第11話 たどり着いた地で
「おらおら!あの女ごと馬車を奪っちまえ!」
ヒューンッ!!ヒューンッ!!
火の魔法と鉄の矢が馬車を壊さんと複数飛んでくる。
「貫け!
ビキキッ!
ガゴーンッ!
地面から氷の柱が聳え立ち、火の玉と矢を弾き飛ばす。
「氷魔法使いか、なら距離を詰めろ!近距離では使い物にならん!」
「それはどうかしら! 刈り取れ!
シュンッ!
刃の如き鋭い風が、1人の魔族を吹き飛ばす。
「うわぁ!!」
「ちっ!複数魔法使える人族だと?警戒しろ!」
ドダダダダッ!!
魔族達は距離を空け馬車を追う。
(数は後5人。けど、ここで力を見せてしまってはイアに私の情報が流れるかもしれない。最低限の力でどうにかしないと。)
ガゴーンッ!ガゴーンッ!
馬車も魔法を避けながらただただ突き進む。
「かなり距離を詰められた、一気に攻めるぞ!」
「くそっ、馬車の分と私が乗ってるからスピードで勝てない、だったら! 上がれ!
ドドーンッ!
地面から大きな土の壁が隆起し、道を塞ぐ。
「ちっ!迂回しろ!」
ズザッ!
少し距離を離されたが、魔族達はまだ諦めていない。
「これじゃあ、いつか追い付かれる。……ねえ、行商人さん!ここからアテナイまで後どのくらい?」
「え?まあ、馬を使って約2時間といったところだろう。」
「馬で2時間、なら、あなたは自分が逃げる準備をしなさい!」
「はっ!?何を言って!」
ガゴーンッ!ガゴーンッ!
アーシェも炎の弾丸を撃ち、魔族を退けようとする。
「こいつらの狙いは、お金だけよ。なら、あなたの持ってるお金と、複数の魔法を使える人族、どっちを狙うか分かるでしょ?」
「それって、おい、あんたまさか!」
「ここまで連れてきてくれてありがとう。これはお礼よ、さあ行って!」
シュッ。
ドサッ。
商人の座っている隣に、アーシェの持っていたお金が投げられる。
そして、
シュンッ!
アーシェは馬車から飛び降りる。
「おい!嬢ちゃん!」
「あなたに迷惑をかけたくない、行って!」
「くっ、すまない。」
ダダダダダッ!
商人はひたすらに走る。
「おう、なんだ犠牲になるつもりか?」
「犠牲?冗談はよしてよ、私はまだ死にたくないから犠牲にはならないわ! 止まれ!
ドゴーンッ!
空からの雷が、魔族1体を撃ち抜く。
「げごぁ!」
「こいつ、すでに5属性の魔法を使ってやがるぞ、てことはかなりの価値がつきそうだな!」
「ああ、しかも意外とスタイルも良いし顔も悪くない。こいつを売れば、一生楽して暮らせるかもな!」
「何言ってるのかしら?私は売り飛ばされるつもりはないわ。 跪け!
ドーンッ!
魔族達に重力が上乗せされ、動けなくなる。
「うぐっ、こいつ魔法をいくつ使えやがる!」
「それを知る必要はないわ、あなた達はここで死ぬのだから! ファイーー。」
ガゴーンッ!
近くの森から大きな爆発が聞こえる。
「なんだ?」
「爆発?こんなところに何がーー。」
ズーンッ!
アーシェにも大きなプレッシャーが与えられる。
「この感じ、まさか!!」
ドスッ、ドスッ。
森の中から別の魔族が現れる。
「うん?こんなところに魔族?モンスターじゃねえのか。」
「あ、おい、あれって。」
「ああ、そうだ、あの胸にある紋章は、ハデス様の幹部の1人の証だ!」
「くそっ、こんな時に!」
ダダダダダッ!
アーシェは距離を取りつつその場から森に走り抜ける。
「うん?あいつ森に行くのか?」
「あ、あいつは魔族じゃありません!魔法を6つは使える、人族です!」
「人族だと?……なら、ここを通すわけには行かねえな!」
シュンッ!
幹部と呼ばれる男は、一瞬でアーシェとの距離を詰める。
「鷹の顔を持つ魔族、あなたはーー。」
「俺を知っているようだな、なら、尚のこと通せないな!」
ガギーンッ!
鷹の顔をした魔族の蹴りが、アーシェを吹き飛ばす。
「ほぉ、寸前で水魔法を使い衝撃を和らげたか、かなりの手慣れだな。」
「げほっ、げほっ。
「おい人族のお前!なぜスパルタにいる?そしてなぜ逃げる?」
「逃げてなどないわ、私は国に帰りたいだけよ、大人しく通してもらえないかしら?」
ヒューッ。
静かな風が顔を撫でる。
「はっ、なるほどな、お前は只者ではない。俺を目の前にして、恐れるどころか対抗心をその目に宿らせている。やはり危険な存在だ!」
「くっ、こんなところで死ねないの!」
ガゴーンッ!バゴーンッ!
鷹の魔族の力は凄まじく、物理攻撃だけで辺りの木々を切り倒していく。
「おらおら!逃げてばかりじゃ勝てんぞ!」
ガゴーンッ!
大木をアーシェ目掛け蹴り飛ばす。
「うわぁ!」
ズザーッ!
身体中から血を流し、力をかなり消耗していた。
「はぁ、はぁ、はぁ。後どれくらいで、アテナイにつけるの?」
「そろそろ降参しろ、女は殺すのは特に気がひける。」
「こいつに勝つ必要はない、少しでも距離を取れればそれでいい! 燃やせ!
バゴーンッ!
地面に向け複数の炎の弾丸を放つ。
そして、その衝撃波で自分を吹き飛ばしアテナイの方角に身を投げる。
「くっ、無茶な魔法を使う。……この先は、アテナイか。まあ、この先のモンスターは危険種ばかり、生きては辿り着けないな。」
ズザッ!
鷹の魔族はイアの方へ引き上げる。
あれから、何時間歩いただろう。
至る所から出てくるモンスターを倒し、傷は増え、時間すら感じられない。
恐怖が頭によぎった。
このまま、辿り着けないのではないかと。
そんなアーシェに、一筋の光が。
「お、お前、生きてんだよな?その傷、何がーー。」
アーシェの目の前に、1人の男が現れる。
「ここ、は?」
「え?ここは、アテナイのアルタの町の近くだ。」
「アテ、ナイ。よかっ、た。たどり、つけ、た……。」
ガクッ。
ここでアーシェは力尽きる。
彼女の1人旅は、なんとか終わりを迎えることができた。
そして次の日、
目を覚ました彼女はベッドの上で包帯だらけであった。
第2章 完
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第2章まで読んで頂きありがとうございました。
次はアーシェの脱出を見ていただきました!
なんとかたどり着いたアテナイ。そして、男の子との出会い。何が起きるのか?
2人の視点がやっと重なります!
さらに戦いが起きるかも!?
2人とも応援してるぞ!
と思ってくださいましたら、
ぜひ、レビューの記載
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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!
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