第56話 武器調達
「運命……ってなんの話だ?」
「すまんな、いきなり変な話をしまって。まあ、店に入ってくれ、少し話そう。」
「お、おう。」
「ちょっと!クロウ!」
タッ、タッ、タッ。
アーシェとサリアが走って追いかけてくる。
「はぁ、はぁ、やっと追いついた。」
「少しは私たちのことも考えなさい!……あなたが、噂の。」
「俺はそんなに噂になってるのか、兄さんのお仲間かい?」
「ああ、2人もいいか?」
「おう、入ってくれ。」
ズザッ。
小さな小屋に、レイヴァーは入っていく。
中には、金属を溶かすための炉、金属を打つための金床、ハンマーや冷やすための水貯め場など一式が揃っている。
「すごい!ここが鍛冶屋さんの仕事場!」
「ここは前の鍛冶師が使ってたところらしい。そこを今は借りてるだけだから、そこまでのものはねえぞ。」
「そうなのね、申し遅れたわ。私は、アーシェリーゼ・ヴァン・アフロディテ。何かクロウに話があったんじゃない?」
「あ、サリアはサリアリット・アルテミスです!」
「そうだな、俺も自己紹介からさせてくれ。俺はレイ・バーン、見ての通り鍛冶屋だ。」
レイ・バーン
オールドタイプの数少ない生き残り。
180cmほどの巨大で、マッチョという言葉がよく似合う体。
色黒で、手や腕、肩などには鍛治でついたのだろう大小の傷、堀が深く目は吊り上がり職人の雰囲気を漂わせる。
真っ黒髪を、緑のタオルで巻いてるのも特徴的。
「レイ・バーン……あんた、バーン家の人か?」
「さすがだな、アレス家当主ベルリの息子よ。」
「俺の父さんを知ってるんだな、国王直属部隊バーン部隊の後継者。」
「もちろんだ、俺はベルリさんに家族を救われた、だから今でこの存在でいられる。オールドタイプとして。」
スサーッ。
風が部屋のカーテンを揺らす。
まるで、不安を煽るかのように。
「どういうこと!?クロウみたいに何か特殊な力で生きたの??」
「いや、俺はアテナイの外に出るように言われてたんだ。それに従ってエルフ族の国、テーベにいた。」
「それでなんとか逃れられたんだね、でも、なんで一目でクロウがアレス家の人って分かったの?」
「簡単だ、その指輪だ。」
「これのことか?」
キラーンッ。
クロウの左手中指に赤い宝石が付いてる指輪を確認する。
「そうだ、それはアレス家の人間だけが持てる貴重な指輪だ。」
「そうだったのか、てことは父さんは自分の身に何かが起きることを見越して俺に渡したのか。これって、何か使えるのか?」
「詳しくは俺にもわからない。……ただ、その身に危険が迫った時に力を発揮するって聞いたことがある。」
「危険……これまで何度も迫ってた気がするけど、この程度じゃダメなのか?」
過去に、多くのモンスターに危険なダメージを受けたことを思い返す。
「まあ、分かるのは、クロウにその力を使わせたくないってことね。」
「そうだね、クロくんの切り札みたいなものなら使わないに越したことはないね。」
「ああ、用心しておくか。……そうだ、レイ。俺たちから依頼してもいいか?」
「……本来は、俺が作るかどうか試験をさせてから打つんだが、今回は特別だ。お前たちの最適な武器を、ここにある鉱石で作ってやる。」
クイッ。
レイはタオルを巻き直す。
「ありがとう、感謝するわ。」
「では、クロウからだな。お前はみたところ、グローブに2刀、大剣と折りたたみ式の隠し剣ってところだな。それと、アーシェの嬢ちゃんは何も持ってないところから見て魔法使いか。最後に、サリアの嬢ちゃんはダガー2本と、魔法ってところかな。」
「すごいね!一目でサリア達のことわかっちゃうなんて!」
「それで、どうだ?作れそうか?」
「まあ、3人分なら3日もらえれば作り上げられるな。ただ、魔法使いの2人の分は特殊で俺もまだ勉強中だ、もしそんな効果でなくても許してくれよ。」
スタッ。
レイヴァーは立ち上がる。
「そんなこと言うわけがないわ、私たちのために作ってもらえるものなら必ず大切に使わせてもらう。ぜひ、お願いしたいわ。」
「ああ、任せてくれ。確かお前たちの部隊が、レイヴァーだったな。この町で最近有名になってる部隊ってことだし、早速取り掛からせてもらうぜ。」
「ありがとうな、頼む。」
ズザッ。
レイヴァーは外に出る。
「……アレス家のクロウか、……ベルリさん、あなたに救ってもらったこの命、必ず恩返しさせてもらいますよ。彼なら、血のホワイトデイの真実を探り出してくれるかもしれない。」
カンッ、カンッ、カンッ。
レイは鍛冶を始めていた。
ところ変わり、ギルドに戻ってきたレイヴァー。
「あ、お帰りなさい!どうでしたか?」
「ああ、おかげさまで武器を作ってもらえることになったよ。」
「それまで時間あるし、クエストでも受けながら蠢く会について調べようと思うわ。」
「ありがとうございます!そうしたらクエストはーー。」
キィーッ。
ギルドの扉が静かに開く。
ポタッ、ポタッ。
そこには、赤い液体が滴り落ちている。
「だ、だれ、か。」
「ど、どうしました!?」
ズザッ!
リィンが焦りの表情を浮かべ、倒れたもののところに向かう。
「おいおいマジかよ。」
ズザッ!
レイヴァーも走り寄る。
「あなた、なにがあったの?」
「あ、あの、川の近くに、みたこともない、モンスターが。」
「ナウサの近くの川って、ここから10分くらいの距離にあるよな。そこか!?」
「そ、そう、です。お願い、で、す。仲間、を、助け、て。」
「わかった、サリアたちがいってくるからお兄さんは休んでて!リィンちゃん、お願い!」
タタタタタッ。
レイヴァーは近くの川に向かい走り始める。
「す、すま、ない。」
「レイヴァーの皆さんはお強いですから、あなたも安心して休んでください。すぐに、お医者さん呼んできますから。」
ズザッ!
リィンも駆け足で治療室に向かう。
倒れた男の茶色い髪が、垂れた液体で赤く染まる。
「そうさ、知っているよ。レイヴァーは強い、だからここに来たんだから。」
ニヤリッ。
男は不敵な笑みを浮かべ、傷による痛みを感じさせない表情。
彼はいったい……。
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