第42話 再び歩き始める

タッタッタッ。

クロウ、アーシェ、サリアの3人は館を脱出し、ナウサの町に走る。


「魔族は、この館にどれくらいいた?」

「ざっと見た感じ、20人ってところよ。」

「アーシェちゃん、怪我は平気?」

「ええ、これくらいは問題ないわ。それより、ギルと出会わないように町に戻らないと。」


タタタタタッ。

さらにギアを上げ、町へ向かう。



すると、


「あいつらだ!逃げ出してるぞ!」

「くそっ、ほら吹きの女も逃すし何が起きてんだ!」


ドスドスドスッ!

目の前から数人の魔族が戻ってくる。


「サリア、リィンはやってくれたみたいだ!あいつら、リィンを逃したって話してる!」

「さすがリィンちゃん!」

「どういうこと?リィンも手伝ってくれてるの?」

「ああ、リィンもダイカンもな!ほら、最短ルートでぶち抜くぞ!」


タタタタタッ。

真っ向から3人の魔族と対峙する。


「倒す必要はない、足止めだけして町まで戻るぞ! 拳の響ケンノヒビキ三式サンシキ! 猛雷タケリイカヅチ!」


グルンッ!

ガゴーンッ!

「ぐはっ!」


いつもよりキレのある回転蹴りが、羊の魔族を吹き飛ばす。


「こいつら、かなりのやり手だ!殺しても構わねえ!」

「そう簡単にやれると思わないで! 初舞ハジマリノマイ! 剣舞ブレイドダンス!」


ジャギンッ!ジャギンッ!

流れるようなダガーの攻撃が、ネズミの魔族に傷をつける。


「うぐっ!」

「くそっ、こいつら!」

「本当、あなた達といると疲れるわ。けど、悪くない! 止まれ!感電ボルト!」


ビリリッ!

「うがぁ!」


バタッ。

鯉の顔をした魔族が、雷の餌食になる。


「よしっ、このまま真っ直ぐーー。」

「させるか!俺たちに敵対するバカ者が!」

「ギル将軍!?」


ドスドスドスッ!

両刃斧を構えたワニ顔の魔族だ。


「あいつ、ナウサにいた!」

「やはりお前達か、ここは通さんぞ!!」

「いいや、通るね! 空の光ソラノヒカリ初式ショシキ! 半月ハンゲツ!」


ガギーンッ!

二刀の横回転斬りが、斧とぶつかり合う。


甲高い金属のぶつかる音が響き渡る。


「くっ、なぜその魔族を連れていく!お前達の、仲間ではないのだろう!」

「はんっ!冗談ぬかせ、ワニ野郎!全てこっちの作戦なんだよ!」

「んだと!?」

「少し、俺たちも魔族の現状ってのを知りたくてな。には、一役買ってもらってたんだよ!」


なんということだろう、あのバカなクロウがアーシェの名前を伏せたのだ。


(クロウ、私の名前を隠してくれてる。)

(へぇ、そういうところは頭回るんだ、クロくん意外!)


「くそが、人族如きが俺たち特殊大使をこけにするか!」

「こけにする?何言ってるんだ、俺たちは少しお話を聞かせてもらっただけだ!」


ガゴーンッ!

クロウの二刀が、ギルごと押し返す。


「くっ、町の時とは違う、こんな力があったのかーー。」

「クロくんだけじゃないよ! 参の舞サンノマイ! 悲哀の挽歌ソローエレジー!」


シュンッ!

シャキンッ!

目にも止まらぬ速さで、滑り込みのダガーの一撃が腹を掠める。


「うぐっ!こいつら、ちょこまかと!」


ピカーンッ!

突如、ギルの地面が赤く光る。


「この力、お前!」

「私たちは、3人よ! 燃え上がれ!白炎花フローラム!」


ボォォォ!!!

地面から炎の柱が生まれ、ギルを包む。



「うぐぅ、うぉぉ!!」


バゴーンッ!

炎を吹き飛ばし、体勢を立て直す。


「この連携、本当に仲間ということか。」

「当たり前だろ!  獣の声ケモノノコエ二式ニシキ! 獅子の重撃ネメアー!」


ガギーンッ!

