一 一個美麗的女人拜訪一個沒有錢的男人 (お金のない男のもとに美しい女性が訪れる)
物語は始まる――――。
立ち寄った店で偶然この冊子を見つけたのはいいものの、どこに電話をしても「もう定員です」の一言。
最初の2、3回はまだ我慢できた。しかし、20、25回と続くに連れ、電話をかけるのも面倒になってきている。
だが、彪尚は今、仕事がない。一昨日で彪尚が施設を出た時にもらったお金は全て
分かってはいたのだ。仕事につくのには時間がかかるということぐらい。
しかも、今はより仕事がない。こんな17歳の
金は施設から1年余裕で生活できるくらいの額はもらった。それをちびちび使って物価高のこの中京の
しかし、もう金銭的な限界が来た。
仕事をしなければならない。
しかし、仕事がない。
やばいと思って一月前から求人冊子を――冊子を探してはいたのだ。
やっと見つけたこの一部。
流石にやめたくなる。
しかし、もう金がない。
(もう一回だけ―――。)
そう思って電話をかけようとしたとき、偶然にもチャイムがなった。誰かが玄関の前に来たようだった。
あまり人付き合いもなく、無銭である彪尚のところに何しに来たのかは分からない。どうせ何かのチラシを配りに来たのだろう。
無視する、という手もあったが、もしかしたら何か求人に関する情報を持っているかもしれない。そう思うと開ける以外に手はなくなってしまう。
2回目のチャイムがなったとき、彪尚は玄関のドアを開けた。
「はい、何でしょ―――って…」
ドアを開けた先にいたのは求人を求めているような人でもなくチラシ配りに来たような人でもなく―――美女だった。
眼の前にいるのは美女としか言いようがない美女である。流石の彪尚も予想外の展開に口を閉ざすしかない。
「いきなりすみません。私はこういうものです。」
美女はそう言って彪尚に警察手帳のようなものを見せてきた。
突きつけられては読むしかない。
それに書かれている単語は
「中京警察署本部異能力及び魔力総合取締科
彪尚はわけが分からなかった。
そもそも異能力やら魔力やら漫画の話をしているのかと呆れてしまう。
(現実にそんなものがあるわけがないでしょ。ってか
そう思いつつ美女――黒木の顔を見てみる。
こちらが怪訝そうな顔をしているのは分かっているだろうにひたすら真っ直ぐこちらを見てくる。
気まずくなった彪尚はとりあえず質問してみた。
「警察が僕に何の御用でしょうか?」
「此のようなものを見たことはありますか?」
(質問を質問で返された――。)
そうぼやきつつも出されたものを見る。警察の質問には極力答えないといけない(そういう法律があることを施設で教わった。本当かは知らない)。
黒木が手にしているものは円柱と三角錐がくっついた形をしていた。要するに銃弾みたいなものだ。
しかし、銃弾にしては大きすぎるし、銃弾がこんな陰鬱な雰囲気を発している訳がない。しかも銃弾の周りには怪しげな文字が羅列している。
(でも…確か前ベランダに落ちてたような―――。)
「あまり覚えていませんが…多分、前にベランダに落ちていたのを見たような気がします。」
「じゃ、決まりだ。ご同行願えるか」
黒木が急に命令口調になった。口角も少し上がっている。威圧感が凄い。獲物を見つけた肉食動物みたいだ。こうなると、断るのも至難の業だろう。
(それに…美人だし)
なんとも不埒な理由だが、取り敢えず彪尚は頷いた。
******
「君の名前は?」
黒木が聞いてきた。同行願えるか、と言ったきり黒木はずっと命令口調――というか、高飛車な感じの口調だった。
「彪尚です。」
「虎に正直の直で虎直か?」
「
「へぇー。珍しい名前だ。」
「よく言われます。」
「虎の毛皮の斑がたくさんあるってことか?」
「さぁ…。両親はどちらも戦争で死んでしまったので…。」
「ふぅん。なるほどねぇ。―――ところで君、虎尚君、何で自分がこうして連行されているか知りたくないか?」
「別に…どちらでも」
彪尚にとって今一番大事なのは今日食に有りつけられるかどうかだった。
お金のない彪尚は当然、買いおいていたもの以外の食料は当然ない。ついて行ってお金をくれるか、仕事をくれるか、ご飯をくれるなら連行されていることぐらいどおってことはなかった。
(しっかしまた…連行ねぇ)
