第四話 スキルと世界


「スキルだが、ステータスの中に《スキル一覧》という表示があるだろう。そこを押してみてくれ。」


 そういわれてカイが自身の《スキル一覧》を押すと、ステータスとはまた異なった画面が出てくる。


パッシブスキル

なし

アクティブスキル

《身体強化》《鋭刃》

汎用スキル

なし


「おお、またなんか出てきた」

「それがお前が今使えるスキルだな。そこからさらにスキル名を押すと詳細が見れるからやってみろ」


 言われるがままに試し、スキルの詳細を確認していく。


《身体強化》Lv:1

 自身のSTR、END、AGIを10%強化(3分間)

 クールタイム:5分


《鋭刃》

 斬撃を用いた攻撃の威力を30%強化

 クールタイム:15秒


「これがスキルか…。けど《身体強化》のほうにはレベルの表記があるけど、《鋭刃》のほうにはないんだな」

「おそらく《鋭刃》が直接攻撃に関わるスキルだからだろうな。レベルの表記があるスキルは使えば使うほどにレベルが上がり、その効果も協力になっていく」


「アクティブスキルはそんな感じだな。パッシブスキルはお前はまだ持っていないから想像が付きずらいかもしれないが、アクティブスキルとは違い所持しているだけでその効果を発揮し続ける。〈聖騎士〉の持つ《聖騎士の加護》なんかはこれにあたるな。」


「最後の汎用スキルだが……、これは主にSPを消費して得るスキルだ。自分のステータスにSPが出ているだろう?」


 見れば確かにSPというものがある。ただ今は0のようだが。


「SPはレベルの上昇とともに獲得できる。そいつをうまく活用して自分の戦闘スタイルに合わせた構成にできれば大きく戦力も上昇する」


 おそらくさっき使われた《鑑定》もこれに当たるものだったのだろう。


「ステータスはこれで大体説明し終えたな。あと何か言うことはあったか…」


「あ、それならこの世界について教えてくれないか? もちろんできればで構わないけど」


 もともとこの世界の情報は収集しようと思っていたし、ここで何か聞ければという期待をこめて訪ねてみる。するとビルダーは快く教えてくれた。


「もちろんいいさ! そうだな…ではこの世界の住民のことから話そうか。この世界に生きる者は『レイヤ』と呼ばれ一人一人が明確に生きている。よほど高性能のAIを積んでいるのか、運営が直接操作しているんじゃないかなんて言われているが、少なくとも従来の定型通りの動きをするNPCではない」


 本当に生きているとしか思えない『レイヤ』たち。そのすさまじさはカイ自身、先ほど体感したばかりだったので理解できる。


「そうだな、あの表情を見てしまえば単なるNPCじゃないことはわかる」

「うむ。そして『レイヤ』は俺たち『プレイヤー』のことは別の世界から訪れた異邦人だと認識している。俺たちが死亡した後にリスポーンすることも、別世界の特殊な技術を用いて蘇生しているのだと思われているようだ」


 その言葉には疑問を覚えた。別世界から来た者達をあっさりと受け入れることなどあり得るのだろうか。そういうシステムだといわれてしまえばそれまでだが、この世界は普通ではない。


 そのことを聞くとどうやら、この世界ではごくまれに別世界からアイテムやモンスターが漂流してくることがあるらしい。ゆえに別の世界から来た『プレイヤー』もそういったものだと思われているのだろう。


「あとはそうだな。この世界に複数いる『ボスモンスター』だな」

「『ボスモンスター』? それってダンジョンの一番奥にいるモンスターとかそういうやつか?」


「いや、それは『エリアボス』のほうだな。残念ながら『ボスモンスター』に関しては詳しいことは分かっていないんだが、唯一いえることはあいつらが圧倒的な強さを持っていることだ。それこそ『エリアボス』なんかよりよっぽどな」


 どんなモンスターよりも強力だといわれる『ボスモンスター』。それは生息地や発生時期、数などもわからずその行動の規則性すら把握できない。人里離れた場所で遭遇したかと思えば、過去には人の住む街を直接攻めてきた個体もいたらしい」


「『ボスモンスター』はその強さに対して、旨みが少なくてな……そこらのモンスターでさえドロップアイテムなんかを落とすのに、あいつらは何も残さないんだ」

「まじか……強いだけで旨みがないやつらなら戦う意味もほとんどないだろう。おまけに生息地も不明瞭となればかわすのも難しいし…まぁ出会わないことを祈るしかないな」


 聞けば聞くほど天災のようにしか思えない『ボスモンスター』。そうそう出会うこともないだろうとカイは気軽に考える。


「この世界に関しても大まかにはこんなところだ。もう聞きたいことはないか?」

「ああ、俺が聞きたいことはあらかた聞けたよ。本当にありがとう」


 講義が一区切りつき、話が終わるとビルダーがガッハッハ!と豪快に笑う。


「気にするな! 困ったときはお互い様だしな! お前がこの世界を楽しめればそれが一番だ!」


 バシバシと背中を叩きながら言われる。それはこの男なりの激励だったのだろう。


「これで講義は以上だ! お前の進む道がどのようなものになるのかはわからんが、自由に世界を見てこい! さあ、いけ!!」


 そうして半ば強制的に連れてこられた場での講義は終了した。ビルダーと講義を受けていた間に復活していたチンピラ(に見える)二人組に見送られながらカイは去っていった。




「しっかし、すげぇ見た目だったけどいい人達だったな。まさに人は見かけによらないってことか。そんじゃ本格的にレベル上げと行くか! と言いたいがまだ何も持ってないからな。まずは武器屋に行こう」


 こうしてカイの「Record of Divergence」は、本格的に始まったのだった

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