episode10.体育(ペア組みもあるよ!)
俺––––山瀬 海斗の幼馴染、春樹と結菜は校内でも有名なバカップルである。
これはそんなバカップルの、体育の授業の1話に過ぎない。
「よし、海斗ー!ペア組もうぜー!」
「ああ、いいよ」
今は、体育の授業中。4組と6組が合同で授業を受ける。この高校では早めに体育大会があり、男女合同でなんか色々やってる。
俺が体育大会で出る種目は春樹と同じくリレーで、アンカーを走る。帰宅部にアンカーやらせるなよ。
先生のストレッチの合図で春樹と腕を組み伸ばしをする。
「海斗、リレー絶対俺が勝つ。そんで、勝ったら俺結菜に告白するよ」
「お前ら付き合ってるだろ。何が告白だ」
死亡フラグにしちゃ死亡要素がなさすぎるし、告白宣言にしちゃ告白要素がなさすぎる。
「でももし、万が一にも、いや、絶対に有り得ないんだけど、仮に海斗が勝つとして……」
「どんなけ俺が勝つこと想定してないんだよ」
リレーなんだから1番最初にバトンがアンカーに渡ったチームが圧倒的に有利だ。俺にだって勝ち目はある。
「話を最後まで聞けよ。もし仮にだぞ、仮の話だ。仮定の話に過ぎないが……」
「長いわ。わかったって。仮の話な。もし仮に俺が勝ったら何?」
ストレッチが終わればランニング。校庭を走りながら会話を続ける。
「俺のお母さん貰ってくれ」
「訳わかんねーだろ」
二人して苦笑する。俺が勝ったのになんで春樹のお願い聞かなきゃいけないんだよ。因みに春樹の親は小学生の頃離婚しており、家庭ネタのため、ツッコミにくかったりする。
「よーし!じゃあ体育大会の練習開始!」
先生がパチンと手を鳴らすと、リレーメンバーで集まる。男女混合四人のリレーだ。
今回神崎さんは大縄らしい。いいね。ジャンプで揺れるアソコ。これは大縄じゃなく、俺がお縄につく。
「山瀬くん!私、ジャン負けでリレーにされちゃってさ〜。走るの苦手なの。だから山瀬くん頼りだよ!」
お前誰だよ。自己紹介しろ自己紹介。まあ、流石にリレーメンバーぐらい覚えてるんだけど。
リレーメンバーの女子二人の名前は
「あんまり期待しないでくださいよ。青谷さんだってそれなりに早いでしょ?」
「私、赤井!青谷さんはもう一人の方!しっかり覚えといてよね。あと……あの……いや、やっぱりなんでもない!」
クッソ。外したか。青谷さんはプンスカと頬を膨らましてる。あれ?赤谷さんだっけ?おい、こいつ誰?
とまあ、色々有りつつもその後にバトン渡しやらを練習して、授業が終わった。結局赤井さんは何が言いたかったのだろう。
男子は6組で制服に着替えるので、教室まで一緒に向かおうと春樹を探す。と、先の方で結菜と春樹が一緒に校舎に向かっていた。
「ねー、体操服交換しない?春樹の匂い嗅ぎたい」
「ナイスアイデア」
バッドアイデアだボケ。体育終わりの男子の体操服ほど臭いもんはないぞ。おい、ガチで脱ぎ始めてるぞあいつら。
結菜が上着を脱ぎ、キャミソールが顕になる。エッッッッッッッロ。じゃなくて、羞恥心どこに捨ててきた。
「ああ!春樹の匂い!」
汗の匂いだぞそれ。
「よし、俺も着れたぞ」
案の定ピチピチじゃねーか。きんにくんみたいになってるよ。「結菜」と書かれた体操服が今にもギチギチと音を立てて引きちぎれそうなぐらいにはパツパツ。
「彼シャツならぬ、彼体操服だね」
「ペアルックってやつだな」
いや、元々体操服なんだから交換しなくてもペアルックだろ。あと何だよ彼体操服。
「今ならどんなスポーツだってできる気がする!」
今から着替えるんですが。
「体育大会当日も交換するか?」
頭のネジ何本飛んでったらそんな発想になるんだよ。
「流石に恥ずかしいかな」
「うん、俺も恥ずかしい」
コイツらはどんな心境で会話してんだよ。既に恥ずかしい事、五万としてきただろ。
あろうことかそのままそれぞれの更衣室に入っていく。おいおい、それは恥ずかしくないのかよ。更衣室に入り、春樹の元へ向かう。
「なあ、海斗、まだ気づいてないのか?」
「急になんの話だよ」
ズボンを脱ぎながら訳のわからないことを言ってくる。先に上を着替えろよ。なんでパンツ見せながら結菜の体操着着てんだ。
「俺と結菜が海斗自身で気付けるように、体操服交換したのに」
「あれで何を気付けば良いんだよ。2人の頭の悪さならとうの昔から気づいてる」
「違うわ。海斗、服が前後ろ逆」
俺は春樹の言葉に自分の体操服を見る。見事に俺の腹に背中がついていた。
「おまっ、早く言えよ!一緒に柔軟してた時気付いてたろ!だから赤井さん、何か言いたそうにしてたのか……」
いや、にしても体操服交換で気づくのは無理あるけどね?!
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