第21話 旅に出る者たち

「何?蠢く会って?」

「俺もあまり詳しくねえけど、とある神を崇拝しその狂信家達はモンスターを操り、人を扇動し、アテナイで多くの人たちを惑わしてる奴らってところだ。」

「ずいぶん胡散臭い奴らね、けど、こいつらがこの町を襲った理由は?」

「さあな、聞いてみるのが1番だ。」


タッ、タッ、タッ。

武器を納め、クロウは黒ずくめの3人の方に歩く。


その顔は、警戒というより、殺意が宿っているように見えた。



「おぅ、お前が今回のターゲットか。」

「俺がターゲット?お前達蠢く会だろ、俺に何のようだ?」

「へっ、この近くで俺の部下が世話になったみたいだな、アルタの冒険者、クロウ。」

「は?そんな記憶俺にはねえが。」


バサッ。

1人の男が黒のフードを脱ぎ、その顔をのぞかせる。



「冗談はよしてくれよ、俺のかわいい部下3人が殴られた跡をつけて泣いて帰ってきたんだ、助けてくれってな!」

「ハーデン、そんなに煽るな、俺たちのことを知られすぎては困る。」


ハーデン……蠢く会の特攻隊長。紫色のドレッドヘアーに、長い黒いヒゲ、顔には無数の傷が残り体はゴリラのような大きいサイズ。

背中には大きな鎌が背負われている。



「3人の部下……お前、あの親子を襲ってたやつのリーダーか。」

「襲ってたなんて人聞きの悪い、俺の仲間にしてやろうと勧誘してたんだよ!」

「ふざけんじゃねえぞ!仲間だ?てめえらがやろうとしてたのは奴隷にすることだろうが!」

「どちらも変わらねえだろう!、結局は同じ存在なんだよ!」


ギリッ。

ハーデンの強面が、さらにキツくなる。

目が鋭くなり、眉は上がり、殺意剥き出し。


「あなた、どうしようもないクズね。」

「あ?なんだてめえ、俺の情報にはないやつだな。」

「載ってなくて結構よ、あなたと親交を深める気は1ミリもないわ。」


クロウとアーシェもハーデンに噛みつきそうな勢い。



「そうか、そんじゃあ俺たちとお前ら2人、どっちが支持されるか試してみるか?」

「何をする気だ。」


バサッ!

ハーデンはローブを開つかせ、だんだんと集まってきた町の民の方に向き直す。



そして、



「さあ、アルタの民よ!お前たちの意見を聞かせてくれ!」


ハーデンは両手を広げ、町全体に響き渡る声で話し始める。


「ここにいるのは、俺たちの敵だ!モンスターを倒して町を救ったように見えるが、こいつらがいなければアルタは襲われることはなかったのさ!」

「こいつ、なにをーー。」

「オールドタイプがこの町に潜んでいたから、俺たちは掃除しにきてやったんだ!お前たちも、オールドタイプの怖さは知ってるだろ?」


ザワザワザワッ。

町の人たちが騒がしくなる。


決して、オールドタイプが何をしたのか目にしたわけではない。


だが、国王ラストによって、と教え込まれたせいで皆の頭には絶対許してはいけない存在として確立されていた。



「オールドタイプを消すために、モンスターたちはアルタを襲った!ならば、1番危険な存在は誰だ!!」


ハーデンの言葉に呼応するように、


「お、オールドタイプだ!」

「オールドタイプ!この町から出ていけ!」


ワァー!ワァー!

アルタの人たちはクロウに向け怒りを表し始めた。



「ははっ!クロウ、これがこの町の答えだ!」

「ハーデン、くそっ。」


ヒュンッ!ヒュンッ!

バチッ。

小石がクロウの頭に当たる。


ツターッ。

石の当たったところから赤い血がゆっくりと滴り落ちる。


「クロウ!」

アーシェが持ってた布で血を拭う。



クロウは一切反撃しようとしない。

ありのままを受け入れている。





そんな中、アーシェの怒りが爆発した。


「あなた達、いい加減にしなさい!!」


バゴーンッ!

