第20話 シンディ? シンジィ?


 「ヘイ、リチャード!! 

 ……冗談だろ? 何で俺がこんなガキの後ろで叩かなきゃなんねーんだ?」


 開店前の薄暗い店内で、声を荒げる大柄の男にリチャード師匠はタバコの煙をフーッと吹きつけた。


 「チャーリー、お前いつから人を見た目で判断する様なチンケな奴になったんだ? いーから黙って準備しろよ!」

 

 師匠にチャーリーと呼ばれたその男は、タバコの煙を手で払いながら俺を指差して、


 「ゲホッ、ゲホッ! ……でもこの娘小学生だろ? いきなりこんな場所でライブなんて大丈夫なのかよ?」


 オイッ、オッサン! 俺はもう中学二年だぞ! 更に言うと男だっ! そしてこの頃には大分英語も喋れる様になっていた。


 中学二年になった俺は、まだ身長が百五十五センチしかなく、髪は肩にかかる位長くて見た目は女の子の様だった。まぁ、あと半年後には十センチも背が伸びて成長痛になるんだけどね。


 「……まぁ、リチャードのお気に入りなんだから試しにやってみようぜ、なっ!」


 そう言ってベースをケースから取り出したのはビルと言う名の男だ。


 「しょうがねーな、オイッ、ボーズもさっさと準備しろっ!」


 そう言って渋々チャーリーはドラムスローンに腰掛けた。


 「オッサン、俺の名前は『シンジ』だ! よく覚えとけっ!」


 俺が吐き捨てる様に言ってハードケースからギターを取り出すと二人に笑われた。


 「ワハハハハッ お前っ、『シンディー』ってやっぱり女じゃねーか?」


 「『シンディー』じゃねーよ、『シンジ』だオッサン!」


 腹を抱えて笑うチャーリーは、


 「わかったわかった! お前は今日から『シンジィ』な! ワハハハハ♪」


 『シンジィ』ってなんだよ! まっ『ベンジー』みたいだしカッコイイよな! 名字も『浅井』だし♪


 チューニングを合わせ軽く音を出してみる。


 ドゥーティラリラティラリーン♪

 ジャッ、ジャッ、ジャーン♪


 俺の鳴らした音を聞いてビルとチャーリーの顔色が変わった。



 「それじゃ、オッサン達っ、いくぜーっ!」



 シャカシャカシャカシャカッ、ジャーン♪


 A7のコードをかき鳴らした後、ニヤリと二人を見回して、


 ズッ、ジャージャジャ、ズッジャズジャ♪

 ドゥーディドゥディティロリン♪


 Aからのスリーコードを弾き始めた所で、ドラム、ベースが後を追う様に続く。


 ずっしりと重いエイトビートにシンプルなフィルを入れるチャーリー、基本に忠実に様子を見ているビル。


 十六小節を終えて俺のソロが始まる。


 トゥイーン、ティロリロリロリーン♪

 ドゥーティロリロティロリロティロリロー♪


 (な、……何だコイツ! こんなガキなのにスゲェテクニックだ!)

 (まるでレイヴォーンを見てるようだ!)


 ビルとチャーリーが目を丸くしながら追いかける。


 そこから先は三人共ギアを上げた真剣勝負!ピリピリした空気を漂わせてのバトルが始まった。

 

 ドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥーン〜♪

 ズドンッ、ズッチャン、ズズチャン〜♪


 安定した重いビートを指から弾き出すビル、決して手数は多くないが、腹にズドンと来るチャーリーのドラム。流石伊達に年を取ってるだけあるよなー♪



 楽しくなってきたぜぇーーっっ!!



 俺は弦に指を滑らせブルーノートスケールを思うがままに鳴らし続ける。


 ふと二人の顔を見ると二人共笑っていた。


 コレだよ! こーゆーのがやりたかったんだよ、俺は!


 その後三人は、アイコンタクトを取りながら思い思いのプレイを披露していった。


 魂を削る様な三人の音のぶつかり合いは約十分程続いた。




 ※



 「シンジィ、……お前凄いじゃねーか! ボーズとか言って悪かったな!」


 汗びっしょりになった男はそう言って俺に握手を求めて来た。


 「こんなにヒリついた演奏、久しぶりだったよ! シンジィ!」


 ベースを肩から下ろした男も近づいて来た。


 「俺もすっげぇ楽しかった! オッサンとか言ってごめんよ、これから宜しくな! チャーリー、ビル!」


 そう言って俺達は固い握手を交わし笑い合った。


 「……あとな、シンジィ、俺達こう見えて二十三だからな! オッサンはひでぇよ!」



 アハハハハ ハハハハ♪

 ワハハハハ ハハハハ♪



 こうして俺と師匠、ビルとチャーリーの四人で店のステージに立つ事になったんだ。




 ※




 

 ステージではみんなが知ってるバンドのカバーやオールディーズ、ブルースを演奏する。


 俺は師匠から貰った楽譜を覚え、一週間かけてみんなと音を合わせた。どうやら演奏する曲は大体決まっているみたいで、たまに即興でリクエストに答えるらしい。



 そしていよいよ明日は俺の初ステージの日!


 



 …………アレ? ボーカルは?



 つづくー!

 本編はここまでっ♪



 🌸読んで頂きありがとうございました🍒

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 🎸ここから先は補足&雑談コーナー🎸



 ドラムがチャーリー、ベースはビル、師匠はリチャード(笑)

 そーです、R.ストーンズのメンバーです!

 そしてシンジィの由来は『ベンジー』こと浅井健一(BJC)です♪


 ストーンズは最初聞いた時、ミックジャガーの声が好きじゃなくて、同じ時期に聞いていたフェイセズ(R.スチュアートがボーカルの時の)ばっかり聞いてたのよね。


Stay With Me : Faces

https://youtu.be/JtqF0qBqzZo?si=xniUzuXU50-Z5Hvc


それでもライブパフォーマンスとか見るとやっぱりミックあってのストーンズ、やっぱりカッコイイわー! なんて言っていいのか分からないけど『生きてる』って感じ(笑)


 ストーンズはキースじゃない方のギターは歴代3人います。私が好きなストーンズはミックテイラーが在籍してた頃なのよね。今のギターのロン・ウッド(ロニー)は↑で書いたフェイセズの頃のイメージが未だに強いのよね。元気だったし♪


 

 現在80歳でもまだパワフルなミック率いるストーンズ、末長く転がり続けて欲しいものですね♡

 ミックテイラー在籍時のGimme Shelter

 弾きまくってます♪


https://youtu.be/K7vLY-kZsAI?si=cUnikk11WlIgfomv

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