第54話 エリカリット
スタッ、スタッ、スタッ。
レイヴァーはかなりの怪我を負うも、サリアの覚醒した力によりなんとか勝利を得る。
ダメージを
タッ、タッ、タッ。
「よいしょっと、これで運び物は終わりかな。……んっ??」
リィンは荷物を運び、町を走る。
ふと門の外を見ると、そこには傷だらけのレイヴァーの姿が。
「そんな!!クロウさん!アーシェさん!サリアさん!」
「おう、リィン!なんとか倒して帰ったぜ。」
「それも大切ですが!なんですかその怪我は!!」
「訳は後で話すわ、先に医務室に行ってくるわね。リィンは少し待ってて。」
「わ、分かりました。動くのが辛そうなら、ゆっくり休んでくださいね。」
スタッ、スタッ、スタッ。
レイヴァーの3人は医務室に向かう。
(レイヴァーのみなさん、すごい傷だらけだった。何か、あたしに手伝えることはないかな?)
リィンは考え事をしながら、ギルドに戻った。
3人は医務室で治療を受け、ギルドに向け歩いていた。
「流石に痛ぇな、今までで1番危険だったぜ。」
「そうね、出会う特殊個体のレベルもさらに上がってきてる気がするわ。私たちも、対策を考えないと。」
「けど、どうする?仲間を増やすとか、武器を買い換えるとか、そこら辺かな?」
「武器!?良いなそれ!!俺は武器に賛成だぜ!!」
今までにないテンションの高さでクロウが賛成する。
「何?あなたそんなに武器が好きなの?」
「もちろん!武器っていったって、特徴はそれぞれたくさんある!遠距離攻撃向けの弓、刺突攻撃のできる棍、素早い動きが要求される両刃剣、それから後はーー。」
「クロくんが好きなのはわかったから!まずはギルドに行って報告しよう!」
「それと、サリーのことも教えてもらわないとね。」
スタッ、スタッ、スタッ。
キィーッ。
3人はギルドに入る。
「あ、皆さん!お身体は大丈夫なんですか!?」
「まあ、痛みはあるけど戦えないほどじゃねえかな。」
「私もサリーもなんとかね。報告くらいはさせてもらうわ。」
「今回のモンスターは、トレントの特殊個体だったよ。やっぱりチップは落ちてたし、本来のトレントとは戦い方とか特徴が違かった。」
3人は戦いの詳細を報告する。
「分かりました、報告は纏めてあたしが提出しておきます。あたし達も、蠢く会について1つ分かったことがあるんです。」
「なになに??」
「蠢く会には、幹部が7人いるみたいです。ハーデン、ライアはもう接触してると思いますから、後5人はいますね。」
「あんな奴らが後5人か、正直ごめんだな。」
ズザッ。
4人は椅子に腰掛け、情報を共有する。
「それと、手紙の差出人も探してみたのですが手がかりはありませんでした。いつの間にかクエストカウンターの上に置いてあって、それをお父さんが気付いたみたいで。」
「なるほどな、誰かが置きにきたのは合ってそうってことか。それは人族なのか、それとも他の種族か。」
「どちらにせよ、少し警戒は強めたほうがいいわね。」
「はい、ナウサのギルド全体で警戒していきます。それと、あたしからの提案なんですが……。」
リィンはテーブルの上に地図を開く。
「リィンちゃん、これは?」
「最近巷で有名な、流浪の武器職人さんの現れた町です。まだナウサには来てませんが、質のいい武器だと人気なんです!けど、出会う確率が低いのと変わり者だとかで作ってもらえる人は少ないらしいです。」
「ちょうどいいわ、私たちも武器を新調しようと考えてたのよ。ありがとうね、リィン。」
「そんなすごいやつなのか!!絶対探し出す!!」
クロウは目を輝かせ、やる気に満ち満ちている。
「ですが!皆さん今かなり重症なんですから、数日は休んでもらいますよ!」
「分かってるよ、もうあんな怖い顔のリィンは見たくないからな。」
「一言余計ですが、分かってるなら良しです。」
「それじゃあ、あとはサリーかしら?」
クイッ。
サリアは小さく頷く。
「うん、サリアの力のこと話すね。正直、自分のことなんだけど全ては理解できてないからそこは許してね。」
「強い力なんてそんなものよ、気にしないわ。」
「俺たちはありのままのサリアを受け入れる、約束だ。」
「ありがとう。……サリアの中には、もう1人の存在が住んでるの。名前は、エリカリット。なんでサリアの中にいるのか、いつからいるのかも分からない。」
ここからは、サリアの力の秘密。
サリアが知識担当。
エリカリットは戦闘担当。
と言っても差し支えないほど、役割が分けられていた。
しかし、サリアの体はもちろんサリアのもの。エリカリットには、どこまで動かせるのか、どこまで耐えられるのかの限界は知らない。
そのせいで、何度か死にかけたこともある。
その中での1番の代償。
エリカリットの暴走。
サリアの感情の起伏によって、エリカリットは外に出てくることもある。
1番は恐怖の感情。
身を守るために、本能でエリカリットは外に出てくる。
ただ、その時のエリカリットは凶暴を超えており力を制御できない。
下手をすれば、その身が滅びかねない。
なので、普段はサリアの状態で、力を使った時のみエリカリットに少し体を貸すというのを条件に今は共存している。
「これが、サリアの力。気味悪いよね、自分の中に違う人がいるなんて。」
シュンッ。
サリアの顔からいつもの明るさが抜け落ちる。
スサッ。
その頭に、優しくクロウの掌がのせられる。
「そうか?俺にはそうは思えない。」
「……え?」
「だってよ、俺は感情によっていろんな力を増幅させるけど、なかなか気持ち悪いぜ?」
「私も、自分の意思で力を解放できるけど、無理したら体がバラバラになりかねない、変なものよ?」
クロウとアーシェが優しく語りかける。
「そんな、2人はーー。」
「結局、俺たち3人は似たもの同士ってことだ!」
「そうね、クロウと一緒ってのは少し癪だけど、サリーも私と同じね。」
「今なんて言った??」
「なに、何か間違えたかしら??」
「お2人とも!サリアさんは真面目に話してるんですよ!」
クロウとアーシェ、リィンはいつもの調子で話す。
(そうだ、サリアが信じてるみんなは優しい家族なんだ。なのに不安になるなんて、サリアらしくないね。)
「ありがとう、みんな。」
「何もお礼を言われることはしてないわ、それより、早くご飯食べましょう。お腹が空いたわ。」
「あ、じゃああたしがおすすめのお店連れていきますよ!」
「いいね!リィン、頼むぜ!」
スタッ。
4人は何事もなかったかのように、お店へと向かった。
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