○○第1話 終末の集落

アヤトは集落の中央広場で、ひび割れた地面に座り込んでいた。日が沈みかけ、空は赤く染まっている。かつては人々の笑い声が響いていた場所も、今では静寂に包まれていた。彼らの集落には、今や四人しか生き残っていない。アヤト、リナ、ケンジ、そして老人のハヤトだ。


アヤトはふと、広場の片隅にある掲示板に目を向けた。そこには一枚のチラシが風に揺れていた。チラシの存在に気づいたのは初めてだった。アヤトは立ち上がり、慎重にそのチラシに近づいた。


チラシは古びており、所々が破れていたが、文字はまだ読み取ることができた。


「エナガ帝国の徴兵通知書」と大きく書かれていた。アヤトの心臓は一瞬止まったかのように感じた。


「リナ、ケンジ、ハヤトさん、これを見て!」アヤトは大声で叫んだ。


リナとケンジはすぐに駆け寄り、老人のハヤトもゆっくりと近づいてきた。彼らはチラシを囲み、その内容に目を凝らした。


「まだ、他にも生きている人がいるんだ…」リナは呟いた。


「しかも、チラシを配れるほどの行動範囲を持つ人類圏があるということだな」ケンジは冷静に言った。


ハヤトは深い皺の間から目を細め、チラシを見つめた。「これは…ただの希望ではないかもしれん。しかし、我々には選択肢が少ない。この場所に留まるか、それとも希望を求めて旅立つか。」


アヤトは決意したように頷いた。「僕たちの望みをかけて、その人類圏を目指そう。ここに留まっていても、いずれ全てを失ってしまう。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る