大剣のジャンプ斬りがギルに追い打ちをかける。


「なぜだ、異種族のお前達がなぜここまで!!」

「簡単だよ、仲間になるのに種族は関係ねえ。俺たちは、これから先一緒に生きるって誓ったんだよ、邪魔をするな!!」


ガゴーンッ!

さらに力を乗せ吹き飛ばす。


「くっ、これが例のない種族を超えた連携かーー。」

「そうよ!よく見ておきなさい! 氷の刃よ!凍刃フリージングソード!」


バリリリリッ!

ガギーンッ!

氷の刃を手に持ち、アーシェはギルと鍔迫り合う。


「はっ、魔族が他の種族と手を組むか!落ちたもんだな、てめえは!」

「落ちてるのはあなた達よ!内輪で力を溜めて、それを国の中でしか使おうとしない!それじゃあ、未来を生き残れないわ!」

「舐めたことを!魔族がこの世界最強の種族だ!周りの力などいらない!」

「そうやって独りよがりな生き方は、もう古いって言ってるの!」


シュンッ!

ギルの背後から、クロウが音を消して接近する。


「ちぃ!こざかしい!」

「いくぞ!!」

「ええ!!」


ズザッ!

2人はギルを挟み込むように位置取りをする。


そして、



「一気に斬り刻む!」

「追いつけるかしら!鎌鼬カマイタチ!」


チャキンッ!チャキンッ!チャキンッ!チャキンッ!

鉄の2刀と、氷の2つの刃の凄まじい連撃がギルを襲う。


共鳴術技リンクアーツの発動だ。


「くそが!」


ドスンッ!

両膝を着き、ギルは動けなくなる。



「今よ!」

「ああ!サリア!」

「OK!」


タタタタタッ。

3人はギルから離れ、ナウサまで走る。



「げほっ、くそっ。あいつら、許さねえぞ!!」


ギルの怒号が響き渡る。



「また会うことになるかもしれないわね。」

「まあいいさ、次また襲ってくるならまた退けるだけだ。」

「そうだね、サリア達ならできるよ!」


タタタタタッ。

徐々に館から離れ、もうその姿は見えない。





数十分ほど走ると、


「あっ!!クロウさん!アーシアさん!サリアさん!」


遠くから、リィンの声が届く。


「はぁ、はぁ、リィン、良かった。本当に無事だったか。」

「はぁ、はぁ、ここまで来ればもう平気ね。」

「サリア、さすがに疲れたよ。」


3人は息を整える。



疲れているはずだが、3人の顔には笑顔が浮かぶ。



「なぁ、アーシェ。」

「なに?」

「あ、そうだね!」


スタッ、スタッ。

スッ。

クロウとサリアがアーシェの前に立つ。



そして、2人の手が差し伸べられる。



「おかえり。」

「お帰りなさい、アーシェちゃん。」


ニコッ。

2人の笑みが、アーシェを迎え入れる。


ドクンッ!

アーシェの心臓が、大きく鼓動する。


今まで感じたことのない感情が、全身を支配する。



そう、である。




その返答は、



「……ええ、ただいま。」


ニコッ。

アーシェも笑顔で返す。

今までしてきた笑顔の中で、1番いい顔であった。




ここに再び、3人は集結したのであった。






ところ変わり、少し遠い洞窟の中。



「おおっ!こんな個体まで、さすが蠢く会の方々!」

「お褒めに預かり光栄です。それでは、実験体のご報告をお待ちください、お客様。」

「ああ!期待しているぞ!」



ニヤリッ。

黒いローブを着た男が、奇妙な笑みをこぼす。



クロウ達に休息の時間はあまりないようだ。



第8章 完




◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


第8章まで読んで頂きありがとうございました。


クロウ達3人は、一度離れるも町からの信頼も得て再び集まりました!

再集結した3人に迫る影はいったい?

蠢く会とはなんなのか?


蠢く会が本格的に動く?

3人の連携がさらに見られる!?

3人とも応援してるぞ!


と思ってくださいましたら、

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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!

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