第23話 ブルーム・レフィアの過去①

「お前はどうしていつもこうなのだ!……なぜ貴様は我々のように強くなれない!」


父親のウザったい言葉にわたくしは


「レフィアは分かっています!……それでもわたくしは……」


母親も2人の姉も同様に彼女を心配して声をかける

ブルーム・レフィアは生まれた時、魔法を使えなかった。

─正確には魔力はあったが魔法に属性を付与することが出来なかった。


水も、炎も、雷も、光も、闇も……


そのどれもが彼女に適性がなかった。

それでも、彼女が普通の家の子供ならよかっただろう。

だが手彼女は名家『ブルーム』の人間として生まれてしまった。


更には、彼女の2人の姉はどちらもとても優れた魔力と魔法を手にしており……将来は先ず有望だった


そんなふたりと、出来損ないのレフィアが比べられるのはある意味必然であり……それゆえ、両親は彼女の魔法を強めるために何度も厳しい訓練をした。


その過酷さは幼い彼女をどんどんと追い込んで行った。──いつからか彼女は笑う事も、泣くこともしなくなってしまった


ただ、時折とても悲しい顔をするだけ……将来の期待も持てず、跡取りとしての責務なんて果たせる訳もなく


「あの子は最初からいなかった……そうするしかない」


──「そうね……それがあの子の為なのだから……仕方がない……わよね……」


「あの出来損ないはどこ?」「あの役立たずはどこ?」


実の親に自らをいないものとして扱われる。そんな経験が楽しい訳もなく……彼女はひとり地下室で仰向けになって寝転んでいた


そんな虚しい日々は彼女が11歳の時、唐突に終わりを迎える。

その日、ブルーム家は総出で旅行に出かけることになっていた


レフィアも最初は連れていく予定だったが、結局連れていかないで家に残すことになった。その日は彼女は執事やメイドさん達と過ごした。


その日の夜、彼女の寝ている家……つまりは、伯爵の城が襲撃にあった


以前より不満を抱いていた領民、更にはその領民が雇った暗殺者、傭兵が襲撃をしたのだ


本来、ブルーム家の内情は漏れていないはずだったが、使用人の誰かが裏切ったのかは分からないが

その日ブルーム家の人々がいないということが筒抜けであった



地下室で寝ていたレフィアは爆発音に気が付き、目を覚ます

てっきり誰か帰ってきたのかと思い、地下室から上がろうとするが……


「ひいいいいい!!」「だ、誰かあ!……」


「おいおいいい服きてんなぁ?……貰ってくぜ?」「こいつらどうします?兄貴……?」


「殺せ!殺せ!!」「金品は全部貰ってくぞ!……へへへ……しかしいい体してんじゃねぇか?……」


──悲鳴。──怒号。──祈り。


次々と悲鳴は減ってゆく。無情にも、自分たちを助けてくれるはずもないブルーム家の人々に助けをこいながら


そうして、城は一夜にして領民に占拠される


そんな絶望的な時に、ひとりぼっちで生き残っている人がいた。

……レフィアである


彼女はひとり声を押えて、ずっと涙を抑えながらうずくまり、見つからないように祈り続けた。


「(誰か……助けてよ……知ってる人が、どんどん消えてゆく…………助けてよ……)」


そんな彼女の前にとある1冊の本が落ちてくる。

最初、それは近くの棚から落ちてきたのかとレフィアは思った。

しかし、その本は自然と自分の前に飛んできて、彼女の前で開いた。


絶望的な時に、なんでそれを読もうと思ったのかは分からない。だが、それを読んだあと、彼女はこう決意した


「……奪われたものは取り返さなければ……」


と。


彼女が読んだ本は、『地球の武装一気見!ー紀元前〜人類滅亡まで』


その本には、未来の武具の知識が収録されていた。……彼女はそれを読んだ。

自然と頭にその概念が流れ込んでくる。そうしてこうすれば……この武器が出せる……この道具の使い方は……


もちろん、理解できないものも幾つかはあったが、それでも彼女はそれを理解した。


彼女はそうして『鉄と焔』の力を習得した。


彼女は早速それを試さねば……試すなら今、だ。

と突き動かされるように地下室の中で選んだ武器を取り出して構えて飛び出す


右手にはビームショットガン。左手には回転式拳銃を携えて


────そうして、彼女の初めての戦いが手魔法を使えるようになって初めての戦闘が幕を開けた

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