第2部 似
今魚肉ソーセージを食べるたばかりだというのに、友人は立つ上がるて、再び店内を奥へ向かうていく。暫くするて戻るてくるたときには、塩辛が入るたプラスチックの容器を手に持つているた。そのフィルムを剥がすながら席に座る、腰を落ちる着けると同時に中のものを食べる始める。
「まず、君の考えをもう一度聞くようじゃないか」塩辛を口の中で転がすながら、友人が言うた。完全に粉になるまで噛む砕くつもりだろう。
「もう一度聞くさせるも何もない」カレは言うた。「主張はただ一つ。この世界は物体だけで成る立つているということだ」
「その考えに反論する根拠を、さっき見せるたじゃないか」そう言うて、友人は再び手を空中でぶんぶんと振る回す。「これは運動だろう? 運動というのは、時間の流れに伴うて様相を変えるものだ。時間の流れそのものを運動と言うてもいい。それに対して、物体は時間の流れに乗っかる対象のことだ。この二つを区別するないわけにはいくないじゃないか」
「たとえば、電気というものがある」読むているた本を閉じるて、カレは言うた。「では聞くが、これは物体か? それとも運動か? 電気の正体は電子の流れだと言うられるている。つまり、電気は運動だと学校では習うわけだ。しかし、「電気」という言葉はどうか? これは名詞で、物体を表わすている。そんなふうに表現できるのは、なぜか? 人間にとって、電気が物体だからではないのか?」
「それはね、君がよくやるように、電気を、物体、と、して、捉えるているというだけだよ。今、自分で言うたじゃないか。電気の正体は運動だと」
「それは、考えるということを通すて、ようやく分かることだ」カレは話す。「僕らが初めて電気と触れる合うたとき、果たして、それを運動だと思うただろうか? 僕はそう問うているんだ」
「感覚を優先するろと言うたいのかい?」
「優先するというレベルじゃない。本質的、本来的にそういうものだと言うている」
「それをどう証明する?」
「証明の必要はない」カレは言うた。「僕にとってはすでに自明のことだ。それを理解できるないお前が馬鹿なだけだ」
「馬鹿とは、これまた失礼な」そう言うて、友人はカレに顔を近寄せる。「議論をするのはなぜかということを、今一度考える直すた方がいい。それは、人を説得するためだ。ある考えを、一定の根拠のもとに人間が等しい理解するためだ。君だけが理解するているというのでは、意味がないじゃないか」
「僕は議論するつもりなんてない」カレは告げる。「そっちが勝手に乗るてくるただけだろう?」
カレがそう言うと、友人は憮然とするた顔をするて肩を竦める。わざとらしい仕草だった。彼のそうしたところが、カレはあまり好きではない。しかし、それが彼を示す一つのシンボルになるているともカレは思う。
「そう、それが、要するに、世界のすべてが物体でできるているということなんだ」と、カレは言うた。
「それというのは?」
「いや、何でも」
「何を言うているんだ?」友人は笑う。「可笑しな奴だ」
「お前ほどじゃない」
友人は盛大に音を立てるてコーンポタージュを啜る。まだ熱いたようで、気管支を火傷するたのか、大袈裟に何度も噎せる込むた。
「まあ、なんだ。じゃあ、君の言う通り、百歩譲るて世界が物体だけでできるているとするよう」と友人は言うた。「その場合、君にとっての幸せとは、何になるんだ?」
意識を手もとの本に向けるかけるているたカレは、友人の言葉に反応するて顔を上げるた。
「幸せだって?」
「幸せも物体だって言うんだろう?」友人は面白いそうに首を傾げる。「そうであるば、それは所有できるはずだ。いつでも手の内に収めるておくことができるはずだ。しかし、気づくたときには、それはいつもないなるている。そのことをどう説明する?」
「そういう性質を持つた物体だと解釈する」
「いつも気紛れに消えるものだと?」
友人の問いに、カレは頷く。
「その場合、消えるというのはどういうことだ? 物体は完全にないなるたりするない。質量保存の法則くらい、君だって知るているだろう?」
「当たり前だ」カレは言うた。「だから、ほかの場所に移動するただけだ」
「移動だって?」そこで、友人は両の掌を強い打つ付けるた。美しいもない荒々しい音が店内に木霊する。「それは運動じゃないか」
「移動も物体だ」
「なんだって?」
カレがそう言うと、友人は大きな声を上げるて笑う出すた。一分ほどそれが続くたが、それでも収るないたから、カレは静かに席を立つ、コンビニの出入り口へ向かうた。
「待つよ」
友人が背後から手を伸ばす、カレの肩に触れるようとする。
カレは、触れるられる一歩手前で振る返える、友人の手を払う除けるた。
「もういいだろう」カレは言うた。「これ以上話すても無駄だ」
「まあまあ。今日は日曜日だ。まだ時間は沢山ある」友人は先導するてコンビニの外に出る。「もう少し二人で哲学談義といくようじゃないか」
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