ある男のある完璧な計画
畠澤想亮
ある男のある完璧な計画
私は今、スーパーマーケットにいる。コートのポケットには一丁の拳中があるだけだ。財布はない。携帯もない。あるのは武器と動機だけだった。金目当ての強盗ではない、ましてや私怨での殺人でもない。そういう風に誤解されては困る。強盗なら制圧が難しいわりにリターンの少ないスーパーなど選ばないし、私怨での殺人ならもっと人目につかないところでナイフでぐさりとやるだろう。ただ私はスーパーにいて、拳銃を一丁持っている。殺人欲からでは断じてない。そんなものはくだらない。ゲームででも発散させればよいのだ。初めからこの計画で誰も殺す気はない。この拳銃はあくまで脅しとして、だ。しかしそうはいっても拳銃は本物だ。大抵のものは金を出せば手に入る。ちょっと脅すだけならレプリカでもよかったが、万が一抵抗されたら困る。それにいざとなったとき私はこの銃で自殺するつもりである。むろんその決断を下すことはないだろう。それほどまでに私の計画は完璧だ。このスーパーに入ることも、この時間に入ることも全部2か月前には決まっていた。スーパーの従業員のシフトを監視し、事前にルートを把握して、絶好のタイミングを考えた。今この時間。このタイミングしかない。私はお菓子の棚でじっと好機をうかがう。レジと従業員出口を三度確認した後、ダミーとなるお菓子を一つ取り、レジへ向かう。と、その前に計画をもう一度確認しなければならない。一旦外へ出て確 「お兄さんちょっと」
「さっきから怪しかったんですけど、その手に持ってるお菓子買ってませんよね?」
私はポケットから銃を取り出し、完璧な計画の失敗とともに命を絶った。
ある男のある完璧な計画 畠澤想亮 @SousukeHatazawa
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