第12話

ヒイロは暇を持て余していた。


というのも兵士達はダンジョンの入り口を封鎖して入ってくる気配がない。


そして、冒険者がやって来る気配もない。


ヒイロとしては森林地帯の魔物を何とかして増やしたい。


というわけでDPを使わず魔物を増やすためにダンジョンの外に出て探索していた。


野良の魔物を捕獲して繁殖させることが出来ればDPを使わずに魔物を増やすことが出来る。


しかし、言う程難易度は優しくない。


野良の魔物は警戒心が強く意思疎通出来ない魔物は襲いかかってくるか逃げ出すかといったような二択になることが多い。


そして苦労して捕獲してもダンジョンにいる他の魔物と揉めるといったことも起こりえる。


多くの魔王は徒労に終わることが多い魔物の捕獲をすることは滅多にない。


それでもヒイロがあえて今回、捕獲に動いたのは今後のことを見据えてのことだ。


ダンジョンに本格的に人が来はじめればこうして外を出歩くのは難しくなる。


魔王の仕事としてダンジョン全体を見て魔物の量を調整したりきめ細かいバランス調整が必要となってくる。


父である大魔王クラスになるとそういった細々として仕事は配下となった同族に任せたりもするのだが・・・。


まぁ、そんなわけで魔物の痕跡を辿り今現在、狼の魔物であるスモールウルフに囲まれていた。


1人でのこのこ彼等の縄張りに侵入したヒイロのことを獲物と勘違いしているらしい。


ヒイロは隠していた覇気を開放する。


するとスモールウルフ達は力量差に気づいたのか尻尾が垂れ及び腰になる。


調節しているとはいえ逃げ出さない所を見ると中々に見込みがありそうだ。


そんな中、スモールウルフ達の奥からのそのそと図体のでかい個体が近づいてくる。


左目に三日月のような傷を持つこのスモールウルフがこの群れのボスのようだ。


本当は逃げ出したいのだろう。


よく見れば足がプルプル震えている。


仮に逃げ出せば仲間達の信頼を失い全てとは言わないが群れを離れる者もあらわれるだろう。


そうなれば群れの存続にも関わってくる。


それを阻止する為に立ち向かってきた群れのボスにヒイロは好意的な感情を持った。


出来ることならこのボスと群れをダンジョンに引き込みたい。


どうしたらいいかと考え餌付けしてみることにした。


アイテムボックスの中からミノタウロスの肉を取り出し放り投げてみる。


ボスのスモールウルフは警戒しながらも肉の匂いをクンクン嗅いでいる。


ボスのスモールウルフはペロペロと舐めたかと思うと肉にかぶりついた。


こういった集団で生活する魔物はまずボスが一番良い所を食べ残りを群れ全体でわける。


とはいえ、この数では今出した肉だけでは足りないだろう。


ヒイロは追加でミノタウロスの肉を出し周囲にばら撒いてみる。


周囲のスモールウルフ達は涎を垂らしながらも微動だにしない。


ボスのスモールウルフがウォンと鳴くと動き出しもしゃもしゃと肉を食べ始めた。

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