第18話
「外国被れにしてはいい意見だった。しかし、今までの運営で大きな問題は生じていない。ブランドイメージだって誉れある【
教師は声を荒げ言いたいことを言い終ると、勝ち誇ったようなドヤ顔を決める。
暫く黙っていたと思ったらこんなしょうもないことを言ってドヤ顔しやがって……
若松姉弟の視線が俺に向く……
カンペは作ってあるけどこれを読み上げれば、相手が激高することは判り切っている。
そりゃいいたくないわな。
ま、そうだろうな……
「マイクを……」
申し訳なさそうにマイクを手渡す
「大丈夫あとは俺が何とかする」
などと主人公か、お助けキャラクターにしか許されないようなクサイ台詞を吐くと二人の前に立つ。
出来る限り、慇懃無礼なセリフを出来る限り気怠そうな声で教師相手に吐き捨てる。
「あーー御高説ありがとうございます。不勉強で申し訳ないのですが……逆に質問させていただきたい。俺の提案が失敗したとして、一体俺にどんな責任が生じるんですか?」
「~~っ!
「教師を馬鹿にしてるのかッ!!」
などと声が上がる。
二人とも顔が真っ赤になっている。
そのまま血管切れて倒れないかな?
「ふざけているのは貴方でしょう? ついでに言えば馬鹿にしているのも貴方だ」
「なにィ?」
「俺は一学生でこうすればメリットがありますと提案しているだけです。俺に本来もたらされるハズの一般的なメリットもいらないと言っているに……責任だけは背負えとおかしな話だ」
「保守的なことのが悪とも、革新的なことが善ともいいません。全てはバランス、調和です。今のままではだめだと思っているから皆変わろうとしているのに、蛮族のように声を荒げて議論に冷や水をぶっかけ、自分が付いていけないから停滞することを望む貴方は愚か者だ」
「きょ、教師に愚かとは何事だ!」
「事実を言っても何が悪いんですか? あれ……これって名誉棄損になるんですかね? 無駄に年だけくって尊敬する部分がない貴方の御高説など訊く価値すらない。それでも話を訊いて欲しければ、金を払ってキャバクラかママの居る飲み屋で管撒いてろ!」
「あ、既に飲みニケーション(笑)で後輩は相手にやってますか……」
――と付け足し追撃する。
「――ぐ!」
と教師一名がうめき声を上げるが、もう一人はそれでも食らいついて来る。
「だが、お前達が失敗した時の責任をだれが取る?」
「それは……」
――当然、大人だ。
社会では上司はそのために高い給料を貰っているし、部下の手柄が上司に反映されるようになっている。
しかしこと学校と言う小さな社会では、責任の構造は複雑になる。
学校内と言う小さな社会では先輩や自分、部活やクラスと言った規模で話は収まるが、それが一歩でも外に出れば社会は、小さな集団を学校と言うカテゴリーで見る。
犯罪行為を犯した生徒が一人でもいれば、その学校全体が色眼鏡で見られると言う奴だ。
今回複数の問題を想定しカンペを作った俺だが、明確な答えを出せなかった数少ない問題だ。
さて何と説明しようか……
「少しいいかな?」
副校長はそう言って立ち上がるとこう続けた。
「責任を取るのは、私達大人でしょう」
「副校長……」
「部下の失敗は上司の失敗、一族経営の私立高校ですが伝統を守っているだけでは少子化の時代を生き残る事はできない。
これは予め作っていたカンペによる回答の一つだ。
「教師だけ、学校だけがリスクを負うわけではありません。俺達学生も後ろ指を差されるリスクを背負っているんです! 失敗してもいいのが学校だろ? 天井のある箱の中でジャンプしてればいいのか? 違うだろ! 俺達は俺達の出来ることを増やしてるんだ。大人なら応援しろよ! ケツを拭けよ! あんたもいい年した大人なら責任から逃げるな! いいから黙って未来に、俺達に投資しろ!!」
喋っているうちに頭に血が上ってしまった。
「すいません」
「熱意があるのは大変結構、あれだけ優れた資料を作れる君が、ここまで熱心に意見を言ってくれるのは人間味があって大変結構なことだと思います」
社会人経験があると思われる教師がフォローしてくれる。
生徒会顧問の先生が擁護してくれる。
「これだけ熱意と信念を持って提案してくれているんです。やらせてあげましょう」
………
……
…
こうして俺達のプレゼンはつつがなくはないものの無事終了した。
撤収する教師や生徒を見ながら自分のノートパソコンの電源を切る。
「
「副校長先生何の御用でしょうか?」
「先ずは謝罪をさせて貰おうと思ってね……ウチの教師が迷惑をかけた」
「いえ、個人の人格的な問題は学校法人のせいではないでしょう」
「それはよかった。順調にいけばパイは焼き上がるだろうその配分なんだが……『提案したのは君でそれを生徒会長が推薦し、私が反対する教師を説得し実現した』でどうだろうか?」
「……頂きすぎでは?」
「君はもう少し欲をかいた方がいい。
貰えるものは貰っておきなさい」
「そういうことなら……議事録を作成する予定でノートパソコンで録音をしていたんですが……」
「――!? 素直だね君は……」
「素直さだけが取り柄なので……」
「判った引き取ろう……」
「ありがとうございます」
「オマケにボイスレコーダーもありますが……」
「……想像以上に用心深いね……」
「お褒めの言葉ありがとうございます」
目の前でデータを削除し、ボイスレコーダーのマイクロSDをへし折る。
復元出来ないように物理的にデータを削除するためだ。
「マイクロSD代だ」
そう言って財布を取り出し、無造作に札を摑むと乱暴に
札の特徴から見て一万円以上は固いだろう。
予想外の臨時収入に思わず顔が緩みそうになる。
「今日のことは秘密だよ……」
「えぇ」
雑踏の中へ副校長は消えていく……
夕日が差し込む部屋の中で俺はポツンと独り佇む。
ある種の達成感からか思考が纏まらず立ち尽くす。
まるで創作物のようなやり取りも、口封じのお金も全て妄想・白昼夢のような感じがする。
暫くして俺は誰も居ない視聴覚室でこう呟いた。
「原作で知っていたけど食えない人だ……」
俺は上着の内ポケットに入った
本当に原作通りの人物で、副校長が変わることが無ければ要注意人物だからだ。
「副校長、多分気づいてるよなぁ~」
だから彼は制服の上着のポケットではなく、胸ポケットに札を捻じ込んだのだ。
「次はもっと上手くやらないと……」
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