第4話 王の我儘、そして噂に不安を感じてしまう男
女は多少なりとも愚かな方が可愛げがあるというものだ、だから自分は王命という名目でたジョゼフィーナ・フランヴァルを嫁がせた。
そして、今は彼女からの返事を待っているところだ。
侯爵という身分でありながら決して裕福とはいえない貴族の元に嫁がせた、しばらくすれば自分を頼ってくるに違いない。
王は彼女を妾、愛人にするつもりだったが、それを即答で断ってきた。
贅沢な生活、欲しいもの、望みは何でもかなえると言ったが、駄目だった。
亡くなった夫を愛している、金には不自由しないし、王の妾という地位など、どんな特、利益があるのか煩わしいだけだと言われて立腹し、強引に愛人になるように口説き落とそうとした。
すると、ある貴族が進言してきたのだ、それはよいことではないと。
「彼女は断ったのでしょう、無理強いはいけませんな、王の威厳に傷がつきます」
そんな噂など、もみ消してしまえばいい、だが王の言葉に貴族は首を振るとにっこりと笑った。
何故だと聞いても答えようとはしない、その態度に王は疑問を抱いたが、そのときは深く追求はしなかった。
その日、別荘を訪ねてきた友人を男は喜んで迎えた、結婚式は簡素な書類を交わすだけのものだったので親戚や親しい友人を招くこともなかったのだ。
奥方はと聞かれてロアンは説明しようか、どうしようかと一瞬迷った、だが、隠したところでばれてしまう、愛人と暮らしていると答えようとした。
「白い結婚というのは本当みたいだな、どうするんだ、これから」
「これからって、どういうことだ」
意味がすぐにはわからなかった。
「愛人とずっと暮らしていくのか、侯爵家を継がずに、どうするつもりだ」
「いずれは彼女に子供を生んでもらうつもりだ」
わずかな沈黙の後、本気かと聞かれてロアンは頷いた、すると。
「妾腹の平民の子供だぞ」
「わかっている、でも、愛してるんだ、彼女を」
ほんの少しの沈黙の後、貴族をやめるのかと聞かれて何故とロアンは聞いた。
「おまえの両親のこと、聞いてないのか」
「何をだ」
何を言おうとしているのか分からない、ただ、表情からしていい話ではないのかと思ってしまった。
「言えないのか、それとも、お前抜きで話を進めるのかもしれないな」
友人はたまに突拍子もない冗談を口にして周りを驚かせることがあった、正直に言ってくれ、ロアンの言葉に友人はぽつりと呟いた、子供だと。
自分の両親が男の子を。
「いずれ、その子に跡目を継がせるんじゃないかと」
ロアンは思わず椅子から立ち上がった。
両親が自分を捨て、跡目をその子供に継がせるというのか、冗談にしてもたちが悪い、それに子供は一体、誰の。
このとき、自分の妻、ジョゼフィーナの顔が浮かんだ、だが、彼女に子供などいなかったはずだ。
「ねぇ、あなた、話があるんです、大事な」
自分の妻が何を言おうとしているのか、夫である彼にはわかっていた、そして自分もと切り出した。
二週間ほど前、息子の嫁が一人の少年を連れてきた、もしかして彼女の子供なのと思った、だが、結婚が決まったとき、子供がいるという話は出てこなかった、どういうことなのかと聞こうとした。
すると、亡くなった夫の親友の子供らしい、公にしないのは理由があるようだ。
そして、妻は自分たちの子供として、あの子を引取りたいと思っているのだ。
「お二人とも、ここにいたんですね」
応接間でお茶を飲んでいた夫婦は部屋に入ってきた少年の姿を見るとどうしたんだいと尋ねた。
ドアをノックし、礼儀正しく入ってきたのだが、明かに興奮しているのが分かったからだ。
金髪、青い目の少年は頬にわずかに赤くなっている。
「実は友人がお茶会を開くので、僕とお二人に来て欲しいと招待状が来たのです」
貴族同士の付き合いは大事だとわかっているので、簡単には断れないことは承知していた。
「招待状というのはど、どちらの方かな」
「エベネスト・フォール男爵です」
少年の言葉に二人は言葉を、いや、息を飲み込んだ。
「僕、男爵に手紙でお知らせしたんです、これが招待状です」
手紙を手渡された男は確認すると小声で本物だと呟いた。
「ま、まあ、そんな、あなた」
「ドレスは大丈夫か、おまえ」
二人は慌てたように顔を見合わせた。
貴族といっても男爵という身分は決して高くはない、だが、エベネストという人物を知っているなら、それは仮の身分だと知っているからだ。
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