ハズレスキル「食事」の成り上がり~食えば食うほど強くなる~
@nekonikukyu
第1話
15歳を迎える年の初め、成人の儀が執り行われる。成人の儀は毎年500人くらいがこの国の大聖堂に集まり、大規模なパーティーが催される。
「ご機嫌よう。カイル様!私子爵家の娘マリア・ディア・ファティナですわ。一緒にあちらでお食事を食べましょう!」
「まな板娘!カイル様は私と食事を楽しむの!貴女は引っ込んでなさい!」
「はぁ!?誰よ!貴女こそ引っ込んでなさいよこの低身長娘!」
「あなた達どきなさい。カイル様は私の者よ!」
「「誰よ、あなた!」」
僕は今年15歳になるカイル・ディル・アルソリアのだ。もちろんこの成人の儀に参加していた。僕はいつも鈍くて、決してかっこいい方では無い。なら、どうして僕の周りに集まるのか。
それは、僕が貴族だからである。しかも、公爵家。僕の父ゲイル・ディル・アルソリアは現アルメシア王国、国王アルゲイラ・フォン・アルメシアの弟で、国王は僕の叔父にあたる。高位貴族や、王族と関係を持ちたい男爵家や、子爵家の人間はこのような成人の儀などの機会を使い関係を持とうとしているのだ。
僕がこの子達をどうしようかと悩んでいると女神像の前で静かにみんなを見ていた大司教が叫んだ。
「皆の者静粛に!楽しそうでなによりである。だが、これより皆が待っておったであろう覚醒の儀を執り行う!」
良かった。大司教のおかげでみんなの関心が女神像の方へ向いたみたいだ。
「皆も知っての通りだと思うが覚醒の儀とは女神アリア様より、スキルを付与してもらう儀式だ。呼ばれたものから女神像の前へ出て、目を閉じ祈りを捧げるのである。まずはペイン」
「はい!」
この儀式では最初に平民から行い最後に貴族。位の高い僕は一番最後に行われる。
名前を呼ばれた少年ペインが女神像の前へ足を運び両手を胸の前で合わし、目を閉じて祈りを捧げた。するとペインの体がうっすらと光を放ったかと思うとすぐに落ち着いた。
「無事にスキルを授かった。お主のスキルは「初級剣術」だ。その力を振るって頑張ってくれたまえ」
「ありがとうございます!」
「次に〜〜」
スキルには主に戦闘スキル、生産スキル、特殊スキルの三つが確認されている。その中でも特殊スキルは当たりとハズレの差が激しく、戦闘スキルは当たりだと言われておりペインは嬉しそうで元の場所に戻って行った。戦闘スキル、生産スキルには初級、中級、上級、最上級、仙人級、神級という風にランク分けがされている。基本的には初級のスキルからスタートし、力を磨いていくとドンドンランクが上がっていくと言われている。
ちなみにこの大司教は特殊スキルの一つ鑑定のスキルを持っている。覚醒の儀式は鑑定のスキルを持った者しか執り行うことができない。もちろん鑑定は特殊スキルの中でも当たりのスキルである。
続々とスキルが与えられ、最後に僕の番がやってきた。
「最後にカイル・ディア・アルソリア!前へ!」
「はい」
少しの緊張とスキルへの期待を胸に女神像の前へと足を運んだ。そして、みんなと同じく両手を胸の前で合わせ、祈りを捧げた。すると今までに無い体の輝きが会場を包んだ。
次第に輝きが落ち着き周りの期待の目に気付いた。僕も少しワクワクしながら、大司教の次の言葉を待った。
「………カイル・ディア・アルソリア。お主のスキルは…
「食事」である。」
「え?」
え?食事?
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