それにつけても腰は大事

石田空

初のぎっくり体験

 それは本当に突然やってきた。

 その日は休み。今日も夕飯つくっちゃうぜと、鍋のお湯を沸かし、味噌汁の段取りを勧め、あとは出汁パックを煮出して、味噌を溶いてーと段取りを気にしているときだった。


 グキッ


 突然、立っていることができなくなった。

 自分、実は腰がとても悪い。腰痛はいつものことだった。


十代「腰が痛いです」

医師「あなた骨S字に曲がってますね」


二十代「腰が痛いです」

医師「あなた骨S字に曲がってますね」


 なんか生まれつきの問題なので、だましだまし付き合っていくしかないんだろうなあと、腰痛については諦めていた。

 しかし、こんな唐突に「グキッ」って音がして、立てなくなるのは初めてだった。

 とりあえず、腰痛い腰痛いと半泣きになりながら夕食をつくり終え、風呂を洗ったあと、限界に達した私はそのまま倒れた。倒れると多少なりとも腰がマシになったような気がしたが、ただ本当に気がしただけだった。痛い。

 なにが困ったかというと、当時既にゴールデンウィーク直前。

 日がさんさん降り注ぐ、さわやか通り越して「あっついんじゃ」という頃であった。

 当然汗をかいているので、風呂でさっぱりしたかったが。

 ……腰をやるということは、風呂に入れないということである。

 ちなみに腰痛はイコール炎症であり、冷やすのが基本。ぎっくり腰やったその日は風呂で温めるのは駄目である。

 その日は泣きながらシャワーだけでも浴びようとしたものの、まず痛くて屈めないため、服を立ったまま脱げないことに気付き、衝撃的な顔になる。

 屈めないということは、シャワーのノズルは大概は屈まないと捻れない場所にある。シャワーすら無理。はい、おしまい。

 とりあえず、電子レンジで濡れタオルをチンし、それで体を拭くことにしたが、問題はこれからである。

 服が脱げないということは、服が着られないということである。

 もう、床を転げ回って着替えるしかなかった。

 とても悲しい。でも痛いから足を上げられない。転がり回って着替えたのだった。


 明日整形外科に行こう。

 そう思ってシクシク泣いたのは言うまでもない。

 しかし長年腰痛に悩んでいた私は、これからさらに腰痛との戦いが激化するなんて、そのときは思いもしなかったのである。

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