空高く大きな火の玉を放つ。


「クロウがオールドタイプだからなに!!クロウがいなかったら、あなた達全員襲ってきたモンスターに殺されてたのよ!!」

「そいつがいなければ、ここに襲撃はなかった!」

「そんな証拠がどこにあるの?この男の言葉を鵜呑みにすることしかできない哀れな人間が!あなた達は、クロウが身を隠してたここ数年で、何か被害にあった??不幸が訪れた??」

「そ、それは。」


町の人たちの声が少しずつ弱くなる。


「オールドタイプが何したか、あなた達は見たことあるの??そこに、クロウは関係しているの??ここにいるバカなクロウは、その身を削って、この町を守るために全力で戦ってた!

「う、うるさい!余所者が偉そうに喋るな!」

「国王様が悪いやつと言ってるんだ、そいつは俺たちの敵だ!!」


町の人たちはアーシェにも石を投げ始める。


(くっ、この人たちは考えることを放棄してる。これじゃあ、クロウが傷つくだけ。……こうなったら、私がこの人たちを全員倒せば!)


「あなた達、覚悟はできてるんでしょうねーー。」

「やめろ!アーシア!」


ガシッ!

クロウがアーシアの魔法を放とうとする手を強く握る。


「何するの!この町の人たちは、あなたになんの恩も感じていないのよ!もう守る必要はーー。」

「それでもだ!お前に、余計なものを背負わせたくない。……俺はこの町を出る、悪い、迷惑かけたな。」


スタッ。

タッ、タッ、タッ。

ゆっくりとクロウは町の入り口へ歩く。


その背中は、何もかもを諦めてしまいそうな暗いもの。


「はははっ!無様だな、クロウ!」

ハーデンは高らかに笑う。



クロウの姿をアーシェはしっかりと見つめていた。


そして、


「ふざけないで。まだ私は、あなたから離れるなんて言ってないわ!」


タッタッタッ。

アーシェも走って後を追う。


そして、振り返りざまに言い放った言葉。




タタタタタッ。

アーシェはクロウに追いつく。


「待ちなさい!クロウ!」

「なんで来た?アーシアまで巻き込まれる必要はーー。」


スパーンッ!

アーシェはクロウの背中を思いっきり叩く。


「痛っ!!なにすんだ!」

「私は私の意思であなたについて行く。来ないで欲しいなら、私の手足を縛っておくことね。まあ、そんなことされる前にあなたを燃やすけど。」

「だけど、お前ーー。」

それが、私の恩返し。」


2人はアルタの町を離れる。


彼らはアルタから追放され、行き先を探していた。




数十分ほど歩いた地で、


「ここからどうするか、俺たちの噂が出回ってないところを探さないと。」

「けど、そんな場所どこにーー。」


すると、後方より声が聞こえる。


「クロウさん!アーシアさん!待ってください!」


タタタタタッ。

2人のことを、リィンが追いかけてきたのだ。


「リィン?なんで?」

「はぁ、はぁ、あたしも、お2人に同行させてください!」

「いいの?私たちについて来たら、かなり大変よ?」

「承知の上です。これが、私の選択なので!それに、もうアルタのギルドに除隊届出しちゃいました!」

「すごい行動力ね、あなた。」



突如仲間となった、リィン。

3人となった彼らは、次の町を目指す旅を始めた。







ここは、少し遠いアテナイのどこか。


「ふぁぁ、この町も飽きてきたな、そろそろ面白いこと探しに行こうかな。」


スタッ、スタッ、スタッ。

黄色い髪のエルフが、ふらふらと歩く。


彼女はいったい……。


第4章 完




◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


第4章まで読んで頂きありがとうございました。


2人はなんとかアルタを守りました!

しかし、彼らに与えられたのは賞賛の声ではなく、追放。

次、彼らが向かう先とは。


初めての3人行動!!

そして、新キャラ登場!?

3人とも応援してるぞ!


と思ってくださいましたら、

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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!

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