第19話 剣の性能とは

 武器屋を出たオレは、日本へ転移をする為に最初に降り立った丘へと向かっていた。

 街の中での転移は、誰かに見られるリスクが高く、人気のない最初の丘が無難と判断したからだ。


「創真よ、交渉術は見事じゃった。見直したぞい!」


「やめてくれよ。自分でも思ってもない事が次から次へと口から出てきて、最後は罪悪感で一杯だったんだぞ!」


「よいよい、一応ウソは言うとらん」


 確かに、信用を失くす様なウソは言っていない。真実の中に大きな期待と小さなウソを散りばめて絶妙な言葉を紡ぎ出す。交渉術パネ〜!


 何はともあれ、第一の目標は達成した。後は帰還するだけだが、帰還する前にやっておくべき事が1つあった。

 それは手に入れた剣の鑑定だ。


 まずは短剣から。今までは選択肢が無かったので鑑定をする必要が無かったが、これからは大和商店で販売する商品の事を知っておかねばならない。


 おれは腰のホルダーから短剣を取出し鑑定と念じると、アイズウィンドウに短剣のステータスが表示された。


鋼の短剣 Lv1

攻撃   F

魔法障壁 Lv1

魔石(水)  Lv1 命中10%UP


 次は鋼の剣だ。


鋼の剣  Lv1

攻撃   E

魔法障壁 Lv1

魔石(火)  Lv1 クリティカル10%UP


 最後は風の剣、楽しみだぁ〜!


風の剣  Lv3

攻撃   D

魔法障壁 Lv2

魔石(風)  Lv2 速さ20%UP

魔石(土)  Lv1 攻撃10%UP

スキル  瞬歩(一瞬で間合いを詰める)


 風の剣すげぇー! 攻撃がDでスキルまで付いている。それに軽くて振りやすく、正に初心者向きの剣。武器屋の店主が言った通りだ。


 しかし、あの店主はただの商売人と思っていたけど、オレの実力に見合った良い剣を選んでくれてたんだな。

 次からはあの店主には交渉術を使わずに誠実に向き合おうと思った。

 但し、鋼の剣は予想通り安物の量産品なので、これを買う時だけは値切ろうと思った。

 

 埋め込まれている魔石をまとめると以下の様になる。

  土は黄色で攻撃UP

  風は緑色で速さUP

  火は赤色でクリティカルUP

  水は青色で命中UP


 総括すると、剣の能力は魔石のレベルに応じて補正値が上がる。

 魔法障壁も魔石のレベルで補正されるが、足し算ではなく最大値が適用される様だ。


「だけど、スキルはどうやって付加されたのかなぁ?」


「創真よ、店主が調整したと言っておったのを覚えておらんか? 鍛冶職人の腕が良いからスキルが付くのじゃ」


「それじゃ〜武器のレベルは?」


「ワシの知っとる限りでは、武器のレベルは全部で10段階あるんじゃ。だからレベル3は下の上という所かのう。そしてレベルは魔石のレベルやスキルの総合力をレベルとして分かりやすく表示した物じゃ。例外はあるがのぉ〜」


 風の剣で下の上かぁ〜! レベル10の剣っていったい……


「なるほどね〜、次からは鑑定してから買う事にしよう」


 丘の上での鑑定も終わったので、いよいよ帰還である。

 オレは自分の部屋をイメージして唱えた。


 異世界転移発動!


 すると、来た時と同じ様に異次元トンネルを抜けて自分の部屋に到着した。

 

 ガタン。


「あら創真、いつの間に帰ってたの〜?」


 台所から母の声がする。


 時計を見ると午後8時50分。予定通りに帰って来れたようだ。

 オレは部屋から返事をした。


「バイトが早く終わって、部屋で寝てたんだ」


「そうなの、気付かなかったわ〜。晩ごはんが出来たから台所に来なさ〜い」


 オレは返事をすると、急いでジャージに着替え、いつもの様に母と夕食を取り、お風呂に入った。


 そう言えば、さっき朝食を食べたばかりなのに、夕食をすべすべっと食べてしまった。もしかすると、異世界転移ってかなりのカロリーを消費するのかもしれない。


 お風呂から上がった時に、母親に腕のやけどがバレて心配されたが、バイトでやったと誤魔化して薬と包帯を巻いてもらった。


 次からは気を付けねば……


 その後、自分の部屋へ戻り、子機電話から香織パパに連絡を取ると、明日の夕方、ある喫茶店で例の物を受け渡す事になった。


・・・・・・・


 時刻は深夜0時。布団に入ってから1時間も経つが全く寝付けない。


「なぁタケじい、全然眠れないよぉぉ〜」


 考えてみると、異世界で朝起きてからまだ5時間しか経ってない。


「時差ボケ確定じゃの。かの大谷選手が言っておったなぁ〜。一流選手はどんな時でも眠る事が出来ると」


「オレは一流選手じゃね〜よ。ただの高校生だぞ。そう簡単に眠れるもんか!」


「しょうがないの〜、腕の怪我もあるし、明日の異世界は中止にして、剣術の指導でもしてやろうかのう」


「お、おぅ」


 時間は深夜1時。オレ達は剣を持って近くの空地へ来ていた。


 誰もいない静かな空地で鋼の剣を抜いた。両刃の長い剣で、刃の幅は日本刀の1.5倍くらい。片手で持つにはちょっと重い。

 オレは両手で構え真っ直ぐに振り下ろす。


 ブ〜ン……


 なんか重いし、しっくり来ない。


 剣道の型は日本刀を想定した物だ。西洋剣は重心が違うので振り方を調整する必要があるな。


 次は、風の剣を振ってみる。

 

 ビュウーン!!


 柄が手に馴染じむ。それに軽くて振りやすい。続いて袈裟斬り、横斬り、突きをしてみた。


 かなりしっくり来る。


「創真よ、まだまだ大振りじゃ。西洋剣は中振りでも日本刀よりパワーが出るのじゃ。大振りするのはとどめを刺す時くらいのもんじゃ。もっと小さく振る練習が必要じゃ!」


 それから1時間、夜中の3時まで訓練して、ようやく眠る事が出来た。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る