犬と猫が恋をして、来世も一緒にいることを望んでいます

海坂依里

『私』視点の物語

第1話「ずっと心臓が痛かった【ソラ視点】」

 私の前世は、猫でした。


「ソラー、ウミー、ご飯よー」


 仲のいい新婚さんの元でお世話になり、とても幸せな毎日を送ることができました。


「今日も仲がいいな」

「ねえ」


 でも、1つだけ嫌なことがありました。


「にゃ! にゃ!」


 それは、猫の私以外にもペットがいたこと。


「わんっ! わんっ!」


 私よりも随分と体が大きくて、茶色い毛並みがとても綺麗な犬。

 彼と暮らしていたことだけは、どうしても忘れることができない傷となった。


「にゃっ……! にゃっ……!」

「わん! わんっ!」


 彼は、猫の私を殴るから。

 大きい体で私と張り合う必要なんてどこにもないのに、彼はいつも小さな私に喧嘩を仕掛けてくる。


「本当に可愛いなぁ」

「動画に残しておこっか」


 人間さんにとっては、猫と犬が戯れているようにしか見えなかったかもしれない。

 でも、私にとっては、いじめだった。

 犬が、猫の私をいじめてくる。


「にゃっ……」

「ソラ? もう食べないの?」


 いじめられるのが嫌になった私は、彼から逃げ出す準備を整える。


「わんっ!」


 でも、彼は私のことを追いかけてくる。

 触らないで。

 触れないで。

 私はウミくんと一緒に暮らすのが、怖くて怖くて仕方がない。




「今までありがとうね、ウミ」


 ある日、私をいじめていたウミくんが天国へと旅立った。

 私たちの生まれた時期は一緒でも、どちらかというと犬の方が先に逝ってしまうとご主人様たちが言っていた。


「にゃ……」


 もう、私をいじめる存在はいなくなった。

 これで美味しいご飯が食べられるはずなのに、私の元気は出てこない。


「ソラ? 食べないと元気出ないよ?」

「病院連れていこうか……」


 私を励まそうとしたご主人様たちは、私の元に新しい犬を連れて来てくれた。


「ソラー、頑張って食べよう?」


 これで、亡くなったウミくんの代わりが埋まる。


「にゃっ……」


 ご主人様たちは、もう泣かなくて済む。

 ご主人様たちを託すことができると安堵した私は、その日ご主人様たちの元から旅立った。






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