第23話 入学試験~実技二次試験~③
「シルフィア、【
アリアは先制攻撃にしてはそこそこ強い、だが、ローズ相手であれば妥当な魔法を放ってきた。
「おや、その魔法は君が編み出したのかい?」
放たれた魔法を紙一重で躱しながら、ローズは呑気に問いかけてきた。
「いえ、とある本に載っていました。どちらかというと日記に近いようなものでしたが・・・・・・」
アリアも余裕を含む口調で返す。
「ほほ〜う、ということは君は彼が掛けた封印を解いたことになる。彼の封印は私でも面倒と思うものなのによく解けたね」
「そうだったのですね、道理で癖の強い強固な封印だと思いました。あれを解くのに半年もかかったのですから」
「初見で解いた時間だとは思えない短時間だね!一生かけても解けない者が普通だというのに・・・・・・どんなに短くても一年はかかる、いや、そういえば数年前、彼から新たに封印が、それも最短記録を更新して解けたと報告を受けていたような・・・・・・まさか、それが君だとは!」
「お褒めに預かり光栄です!しかし、彼は何者ですか?貴方に面倒と言わせる封印を使うとは・・・・・・」
「それは彼自身に、直に聞きなさい!」
こんな話をしている間もアリアの魔法は止まらない。詠唱すらしていないので完全詠唱破棄のその先にある無詠唱か、と皆がそう思っていたら
「君、それ精霊に委託しているね。最初は詠唱するけど同じ魔法を連続して放つ際は精霊に委託し、無詠唱を実行する技術・・・・・・彼もとんだ置き土産を残したものだ!まさか、そんな技術まで書き記した本を残していたとは!」
そんな張本人はというと、
(フフフ、まさか法皇様自らこちらに来てくれるとは誤算でしたが嬉しい限りです。遅かれ早かれお披露目する予定でしたからね。ざまぁ〜、とはこのことでしょうか?)
なんて笑いながら思っていた。
「ならば、こっちはこれを使うとしよう!誇ると良い!私にこの魔法を使わせるんだから!」
「はい?」
「まさか、・・・・・・それは大人気なさ過ぎませんか?」
ローズは喜び、アリアは(恐らく、他の者たちも)疑問に思い、ソロンは溜め息をついた。
「【遥か彼方に輝く満天の星々】
【星に祈りを捧げ】
【悪しきものを我は
【いと聖なる御方よ】
【虚無を切り裂く輝かしき色彩の
【そして、彼の者より生まれし神々よ!】
【我が想い、我が行いを照覧あれ!】」
それは最上級魔法だった。はっきり言って大人気ないことこの上ない。
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(ソロンSIDE)
「ソロン、あれを凍てつかせてもいいですか?」
「無理です、やめて下さい。恐らく、跳ね返ってきますよ」
シエルも大人気ない、というより危険だと判断したのか魔導凍結を行おうとしていたが、ここで自分に確認を取る辺り、ちゃんと理性が残っている証拠なのだろう。
しかし、ローズのような現人神クラスやそれに近しいクラスの魔導師となると魔導凍結のような妨害を跳ね返すという技術を持っている。それにシエルの持つ
「シエル様、私が参りましょうか?」
「いいの?」
「えぇ、行って戻ってくるだけですのですぐに終わります。念の為、シエル様の身体強化を私に掛けておいて下さい」
「分かったわ♪」
自分が直接向かうことにした。身体強化を幾重にも掛けていけば誤魔化しは効くし、何より皇族の身体強化も含まれるので自分より皇族の身体強化の性能が良かったと思ってくれるだろう。あとはタイミングだけだ。
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(アリアSIDE)
「やばいわね」
「さぁ、避けられるものなら避けてみなさい!【
魔力の流星群が私にに降り注ぎ、もう駄目かと思った寸前、
「今だ!【重複身体強化】!」
「ソロン、今よ!【
そんな声と共に誰かが私を抱きかかえ、瞬時にその場から離れた。
「やれやれ、法皇様!大人気なさすぎますよ!この人を殺す気ですか?」
それはソロンだった。彼が自分をお姫様抱っこをして助けてくれた。そう思うと頬が赤くなる。助けられたことにではなく、お姫様抱っこ自体に、だ。生まれて初めて異性にお姫様抱っこをされているということに羞恥心がある。しかし、当の本人はつい先程自分を殺しかけた相手に苦笑を、いや、割と本気で責めている。
どうして君はあの現人神に対して平然とそんな態度をとれるのか?
そう問いかけたくなる程、彼の目には怒りが、そして呆れが宿っていた。
(あぁ、君がローズ様の言う『とある者』、『彼』なんだね)
そう思い、だが、自分のために怒ってくれていることに安心したのか、だんだん眠くなってきた。
「気が抜けたみたい。私はしばらく眠っている・・・か・・・ら・・・・・・」
そう言って私は一時的な眠りについた。
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(ソロンSIDE)
「す〜、す〜、す〜」
「眠りましたか・・・・・・」
「ソロン、その子は?」
シエルは心配して観客席からここまで来たようだ。
「ご安心ください、シエル様。彼女は安堵により力が抜け、眠っているだけです。もうしばらくすれば目が覚めるでしょう」
自分はそう言って慌てているシエルを宥めることにした。
「そう、ですか」
ホッと胸を撫で下ろすシエル。
「こらこら、ソロン君。まだ試験中なのだけれども?それはルール違反では?君達の入学を取りやめになることもあるよ。」
対してローズはご不満のようだ。それに自分は少しイラッとした。
「ほほ〜う、では貴方は先程の攻撃を彼女に当てて、無事で済ませる自信がお有りだったと?私の目にはあなたが楽しすぎるあまり、つい手加減を忘れて
「ウグッ、そ、そ、それは〜」
「目を逸らさないでください、ローズ・エルサレム法皇猊下様」
お返しとばかりに毒を吐いた。昔からローズのことをフルネームで、かつ『法皇猊下』を付けることは自分が相当お怒りであることの証明として使っていたため、理解できたようだ。証拠にローズの顔には焦りがある。まだ、あからさまな態度を自分が取っていないからでもあるのだろう。でなければ、焦り程度では済まないから。
「さぁ、次へ行こう!次へ!」
「話を強引に逸らしましたね。」
自分はハァ〜っと溜め息をつき、眠り続けているアリアをそのまま観客席へ連れて行く。もちろん、自分の
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しばらくの間、この場は騒然となった。何しろローズが初めて真面目に攻撃を、それも最上級魔法を使ったのだ。そして、その魔法がアリアに当たる寸前で平民のソロンが目視不可能な速度で助けたということ。これにも驚きを隠せなかった。皇族であるシエルの身体強化は強力であるため、体と思考が強化状態に追いつかず、慣らしが必要となることが多い。これは一流の魔導士にも言えることだ。なのにソロンは瞬時に行動できた。強化値は様々な要因で変動しやすいため、経験だけでは無理だ。あるとすれば『強化値を瞬時に把握して適応した』という
「「・・・・・・今年の受験生は粒揃いだな~。これは来年が楽しみだ・・・・・・」」
ソロンとローズは全く同じことを呟いていた。しかし、騒がしいせいでそれを聞き取れたのは言った本人達とシエル以外に誰もいなかった。
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