確かに今、黒木に連行されている。ここから逃げようにも逃げられない。とは言っても、黒木の車の助手席に座らせられているだけなのだが。
黒木は彪尚の家に一人で来たようだった。てっきり他の部下みたいな人達が下でまっているのかと思っていた彪尚は驚いた。
「じゃ、教えてあげよう。」
彪尚は黒木の声で我に返った。
(これは僕が嫌だと言っても説明してたパターンだな…)
この美女が思ったより自分勝手なことに彪尚は驚いた。
「君は、異能力というのを知っているか?」
「
先程黒木が見せてきたものにも異能と書かれていたが、どういうものかは知らない。
その反応を見てか、黒木は少し楽しそうに説明した。
「異能力というのは、まあ、科学では説明しにくい現象を起こす特殊能力みたいなのことだ。その顔は本当にあるのか疑問に思っている様だな。では、実際に見せてやろう。――と思うのだが危険なので止めておく。一般の人に危害を与えたくないしな。まあそれは置いといて、次に力というのは知っているか?私達の間では力と呼ばれているが、馬鹿な奴らは魔力、と呼んだりしている」
「否――、知りません。そもそも力っていうのと魔力って何が違うんですか?」
黒木がいい質問だ、というかの様に微笑んだ。
「実は、異能は持っている人と持っていない人がいる。異能を持っている人は全人口の0.01%程だと言われている。しかし、それに対して力というのはすべての人が持っているモノだ。人によって個人差はあるがな。これはある程度大きくないと重要性を持たない。普通の人はこの力が小さいから力というものを持っていることを知らない。で、力というものがどのような働きをするかだが……これがまた、人によって異なる。基本的な働きは同じだがな。要するに、応用的に使おうとしたとき、得意不得意があるというわけだ。例えば、ほら今私はハンドルから手を話している。しかし、此の様にカーブを曲がれる。これは私が力を操ってハンドルを動かしているからだ。実際、微妙に動いているだろう?これくらいなら訓練すれば誰だってできるようになる。ところで、力と異能の違いだが――、これを理解するのは君には難しいだろう。なにせ、力と異能の存在を今初めて知ったんだからな。」
黒木が一旦言葉を閉じた。彪尚は黙って次の言葉を待つ。
「さて、何で君を此のようにして連行しているのかだが…。君はこれを見たことがあると言ったね?――これは対異能力者用の銃弾だ。まあ、待て一旦私の話を聞いてくれないか。ああ、それでいい。君はこれをどこで見た?―――ベランダか…おそらくだが、君はある集団に命を狙われている。これは分かるな?しかし、君はこれを直接見たにも関わらず、攻撃を受けた記憶もない。つまり君は、おそらくだが、攻撃を受けて無意識の内に防御しているんだ。そして、その時に無意識に使っているのが…君の『力』だ。そこである問題が起きる。我々は中京警察署本部異能力及び魔力総合取締科として力を無意識の内に使ってしまうほど大きな力を持っている人は監視しなければならないのだ。しかも、君は誰かから攻撃されている。そこで面倒くさいからいっそ君を保護しようと思ったわけだ。」
「でも、さっき一度僕に確認してきたじゃないですか。あの段階では僕が攻撃されているって知らなかったんでしょう?他の人の許可を取らなくて良かったんですか?それに、あなた一人で僕を保護できるんですか?」
「んーあー大丈夫だ。保護というのはただの口実だ。目的はこっち」
(口実?本当の目的は何なんだ?死ななきゃいいけど)
黒木が指を指したのは眼の前にある大きなビルだった。黒木はそこに車をブレーキもかけずに進める。
――つまり、今目の前にあるのはビルの壁である。
彪尚は先程不思議な力を見せられたのと、この美女が自分を殺す理由がない(勝手な偏見である)と思ったため、この黒木の行動に対し、声を上げるたり、驚いたりすることはなかった。
もともと彪尚が度胸がある、というのもあったのだろうが。
車が壁にぶつかった――かと思ったが、車は壁を通り抜け、ビルの中にあるのであろう駐車場に入っていた。
「ここは、どこですか?」
黒木が答える。
「私の組織の本部さ。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます