第6話 受験後

次の日、何事もなかったかのように昼間を過ごし、塾が終わって帰宅すると、ケイはいつものように勉強していた。


お風呂に入る準備をしていると、「一緒に入っていい?」と聞かれたので、いいよ、と言った。



バスタブに一緒に入ってキスをした。

反応する体を確かめ合う。


「……父さんと母さんには、絶対内緒だよ。こんなことしてるってバレたら、二人とも悲しむから……」


ケイは、うん、と言って小さく頷いた。



♢♢♢



受験勉強は意外と順調だった。

小テストの結果が良かったり、テキストがたくさん進んだときは、キスをしてあげるもケイは喜ぶ。

身体的な快楽が報酬というのは、わかりやすいしコストがかからない。

とはいえ、よくこんなに飽きずに毎日キスができるもんだな、と思う。



俺は、持ち前の勉強熱心さが出て、キスの仕方の本やネット記事を読んだ。

試せる相手がすぐにいる。


読んだら、すぐにケイを呼ぶ。

俺が名前を呼んでハグをしたら、キスの練習が始まるというパブロフの犬のような習慣がついた。


ケイにも、してほしいキスの仕方を伝えた。

ケイの順応は早かった。



ある日、すごくキスが気持ち良かった日があった。

キスだけでイキそうになった。

いつもはケイだけが気持ち良さそうに喘いでいるのだが、今回は俺も声が漏れた。

ケイは「嬉しい」と言ってキスを続けてくれた。



♢♢♢



受験はあっさりと合格した。


小6になり、授業動画が見れる通信教育を始めたのだ。

基礎力と学習習慣の下地ができているから、ケイの成績は面白いくらい伸びた。




ケイは中学生になり、学校の友達と充実した毎日を送り始めた。


「『スグルの弟だな』って、よく先生や先輩から言われるよ。デキる兄を持つと比べられて大変なんだ」


と、笑って言った。



俺も高2だ。

大学もエスカレーターとは言え、授業の進度が早く、油断できなくなっていた。


ケイと触れ合わない日が続いた。



♢♢♢



俺に彼女ができた。

俺がよく勉強を教えていた、同級生だ。


「スグルくん、教えるのホント上手だよね。学校の先生とか、ならないの?」


と、言われた。

弟に3年間教えてたんだ。

上手くなるはずだよ。

ただ、ご褒美がキスなんだから、学校の先生にはなれない。




何気なく、彼女ができたことをケイに報告した。

ケイは「そうなんだ、良かったね。」とだけ言った。



その日の夜、ケイは俺の布団に入ってきた。


「どうしたんだよ」


と聞くと、


「……彼女ができたから、俺とはもうしない?」


と言われた。



勝手に自然消滅だと思っていたから、改めて聞かれて考えた。


ケイがキスをしてくる。

気持ち良かった。

中学生になって、またこれまでとは違ったキスになっていた。


「彼女とケイは違うから……したくなったら、言って……」


つい、そう言ってしまった。



♢♢♢



ケイは、翌日も絡んできた。


セックスをしたいという。


いつかそうなるかもしれないと思っていたけど。

4歳差があって、俺はすでに大人に近い体格だが、まだ子どものケイでは何だか可哀想に思えた。


ケイは猫のように擦り寄ってくる。

もしかしたら、彼女より先にしたいのかもしれない。


俺を好きなわけでもなく、快感のためでもなく、ただの嫉妬でセックスをしたがっている。

そんな気がした。



部屋が分かれていればなんとなくやり過ごせそうだが、この子ども部屋でずっと一緒じゃ逃げ場がない。

ケイの希望に応えた方が良さそうだと思った。


一緒にネットを見て、やり方を調べる。

今すぐにできるわけじゃなさそうだ。

また今度にしよう、と言うと、ケイは何度もキスをしてきた。

俺にその気がなさそうだと感じると、がっかりしたように俺にもたれかかった。

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