第5話 扉をこじ開けるもの

服を貰ったわけなのだが


「ちょいとこの服どんなセンスしてんのよ……?」


どちらかと言うと女の服を私は着る。正直、もっと動きやすい服装が良かったけれど致し方ない。


ま、いっか。と服を靡かせて私は扉に手をかざす


確かここを開けると外、晴れて自由とか言っていたっけ?

まぁここでの生活も悪くはなかったなぁ……と謎に回想をしていると


唐突に武器が光り始める。

驚く暇もなく、その武器の形がより素晴らしい形に進化する


へぇ?と私は思う。まず、グリップにトリガーが付いた。

そして謎の紐が付いた。……おそらくだがこの紐はエンジンを吹かす……役割のそれだろう


私はそれを試しにグイッと引っ張ってみる……すると

先程まで止まっていた刃がゆっくりと速度を上げて回転を始める。

一体どんな原理で作られているのかは不明だが、その武器の刃は切る瞬間に発生して、切り終わると消えるという謎仕様だった


余談ではあるが、彼女が使う武器は神器と呼ばれる分類のものであり


─────外の世界では、強さの指標のひとつにまでなる代物だったりする


ちなみ彼女の持つ神器の名は『リベレイトディザスター』

意味は『解放されし災禍』である


──────「ちょい?あかないんすけど!……まさかこれも自力で開けろと?」


何故か1ミリも動かない扉をみて私はため息まじりの呆れ声を漏らす


……仕方ない。


扉にチェーンソーを押し当て、先程付け加えられた紐を引っ張り、速度をどんどんと上げていく

それに合わせて、自動的にスキル『攻撃回数に応じて攻撃力アップ』の効果が適応され……

扉は10秒と待たずして崩れ落ちる。


「やっと空いた!……さてと……まずはこの面倒くさそうな洞窟から出て…………」


「「「「「「「「うぉ〜〜〜!!!!!!」」」」」」」」


耳が潰れるかと思った。

それほどの大歓声、そして拍手に私は思わず


「……来る場所間違えた?」


そう思ってしまったが、まぁ無理のない事だと思う。

よく観客の声を聞いてみると


「……まじか!あの試練を超えてくる異世界人か!……やべぇよ……絶対強いって!」


「しかも女だぞ!……俺のパーティーに入ってもらおうかな?……」


「馬鹿野郎!俺んとこのだ!」


「あの見た目……かなり地味というかシンプルね……一体どうやってクリアしたの?……」


……うるさすぎて3度ほど耳を塞ぐ。


すると、あの男が近ずいてきた。


『おめでとう!文名律……いや、リツ殿。私からは王国騎士団名誉騎士の勲章と、ギルドカードをさずけよう!……』


ありがとうと言うべきか迷っていると、無理やり押し付けられる


見るとそのギルドカードは見たことがない鉱石のようなものがはめられていた


「これは?……ギルドカードってそもそもなんですか?」


『貴女はこの世界において最高位のギルドカードにして

称号……ミスリル級冒険者となりました……その栄誉を称えてこちらをどうぞ』


私の話無視すんな〜とは思ったが、割と真面目な話っぽいので黙る。


私は案内された席に座り、抹茶を飲む。

正直、この世界において抹茶があることが驚きなのだが


『残りあと3人来るまで待っていて欲しいのだが……よろしいか?』


それはまあ構わないけど。流石に退屈


私が暇しているのを感じ取ったのか、近くの女性騎士のような人が話しかけてくる


「やあ、君があの試練を超えたものか……お目にかかれて光栄だ!私は『ミスリル級冒険者パーティー』のひとつ『比翼連理』の一人、『ガンダルタ=ロウ』だ!……まぁ覚えてくれると幸いだ」


……固有名詞が多い!やり直し!


と言いたかったが、それを飲み込み私はゆっくりと挨拶をして


「あ、どうも……私はリツ……文名律……ミスリル級冒険者らしいけど、よくわかんないけどよろしく!……ちなみに趣味はゴリ押し!」


「ご、ゴリ押し?……また変わった戦術の使い手なのだな?……まぁ気楽にお茶でも飲んでいてくれ……」


正直、暇すぎて退屈だったので私はロウさんとゆったりと喋る


その中である程度この世界のことを理解することができた


まず分かったのは、あの男……最初に話してた男がこの国の国王だということ


◇◇◇◇◇


男はため息を着く。


……ゆっくりと腰掛けて、写真を撫でる


「……レダイヤ……ラズリス……エメレリア……お前たちをいつか……探し出してやるから……な……」


男は妻と3人の子供に恵まれた。幸せな男だった


しかし、国の情勢が悪くなった時禁断の異世界人召喚に手を染めた結果


その3人と妻を失っていた。


呼び出しに失敗したのでは無い。呼び出したやつが不味かった


圧倒的な力で世界をめちゃくちゃにして、最後には王国にたてつき、たくさんの人々を殺しだした奴ら。


異世界人のことをいい人たちだと、我々をただ導いてくれるだけのものだと勘違いした末路だ


──────私はもう間違えない。異世界人に対する扱いを。


それこそが、彼が異世界人を隷属させたがる理由の一つだったりするのだが


まぁそんなこと知らない異世界人たちからすれば酷い王様なのだろう





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