第x話ゴールデンウィーク



 我が瑞宝ずいほう学園高等学校は、ゴールデンウィークに新しいクラスでの交友を深めるためと言う名目で、『球技大会』と『校外学習』が行われる。

 『球技大会』と言ってもドッチボールをする程度で、サッカーやハンドボールなど競技性の高いものはやらない。


 そしてこのイベントの中で悪役である俺の出番は、本来『球技大会』だけだった。

 そのため、自分のためにどう動いていいのか正直言って判らない。


 既にシナリオをかなり壊しており、本来夏頃に全学年規模に拡大したモノを一学期の四月に行っている。

 会長が何かやると言っていた事も気になるが……今は目の前の事に集中するべきだ。


「この時間で『校外学習』の班決めをしてもらう。まあ実際バラけて動くことになると思うがな……」


「先生そんなぶっちゃけていいんですか?」


 いつものようなおちゃらけた口調で保科ほしなが囃し立てる。


「いいだろ? 別に俺は生徒達に無駄なかせめたくないんだよ。青春は一度きりなんだぞ? 後悔の無いように決めろよー」


「はーい」


 自己申告で班を別けていく、それだけで学生時代のトラウマを想起させる。

 ペアが決まらない体育などの実技教科……嫌な思い出ばかりだ。

「はぁ……」短い溜息をつくと、こんこんと肩が小突かれる。


「ねぇ私と組まない?」


「……まあ、成嶋なるしまさんがいいのなら……」


「これで二人ね。後は……」


真堂しんどうくん私達と組まない?」


志乃亜しのあさんいいかしら?」


「私は祐堂ゆうどうくんと組むから……」


祐堂ゆうどうくん、志乃亜しのあさん、俺、成嶋なるしまさんだから班としては完成ってところか?」


「そうだね。一応六人でもいいみたいだけど……」


「助けてくれよ!」


「どうしたんだ保科ほしな?」


「恥ずかしい話なんだが班決めで揉めちまってな……」


「ああ……」


保科ほしなのグループは、7人とキリが悪く原作でも誰か一人追い出す云々と言う話があったことを思い出した。

 原作だとそこそこ尺を使った話だったが、問題の解決は用意である。

 原作通りこの世界でも人当たりのいい保科ほしなとグループを組みたい奴は多いらしい。


 原作での解決方法は、保科ほしなと友達の数人とその友達の仲を深めると言うものだったことを思い出した。

 本来なら、そこに山本さんが加わって四人になるハズなのだが……原作と違い悪役である俺とモブでしかなかった成嶋なるしまさんが居る。


さてどう辻褄合わせが行われるのか……


 そんなことを考えていると背後から声聞える。


「ワタシも参加していいかな?」


 声がする方を振り向けばそこに居たのは、『山本・ウインチェスター・八枝子やえこ』さんだった。


「ワタシ達も班別けで揉めてて……」


 山本さんが来た方を見ると女子が何人も居る……物凄く分かり安く揉めているのが見て取れる。


「皆、名目上だけなのにどうしてこんなに揉めるんだろうな?」


 と空気を読んでか読まないでか、多分読んだうえであえて無視して保科ほしなはポツリと呟いた。


「判らないわ……」


  普段はどちらかと言えば軽薄な、保科ほしなを諫める側の山本さんも、よほど堪えたのかどんよりとした顔でその発言を肯定する。


「だったらさ……揉める問題である二人が別の班に入って、他の皆が仲良くなればいいと思わない?」


 こうして俺達は六人で班を組んで自由行動の際には、自由行動となった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る