転生したら退役した魔物喰いの騎士の弟子になったので、神様をぶち殺そうと思います。
ドアノブ半ひねり
第0話 ラーフ砦東 橋上
「弟子よ、右から大振りの突き!」
師匠からの声で、敵ーー鎧を着けたゴブリンの接近に気づく。
「ギギッ!!」ゴブリンは俺の心臓に向けて思いっきり突きを放ってきた。上半身を捻って回避する。二太刀目を放とうと構えたところを蹴り飛ばす。
怯んだところに俺はすかさず剣を振る。
狙うは鎧と鎧の間。首の部分。これには自信がある。
刃をゴブリンの首にめり込ませ、そのまま切断した。ーー一匹目。
俺の背後で弓を構えていた二匹目のゴブリンに向けて、一匹目の首を切断した勢いをそのままに突きを放つ。こちらはさっきと比べて防具が薄い。いける。
剣はゴブリンのみぞおちにズプリと刺さった。
そのまま上に引き裂く。ーー二匹目。
剣をすぐに抜き、構える。
遠方にもう一匹、ゴブリンが見えた。
剣を持つ手はダラリと垂れ下がり、代わりにもう一方の手の掌はこちらに向けられていた。ゴブリンの魔力が手を中心に高まっていく。
ーー魔法の準備をしている。
応戦しようとこちらも左手を構えたが、すぐにやめた。
師匠が剣を構えていたからだ。
師匠とゴブリンの間の距離はおよそ30m。
ーー師匠なら、届く。
師匠の右脚がぐっと踏み込まれた瞬間。
ーーゴブリンの首はポーンと宙を舞い、橋の下の川へ、ぽちゃりと落ちた。
やっぱり師匠の剣は凄い。速いし、何より無駄がなくて美しい。
師匠は剣をしまいながら、こちらに近づいて来た。
「我が弟子よ。多人数戦ではいつも以上に周囲に気を配れ。敵に対しての優先順位を常に考えろ。
私の声がなければ、お前は死んでいたぞ。......だが、太刀筋は良かった。さらに訓練を積み、技を磨け。」
やった!師匠から褒められた!......正直嬉しすぎて飛び上がりそうだけど、なるべく我慢して答えた。
「はい。ありがとうございます。師匠!」
「さて、ひとまずはこれで周囲の魔物は全て殲滅した。少し早いが、飯にするとしよう。」
ビクッと、俺の身体が反応した。ーーまさか。
「あの、師匠。今日の飯の食材は......?」
師匠は言った。
「?、何を言ってるんだ?ほら、早くそこらへんに落ちてる首とか腸とか拾ってこい!
見ろこれを!この引き締まった筋肉!!こいつらは兵隊ゴブリンと言ってな!普通のゴブリンとは違って、身体作りや剣術、弓術の訓練を積極的に集団で行うのだッ!!普通のゴブリンよりも歯応えあったりして美味いぞッ!!それに、腸は珍味として通にかなりの人気だッ!!!
あとはやっぱりあれだ!鎧や兜を着けたまま焼くことで、鎧についた汗や匂いをそのまま閉じ込めるできるッッ!!!!食べたときに、ゴブリンがいままで過ごしてきた困難や苦しみ、喜びや希望を五感で感じることができるゥ!!!
よくやった弟子よォ〜!首を傷つけず飛ばしたことも、捌いて腸を取り出す手間を省いたことも!改めて褒め称えようぞ!!!!
さぁァ弟子ヨォ!鍋に火をつけろぉ!早く!さぁ早く!!!?お前に魔法を覚えさせたのもそのためだぁ〜!あぁワクワクが止まらん!!止まらんぞァ早く!!」
......なるほどね。
珍しく褒めてくれたと思ったのはこういうことか。
俺は肺に思いっきり空気を入れ、叫んだ。
「絶ッッッッ対ィッッ嫌だア!!!!!!
死んでも嫌だァ!!!うぉぉおああ!!!!」
そして地面に倒れ込み、手足をばたつかせる。
「ヤダヤダヤダヤダヤダヤダ!!!!!!
ヤダヤダヤダ絶対ヤダ!!だって人間じゃん!集団で集まって訓練する?!もうそんなんほぼ人間じゃん!!!ヤダヤダヤダ無理無理ッ!
あと臭そう!!めっちゃ臭そーーーッ!!!」
奥義、駄々こねッ!!転生する前からの得意技だ。プライド?ないねそんなもん。だって嫌だもん。ゴブリン食うの。
「火をつけろオ弟子よぉぉぉおお!!!」
「ヤダ無理無理ヤダヤダヤダヤダ!!!」
どうしてこんなことになったのか。
いろいろ説明しないといけないことはたくさんあるんだけど。
ひとまず、俺はどういう人間で、なぜこの異世界に転生して来たのか。
それを見てほしいと思う。
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