」

「……ねえ、本当にここに誰かいたのかしら?」

「どう言うこと?」

「いえ、オールドタイプ以外の人族なら私が魔力の塵を感じられるはずなのに、全く感じ取れない。何か引っかかるのよ。」

「けど、それじゃああいつはどこで……っ!?誰だ!そこにいるのは!」


チャキンッ!

クロウは折りたたみ式剣を構える。


「……さすがだな、アレス。俺の気配を察知できるとは。」


スタッ、スタッ、スタッ。

物陰から姿を現したのは、


「てめえは、ハーデン!」

「アルタの時ぶりだな、アレス。」


そこには、アルタの町でクロウとアーシェを追い出したハーデンの姿が。


彼はなぜここに。


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