素材をインゴットへ
「さて、やろうかな!」
大量のミスリルゴーレムの素材を素材置き場へと並べる。
トーマスに求められたインゴットの数は10個。この素材をすべて魔力加工でインゴットへと帰れば最低でも15個にはなる。だからそれなりに余裕もあるので、一番いい状態になれるように試行錯誤してみよう。
まあ、そうはいってもせいぜい作業の順番が変わる程度だ。
魔力加工による付与のための調整をするのを素材時にやるか、インゴット時にやるか次第だ。
「…最初だしちょっと試しに両方でやってみようかな」
素材時に調整し、そのまま付与。そして可能だったらインゴットへと変換させた後にもう一度調整して付与の能力を高める。もしかしたらそれによって一回の付与より高い能力の付与ができるかもしれない。
「能力高すぎて怒られる可能性もあるし、一個だけ作って一度確認に行こうかな…。あ、でも安定してその品質にできるか確認してからのほうがいいかな…」
できるかどうかはわからないが、仮にできたとしてその状態で安定できないと素材としてはダメになりかねない。
多少の誤差ならともかく、あまりにも付与やインゴットの性能や品質に差があるとうまくなじまずに全体的な品質を落としてしまう。だから安定した性能と品質のところを見極めないといけない。
「ま、とりあえずやってみようかな」
インゴット二つ分の素材を手に取り、魔力で包み込む。
最初に付与をするための調整を行っていき、それが完了したら衝撃吸収の付与をかけていく。一度コツを掴めばそれなりに楽にできる。まあ、そうはいっても集中力が必要なのは変わらないが。
そして付与が終わったら魔力加工で素材をインゴットへと変えていく。魔物の素材だからというのもあるだろうが、通常の鉱石よりも無駄なところがない。まあ、それでも端材のようなものは出るのだが。
とりあえず付与が残った状態で二つのインゴットができた。付与の性能としても下降することもなかったので、再度魔力で包み込んで調整を始める。
素材の時にやったので、一回目よりかはできる調整がないが、それでもインゴットへと加工したことで発生した隙間がある。それを調整していき、再度付与を二つのインゴットへとかける。
それによって一回目より付与能力がさらに上昇した。
「衝撃吸収(強)かぁ…通常の状態が中レベルだから一段階上がったのかな」
二つとも衝撃吸収(強)が付与されたので一度確認のために鍛冶屋へと向かおうとする。
しかし、扉を開けるとすでに日は暮れており、真っ暗になっていた。
「…明日にするか…」
今日はこのまま休むことにして、報告は明日することに決め、自宅へと戻った。
「おはようございまーす」
翌日、早朝から鍛冶屋へと赴き、インゴットの状態をトーマスに確認してもらう。
「ん?おう、クレイか。どうしたんだ?」
「一応付与付きインゴット二つ作ったんでこんな感じでいいか確認に来ました」
そう言って二つのインゴットを出す。
「品質的にも付与の性能としてもこんな感じで作れると思いますので」
調べるように軽くインゴットをコンコンと叩く。
「衝撃吸収が強くなったのか」
「うん、大丈夫そう?」
「これくらいなら問題ない。あとはこの品質を残り8つ作ってくれ」
「わかりました」
とりあえず問題ないようなのでまた戻って作業を開始する。
ミスリルゴーレムの素材はサイズがそれぞれまちまちなので、一気に複数インゴットが作れるものもあれば、一つしか作れないやつもある。
一つしか作れないやつは個数調整のために使うとして、とりあえず大きいやつからやっていく。
「これはえっと…4個ほどインゴット作れそうだね」
調整と付与をかけさせすれば、複数のインゴットにしてもそれぞれに同様に付与されている。だからそこらへんは気にしなくてもいいのだが、サイズが大きければその分作業にも時間がかかる。
「お兄ちゃーん、ご飯だよー」
「ん?もうそんな時間か?」
まだ作業の途中ではあるが、それでも一区切りとして夕飯を食べに自宅へと戻る。
しっかりとご飯を食べ、お風呂に入ってしっかりと眠る。そういったメリハリが大事だと気付けたので、しっかりと身体を休ませておく。
翌朝、目を覚まし、ちゃんと朝食を食べてから作業を再開する。
時間を置いたから少し性質が変化しているかと考えたが、そういったこともなく、昨日の続きから始められた。
きちんと休息を取れたのでしっかりと集中して作業ができ、順調に調整ができていく。
インゴット4個分の素材の調整には一日半ほどの時間がかかってしまったが、何とか完了し、そして付与していく。
その付与にも時間がかかり調整と付与、二つの作業に合計で2日ほどかかってしまったが、それでも何とか完了させた。その後夕飯を食べた後に素材をインゴットへと変換させてから、就寝した。
翌日に4個のインゴットをそれぞれ再調整し、再度衝撃吸収の付与をかけることで衝撃吸収(強)へとする。
「よし、これで6個だから…あとは4個かな。今日で…4日目だから…あと3日か…間に合わせないと」
残り4個だが、4個作れる素材はない。あとは3個や2個、1個のがいくつかある。それぞれをまとめて加工することはできないので、一つずつ加工していく。
「んー…2個の奴だと一日でできるから、それをやりたいけど…2個用の素材一個しかないんだよなぁ…。とりあえず3個の奴やろ」
同じ手順でしっかりと加工していく。3個分にも2日。そして1個用の素材を1日で加工し終え、ミスリスゴーレムのインゴットを10個作り終える。
「よし…あとはこれを持って行って、親方に任せておかないとね」
インゴット10個空間収納で片付け、鍛冶屋へと持っていく。
「こんにちわー」
「おう、クレイ。インゴットはできたか?」
「ええ、できましたよ。はいどうぞ」
そう言って受付にインゴットを並べる。
「ふむ…」
トーマスは一つ一つ丁寧に品定めしていく。
「………よし、品質も付与も問題なし。よくやったな。あとは俺に任せておけ」
「ええ、お願いします。残った素材はどうします?」
「インゴットにしてあるのか?」
「いえ、素材の時点から付与すると効果が上がるのがわかったんで素材のまま残してます」
「そうか。じゃあこの依頼が終わったら残った素材に関して話すとするか」
「わかりました。ではまたその時に」
「ああ」
インゴットをトーマスへと預け、クレイは鍛冶屋を後にする。
「んーーーー…ふぅ…さすがにちょっと疲れたから数日程お休みしようかな…あー、でもここ最近ずっとこっちにかかりきりになってたし、定期的に卸してたやつ作っておかないとかなぁ…」
今回の依頼を受けた際に裁縫師と革細工のほうにはしばらく納品できないことは告げておいた。しかし、これで一区切りついたのでそちらの方も再開したい。
「…せっかくだし、ちょっと今回学んだこといろいろと試してみようかな」
納品したものにそれをするのはよくないかもしれないが、一つ二つほどやって、お試し的な感じで渡すのもありかもしれない。
そんなことを考えながら少し楽しそうにクレイはクラフト小屋への道を歩きだした。
ーーーー
短くてすいません(´・ω・`)前回と合わせて書こうか悩んで分けたら短かった…
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