第48話 組織戦
八咫烏召喚!
目の前に嫌そうな顔をした八咫烏が現れた。
「創真! てめぇ何度も呼び出しやがって、調子にのってんじゃね~ぞぉ、コラぁ〜!」
「や、やぁ。元気だったかい、ヤタ?」
「このボケぇ! なにクソつまらねぇ社交辞令吐いてやがんだ〜、あぁ〜ん?」
タケじいが見るに見兼ねて間に入ってくれた。
「ヤタよ、元気じゃったか?」
「あ、これは主様。ヤタは元気でございます。主様の声を聞けて、更に元気になりました」
なんだコイツぅ、態度が全然違うじゃないかぁ!
「ヤタよ、お主の力を見込んで1つ頼みがある」
「何でございましょう?」
「お主に、この一帯にいるガマロを討伐して欲しいのじゃ」
ヤタは湖を見渡して返事をする。
「恐れながら、わたくしがいくら強いからといっても、この数のガマロを討伐となると何日かかるか分かりません」
「フォ〜フォフォ〜、昔はよくお主の部下を使って索敵をしとったがの〜。忘れてしもうたか?」
八咫烏は一瞬嫌そうな顔をしたが笑顔で答えた。
「はい、もちろん覚えておりますとも!」
すると、ヤタは上空へ舞い上がり、旋回しながらカラスの鳴き声で仲間を呼び始めた。
カァ〜! カァ〜! カァァ〜!!
しばらく待つと、数十羽の魔鳥が遠くの空に現れた。やがて、オレの前にヤタが降り立ち、その後ろに魔鳥20羽が整列した。
ちなみに、オレとヤタの間にはリュックから出したポテトチップス、かっぱえびせん、ポップコーンのお菓子が並んでいる。
「ヤタよ、この湖におるガマロを倒し、各自3個づつ魔石を集めるのじゃ。ここにあるお菓子はささやかなお礼じゃ!」
鳥達はタケじいの言葉に目の色を変えていた。というのは、最初にヤタを呼び出した時、ヤタはこれらのお菓子を抱えて戻り、配下の魔鳥達に分け与えていたのだ。
「おい、てめぇらあ〜! 今の主様の言葉が聞こえただろ? 魔石を3個集めた者から、この御馳走を好きなだけ食べやがれぇ〜!」
魔鳥達は一斉に飛び立ち、我先にと湖のガマロへ襲いかかる。
クェェ〜〜!!
ゴゲェ〜〜!!
カラスとカエルの、いや魔鳥と我魔呂の戦いが始まった。
レベルが13の魔鳥に対し、レベル7の我魔呂は苦戦を強いられる。ましてや、空からの攻撃に地上の我魔呂は為す術もない。
かろうじて水の中へ逃れる者もいたが、大半は空からの嘴突撃に身を貫かれて魔石に変わり、オニバスの葉の上に転がる。魔鳥はそれを嘴でくわえボスの所へ運んで行く。
一方、ボスである八咫烏はオレの前で寝そべりながらお菓子を食べている。
「ボス! 魔石をお持ちしましたぁ〜!」
最初の一羽が、ヤタの前に魔石を置いた。
「ご苦労。あと2つだ、頑張れ!」
ヤタはボスらしく部下に労いの言葉をかけている。しかし、皆んなが働いているのに1人だけお菓子を食べていて態度は最悪だ。
オレっ?
あぁ、オレも同じかぁ……。
「創真よ、これが組織戦という物じゃ! 1人で出来ない事も組織でやれは可能になる。戦いもしかり、経営もしかりじゃ。しっかり覚えておくがよいぞ!」
「……分かった」
オレは心の中で、最低と言った事をタケじいに謝った。
夕暮れ時になり、魔鳥20羽のノルマが達成された。
途中でご褒美のお菓子が無くなり、腹を立てて帰ろうとした魔鳥が現れるという一悶着が起きたが、予備のお菓子があったので何とか事無きを得た。
その時のタケじいのアドバイスが、賃金未払には注意する様にとの事だった。さてはタケじい、過去に経験があるんじゃね〜のかぁ〜?
今日の戦果は、なんとガマロの魔石が60個。
凄い、凄すぎる! これが組織戦の妙なのだろう。
ヤタにお礼を言って召喚を戻し、オレはギルドへ向かった。
1時間歩き、ギルドに到着する頃には、辺りがすっかり暗くなっており、時計を確認すると午後の7時。
まだカレンさんを怒らせる時間ではない。
「やあ、カレンさん。換金お願いします」
オレはガマロの魔石60個をカウンターに載せた。
「いらっしゃいソーマって、あんたこれを1人で狩ったのかい?」
「はい、ハハハ」
オレは笑って誤魔化し話をすり替えた。
「最近パーティの伝言がないんだけど、キャロルは元気ですか?」
「キャロルかい、今月は随分と稼いだからね〜、毎日家でゴロゴロしているよ」
そう言って、カレンは換金する為にバックヤードへ下がっていった。
そうか、今月はそれぞれ金貨7枚以上を稼いでいる。日本円にすると70万円、十分な稼ぎだ。特別な依頼でもない限り、これ以上は稼ぐ必要がないのだろう。
しばらくしてカレンがお金をトレイに乗せてカウンターに出てきた。
「金貨4枚と銀貨2枚だ。しかし、こんなに稼いでどうするんだい?」
「ハハハ、パーティメンバーのレベルに追い着く為に特訓してるんですよ。お金は運良くついてきたみたいな〜」
「まぁいいさ、頑張りな!」
オレはお金を受け取ると和倉屋へ向かったが、途中で夕食が出ない事に気付き辺りを見回す。
すると、通りの片隅に和風調のこじんまりとした居酒屋が目に止まった。
店の名前は、居酒屋『盾の乙女』。
店に入ると、まさに日本の小さな居酒屋と似た作りで厨房とカウンターがあり、その後ろにはテーブル席があった。
そして、店の店員は全てドワーフ。客もほとんどがドワーフ。キャロルから聞いてはいたが、この世界に来て始めてお目にかかるドワーフだった。
✒️✒️✒️
無事に読者選考が通過したので、連載を再開させて頂きます。
よろしくお願い致します!😉
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