第32話 サリアの過去

スタッ、スタッ、スタッ。

3人はナウサの町に帰還する。


「ふぅ、帰ってきたな。そんじゃあ、まずはギルドに報告にーー。」

「ダメに決まってるでしょ!クロウは医務室に行きなさい、私とサリアでギルドに報告するから。」

「え、でも俺も報酬が見たいなってーー。」

「い、い、か、ら!じゃないと、本当に死ぬわよ!」


シュンッ。

クロウは寂しい背中で、医務室に向かう。


「はぁ、なんでクロウはああなのかしら。」

「あはは、それがクロくんのいいところでもあり悪いところだよね。サリアたちも行こう、アーシアちゃん!」

「えぇ、……ん?あなた、いつの間に私のことちゃん呼びになったの?」

「え?嫌かな?」


クルッ。

先を歩いていたサリアが振り向く。


「……いや、そういうわけじゃないわ。」

「ならいいよね!ほら、行こう!」


グイッ。

サリアに手を引かれアーシェもギルドに向かう。



気のせいか、サリアの顔色が出会った時より一段と明るくなった気がする。



キィーッ。

ギルドのドアを開くと、リィンが出迎えてくれる。


「あ、お帰りなさい!よかった無事に帰ってきてくれて、あれ、クロウさんは?」

「少し怪我をしてしまってね、先に医務室に向かわせたわ。」

「え!?無事なんですか!?」

「平気よ。あの男はかなり頑丈に出来てるから、そう簡単にくたばったりしないわ。」


ドサッ。

森で手に入れた素材を受付台の上に置く。


「これが今回のモンスターの素材よ、鑑定お願い。」

「了解です!……アサルトビーに、あ、グリーンドラコですね!後は……これは何でしょうか?」

「ブラックマンティスっていう、あの森にはいないはずのモンスターだよ。サリアも名前は知ってたけど、どこに生息してるかは知らないの。」

「え!?またそんな危険なモンスターと戦ったんですか!?むむむっ……。」


クッ。

リィンは顎に手を当て考え込む。


「どうしたの、リィンちゃん?」

「いえ、一応確認ですけど敢えて強いモンスターがいるところに行ってるわけじゃありませんよね?」

「もちろんよ、私達だってこの怪我だもの、好き好んでそんなことしないわ。……まあ、クロウだけだと分からないけど。」

「そうですよね!まあ、もし意図的に危険な場所に行ってたら、クエストを発行できなくするところでした!!」

「そんなことないから気にしないで、リィンちゃん!」


ドクンッ!

2人の心臓が大きく波打つ音がした。



もちろん意図的ではないが、度重なる偶然で強敵と戦っている。

気をつけようと2人は誓った。



「では、お父さんにも話してどうにか鑑定してみますね!明日またきてもらえますか?」

「分かったわ、明日クロウも連れてくるわね。」

「お願いするね!リィンちゃん!」


キィーッ。

2人はギルドを出る。



「さて、クロウのところに行こうかしら。」

「うん、確か医務室はーー。」

「おーい、2人とも。」


スタッ、スタッ。

クロウが遠くから歩いてくる。


手や額に包帯を巻き、しっかり処置をしてもらったようだ。



「怪我の状態は?」

「打撲と裂傷くらいで、骨とかは折れてなかったぜ。やっぱ、俺頑丈なんだな。」

「クロくん……ごめんなさーー。」

「なあ、腹減らねえか?そこの飯屋で食っていこうぜ!」


スタッ、スタッ、スタッ。

クロウは近くのご飯屋に向かう。


「あっ、クロくん。」

「私たちも行きましょ、そこで話し合えばいいじゃない。……彼は何でも受け入れてくれると思うわ、天性のバカだから。」

「……うん、そうだね。」


スタッ、スタッ。

2人も向かう。



「はい!お待ちどう!」


ドンッ。

テーブルの上には、巨大なステーキやサラダやパン、パスタやスープなどこの店のメニューが勢揃い。


最初は店主も不安そうな顔をしていた。



だが、爆速で食べ進めるアーシェを見てむしろ楽しそうにお皿を運んできている。



「相変わらずだな、アーシアは。」

「すごーい!サリアもそれぐらい食べられたらな!」

「やめとけ、こいつは例外中の例外だ。」

「うるさいわよ、早く熱くて美味しいうちに全部食べなさい。」


ゴクンッ。

もう何人前食べたのだろうか。


お金の心配はいらないが、クロウとサリアはアーシェの胃を心配してしまう。





あらかた食べ終えたところで、3人は森での出来事を話し始めた。


「サリア、言いずらかったらいいけど教えて欲しい。あの時、何を考えてたんだ?」


クロウの頭の中に、ブラックマンティスの前に立ち尽くすサリアの姿が思い起こされる。


「……うん、それはねーー。」

「あ、そうだ。どんなこと聞いても、俺はお前から離れない。それだけは覚えておいてくれ。」

「何よその言い方は、私も離れるつもりはないわ。サリアは大切な仲間だもの。」

「……ありがとう、2人とも。」


スッ。

少し水を飲み、サリアは呼吸を整える。


「ねえ、不幸の姫アンラックプリンセスって言葉聞いたことある?」

「確か、エルフの国に伝わる伝承の1つよね。たしか……呪われたエルフが町を焼き尽くしたとか。」

「へえ、そうなのか。」

「さすが、物知りだね。そう、そのがサリアなの。」


サリアは顔を暗くし話し始める。


「サリアが呪われたエルフ?どういう意味だ?」



サリアの過去が、少しずつ明かされる。

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