第27話

堆肥を近くの村に収めたヒイロは帰り際、これから森に行くという少女と出会った。


この近辺はクロードが魔物をダンジョンに引き入れた為、安全度は増しているがそれでもまだまだ危険がある。


そんなわけで、少女と二人森の中を歩いている。


今日の少女の仕事は枯れ枝を集めて薪を確保することだという。


科学技術の発展していないこの世界では代わりに魔道具が発達している。


しかし、魔道具は総じて高価で農村では薪が現役だ。


少女の手は年齢に似合わらずボロボロだ。


生活を支えるために色々と家の手伝いをしているのだろう。


「少しいいかな?」


「何でしょうか?」


少女の手を取り、回復魔法をかける。


少女の手はみるみる綺麗になっていく。


「わぁ。お姫様の手みたい」


回復魔法をかけてもそれは一時的なものでまたすぐにボロボロになってしまうだろう。


しかし、ヒイロには考えがあった。


「後はこの軟膏を仕事が終わったら塗ってね」


そう言って作っておいた軟膏を手渡す。


「わわ。ありがとうございます」


一流の腕を持つヒイロの作った軟膏だ。


その効果は抜群であり、王侯貴族が金目に糸目をつけず欲しがる程の一品であった。


そうと知らず少女は喜んでいる。


「それにしても、今日は動物や魔物に出会わないですね」


「不思議なこともあるもんだね」


その理由はヒイロにある。


ダンジョンの魔物を増やすためこの辺りでは随分と暴れまわった。


魔物は勿論、動物もそんなヒイロの気配を覚えており気配を感じると同時に逃げていた。


気配を消すことも可能だが今日のヒイロの目的は少女の護衛だ。


そんなわけで、気配を垂れ流していた。




「今日はお兄ちゃんのおかげでお仕事が早く終わったわ」


少女とヒイロの背には大量の枯れ枝がある。


普段は魔物や動物から逃げるためにどうしても集めるのに時間がかかるが一度も逃げる必要がなかったので想定よりも早く集め終わったのだ。


少女の村へと戻ると何やら騒がしい。


村の入り口では門番の男性に村長がいる。


そして、馬車を囲む装備が統一された兵士達。


兵士達の装備には見覚えがあった。


ヒイロのダンジョンを封鎖している領主の抱える私兵だ。


村に入るにはどうやっても入り口を通る必要がある。


ヒイロと少女は巻き込まれるかもしれないと思いつつも入り口に近づいていく。


すると兵士達はこちらの気づいたのか手に持った槍を向けてきた。


いきなり槍を向けてくるとか何を考えているのやら。

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