吸血鬼兄妹の夜の旅
@AI_isekai
吸血鬼兄妹の旅
旅立ち
第1話 出発
「ヴァレ
瓦礫に座り、そう呼びかけるのは、ルシアン・ノクター。
太陽に晒されず常に白く光る肌、長い金色の髪を背中に流している、アメジストのような瞳を持つ細身で幼女のような姿をした吸血鬼である。
彼女の服装は、豪勢な白と黒を基調としたドレスで瓦礫の積まれたこの地には似ても似つかない。
「
彼女の呼びかけに答えたのは、ヴァレリア・ノクター。
彼女同様に潔白な肌を持ち、わずかに乱れた金髪。そして、怪しく光るエメラルドのような瞳を持った彼女の兄、吸血鬼の王族である。
「嫌じゃないよ。ヴァレ
「ああ、この国にいた吸血鬼のほとんどは人間に殺された。だから俺は王族として、各地に隠れ住む吸血鬼とエルの遺産を回収する必要があるんだ。そして、人間にその報いを……」
「どうしても人間を殺さなくちゃいけないの?」
ルシアンは、血を見ることが苦手という吸血鬼において致命的な欠点を持っている。彼女は、その欠点から多くの不幸を経験しており、そして彼女は暴力、そして血をより嫌うようになった。
「……俺も人間を殺したくはない。でも、俺の家族を殺しこの国を滅ぼしたやつらだ。優しくは出来ないよ」
「うん……わがまま言ってごめん」
「お前は、悪くないよ。俺こそ、ごめんな。お前が、嫌なことを知ってたのにこんなこと言って」
「ううん、ヴァレ
ルシアンは、そう言うとヴァレリアの額にデコピンをした。
「私にも!」
「そうだな、これで仲直りだ」
そう言って額を見せてくるルシアンを見て、ヴァレリアは優しく微笑むと、その小さな額に優しくデコピンをした。
「長い旅になるだろうけど、大丈夫か?」
「うん、大丈夫。ヴァレ
――ゴーン!……ゴーン!……ゴーン!
崩壊したこの国で、魔法で動き続ける真夜中の時を告げる鐘が鳴る。出発の合図だ。
「じゃあ、行こうか」
ヴァレリアは、ルシアンの小さい手を握ると荒廃した城を後にした。
ここは、かつてエボンハル城と呼ばれた、吸血鬼の国エルの首都に在った美しく壮大な王城である。
しかし、エボンハル城の栄光は永遠ではなく、今や城は荒廃し瓦礫が積まれている。
二人は、それら王都の建物の瓦礫を越えると、数十年前に人類によって滅ぼされた亡国エルの王城を後にした。
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