第37話 サリアの気持ち

チュンッ、チュンッ。

部屋に眩しい日差しが差し込む。


昨日は商人を助けたクロウ達3人の歓迎会が行われた。


これまでに、蓮草の保護、ナウサの森のモンスター討伐、そして今回の商人救出。

彼等の功績は、ナウサの町に広がり続けていた。



クロウは多くの人と交流を行い、宴会を楽しんだ。

アーシェは今まで以上の大食感を発動し、お店の店主が冷や汗をかいたほど。

サリアも異種族ということもあり、子供達に人気であった。




そして次の日、朝日がクロウの顔を照らす。




さらに、もう1人。



「ふふーんっ、見てるだけでも面白い!」


クロウの部屋の椅子に座り、寝顔を見守るサリアが。



クロウに命を救われ、これからも一緒にいたいと言われたことを心に留め、少しでも詳しくなりたいという好奇心が彼女を駆り立てていた。


「気配を消せば、さすがにクロくんも起きないよね。」


さらっと怖いことを言うサリア。



彼女は長い時間を生きているが親友の作り方を知らない。故に、手探りで仲良くなる方法を探していた。




コンッ、コンッ、コンッ。

ドアがノックされる。


「クロウ、入るわよ。」


キィーッ。

アーシェが部屋に入ってくる。


「朝ごはん出来てるわよ、早く起きてーー。」

「あ、アーシアちゃんおはよう!」

「あ、おはよう……じゃなくて!何してるの!」

「しぃー!クロくん起きちゃうよ。」


スッ。

サリアは口元に人差し指を立て、音を出さないように言う。


「いや、私は起こしに来たんだけど。」

「それもそうか、でも起こすの勿体無いようなーー。」

「いくらバカな男だからって、俺のプライバシーくらい守ってくれてもいいんじゃねえか?」


ノソッ。

クロウはゆっくりと起き上がる。


「あら、起きてたの?てか私じゃないわ、サリアが勝手に入っててーー。」

「ええ!?アーシアちゃんも一緒に見たかった!?」

「はぁ!?そ、そんなの、み、見るわけないでしょ!ふざけないで!」

「うん?俺、しれっとディスられた?」


寝ぼけた頭でクロウは考える。



「い、いいから!起きたなら、ほら、早く支度してご飯食べるわよ!」

「アーシアちゃん、ツンデレ発動だ!」

「ツンデレってか、ただの食欲じゃねえか?」


ボアッ!

手のひらに炎が浮かぶ。


「2人とも、ウェルダンになる?」

「ごめんなさい。」


スサッ。

2人は頭を下げる。


「ふんっ!」


スタッ、スタッ、スタッ。

アーシェは階段を降りていく。


「なあ、サリア。あまりアーシアをからかうなよ。俺まで被害受けかねない。」

「そんなつもりはないんだけどな〜、じゃあサリアも行くね!」

「ああ、俺も行くよ。」

「え!?着替える!?」


キラーンッ。

サリアの目が輝いてるように見える。


「まあ、そうだけど……見せねえぞ?」

「え?クロくんの体見ちゃダメなの?」

「そんな見せるものでもねえし、なんか注目されると恥ずいから早く出てくれ。」

「はーい、じゃあ他のチャンスで。」

「諦めねえのかよ。」


スタッ、スタッ、スタッ。

サリアは部屋を出ていく。


「はぁ、アーシアもそうだけど、それ以上にサリアの方が分からねえ。女って生き物がみんなそうなのか?……リィンは違そうだけどな。」




ここは、ギルドの中。


「はくしゅん!誰か噂してる?」

リィンは何かを感じ取っていた。





クロウは支度を終え、朝食を食べにいく。



朝は、宿屋のパンにコーンのスープ、ソーセージと、ゆで卵でとても健康にいい食事。



「アーシア、朝からよく食べるよな。」


アーシアの前には、5人前の食事が。

宿屋のオーナーがアーシェが大食感なのを気に入り、多めに用意してくれるようになっていた。


「これくらい食べないと活動できないわ、それより、今日はどうするの?」

「もう少しナウサの近くを調べたいな。最近モンスターの異変が続いてるし。」

「そしたら、ギルドでクエスト受けてついでに調査しようか!リィンちゃんも今日は一緒に行くかな?」

「受付で忙しそうだから、流石に厳しいんじゃないか?」


3人は食事を進めながら今後の方針を決めていく。


「ていうか、あなたの回復力どうなってるの?傷はもう塞がってるし、本当に人間?」

「ああ、しっかりとオールドタイプの男の子だぜ。」

が正解じゃない?」

「うるせえ、ほっとけ。」



カチャカチャ。

食事を終え、食器を片付け宿屋の入り方へ。


「夕食も張り切って作るから、ちゃんと帰ってくるんだよ!」


オーナーのお姉さんから元気な声をかけられる。


「ありがとう、行ってくるわ。」


スタッ、スタッ、スタッ。

3人を眩しい太陽が出迎えた。



いつも通りギルドへと向かう。




周りの風景は変わらない。

なんてことはないいつもの町。


だが、アーシェは何かを感じとる。


「なに?門の方に強い魔力反応?」

「は?ナウサにそんな奴いるか?」

「いつもいないんだから、逆に危ないよ!見にいこう!」


タタタタタッ。

3人は門の方へダッシュ。





「だから、ここに危険な魔族はいませんってば!」

「嘘をつくな!ここに、魔族の魔力の塵が残ってる。匿ってもいいことないぞ!」


門の近くで人だかりができている。


そして、言い合いをしているリィンとワニの顔をした魔族。



「この町は各種族の出入りが多い町です!多少魔力の塵が残っててもおかしくないはずです!」

「いいや、この魔力はそんじゃそこらのやつではない!いいから早く出せ!特殊大使に刃向かうとどうなるかわかるか!」


キラーンッ。

背中に背負ってる両刃斧をかかげる。


「あなたこそ、こんなところで暴れたらどうなるか分かってるんですか!」


リィンは怯えずに対抗する。


「ふんっ、人族が1人死んだところで俺たちに逆らった罪として処罰すれば問題ない、お前のようにな!」


ブンッ!

斧を高くかかげ、リィンに向け振り下ろす。


「っ!?」


リィンは目を瞑る。





ガギーンッ!

金属同士がぶつかり合う甲高い音が鳴り響く。



「なんだ、お前。」

「通りすがりの人族だ、クソ魔族!」


クロウが大剣で斧を受け止めていた。



町に入ってきた魔族は、何を意味するのか。

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