第二章 学園編
第33話 いつかの夢
赤かった。地面も、建物も、空気も、空も、すべてが燃え、赤く染まっていた。
ソロンは思った。『あぁ、またこの夢なのか』と。
たまに見るこの燃え盛る光景。
その場にいる者は、あまりの熱さに苦しみ、呻いていた。
常人であれば、精神がおかしくなりそうなくらい残酷で悲惨な、そして何より、リアルな光景に、しかし、ソロンは動じない。見慣れてしまった、というのもある。しかし、ソロンは知っている。この夢はこの程度なら可愛いものだ、ということに。もっと目を逸らしたくなる光景がある、ということに。
「・・・・・・な・・・ぜ・・・だ・・・・・・」
ソロンが恐れる光景。何度体験しても慣れない情景。
それは、たった一人の男の言葉から始まった。
「何故・・・・・・この・・・ような・・・ことを・・・する・・・・・・。まだ・・・ “試練” には・・・早すぎる・・・はずだ!・・・・・・なのに・・・何故だ!答えよ!我が
途切れ途切れで放たれた言葉は段々とまとまりを持ってきた。それに比例し、男の眼に宿る怒りが増していく。そして、男の周囲に黒いモヤのようなものが包み始めてきた。
『確かに当初の予定とは異なる。急な変更であっても事前に一言伝えていた。しかし、今回は致し方のないことなのだ!このままでは――――――。』
どこからか聞こえてくる声。話の内容から、声の
「だが、それでもここまでする必要があったのか!?」
『あぁ、あるとも!寧ろ、これでも抑えている方だ!』
「本当に止めないのか?」
『あぁ、止めないとも。目的が達成するまでわな』
段々と雲行きが怪しくなっていく。それと呼応するかのように空には雲がかかり、雷が鳴り響いてきた。
「そう・・・か、ならば私は貴方に、いや、俺は貴様に叛逆する!来い、【
『なっ!・・・・・・この、大馬鹿者め・・・・・・。ならば、貴様を “世界” の叛逆者とし、討伐する!!』
そして、世界最大級の
エルサレム神聖法皇国が保有する聖書にて、何千、何万年も前に起きたとされる
聖書には、男は多くの神族を葬り、 “世界” にさえ、傷を与えたが、負けて捕まってしまった。生き残った神族や天使族などは魂ごと滅してしまえ、と十二始祖王に直訴したが、彼ら彼女らは如何なる理由があってなのか、男の力を封印し、転生させることにしただけだった、と書かれている。
何故、ソロンがこのような夢を見るのか、ソロンを除いて他にはいない。ソロン自身も誰かに語ったりはしない。
「決して、この恨み、この憎しみ、この怒りは忘れぬぞ!」
男が転生させられる直前にして、ソロンがこの夢から覚める直前、男がそう言い残したのをソロンはしっかりと聞こえてしまった。そして同時に、嫌な予感を抱いた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・久々に見たが、やはりキツイな」
久々に寝汗を大量にかきながらソロンは起きた。
「ここずっと、いや、シエルに仕えてからあの夢を見なくなったのに、何故今更になって?・・・これは吉なのか、凶なのか・・・、それとも、ただの悪夢なのか・・・・・・」
シエルに仕える前まではこの夢をよく見ていた。酷い時は男の周りにあった屍となった者たちが殺されるところを見ることもあった。しかし、不思議なことに、シエルと出会い、仕えるようになってからは殆ど見ることがなくなった。まるで、シエルが恩返しのために守っているかのように。
「あぁ、できればただの悪夢を見せられただけ、であって欲しいな〜」
嫌な予感を胸に抱えながら、ソロンはそう願わずにいられなかった。
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