武器商人は忙しい! 〜異世界の武器を調達できるのはオレだけ!!『日本の危機を陰から救う高校生の物語』

大和タケル

第1章 桜島のゴブリン

第1話 序章〜桜島の異変

 2026年春。


 過去最大の太陽フレアが観測され、強大な電磁波が地球を襲った。

 雲一つない晴天に稲妻が走り、暁闇の空は真っ赤に染まる。この異様な光景に、世界中の誰もが、この世の終わりを感じたに違いなかった。


 一方、磁気嵐対策に万全を期した日本では、地方で数日の停電が起きたものの大した影響は無く、誰もが胸をなで下ろしたのだった。

 しかし、桜島では密かに異変が起こっていた……。


♣♣♣♣♣


 ある日、ネットの書込みに桜島で未確認生物ユーマを見たとの情報が流れた。

 更に複数の目撃情報が寄せられ、噂が噂を呼び、お昼のワイドショーで現地リボーターと中継を繋いでいた時の事である。


「みなさ〜ん、こんにちわ〜! 私はネットで話題のユーマの存在を確認する為に、ここ鹿児島県桜島に来ておりま〜す! こちらにお呼びしているのは、1週間前にユーマを目撃したという、さつまいも農家の川辺さんで〜す。

 川辺さん、ユーマを目撃した時の状況を説明して頂いてもよろしいですかぁ〜?」


「はい、あれは〜午後3時頃でした。ワシが芋を植えてっと〜、あの木の影から顔が見えたとです。最初は近所の子供かなぁ〜と思いもしたけど、肌の色が緑じゃったとです。

 見間違げかと思って、お~いぼうずぅ? と声をかけっと、驚いて林の中へ逃げていきもした! 今思えば悪りぃ事したかなぁ?」


「肌の色が緑だったんですね! そして身長は子供くらいで臆病といった特徴ですね。それからは見ていませんかぁ〜?」


「はい、見ちょらんとです」


 その時、撮影スタッフから声が上がった。


「いたぁー、木の上ッ!」


 カメラが木の上を映し出すと、緑の肌で子供のようにあどけない顔をした、まるで妖精の様なユーマがテレビ画面一杯に映し出された。

 そして、これを契機に、ユーマの存在が日本全国に知れ渡り、いろんなメディアがユーマを取り上げていった……。


 このユーマを、あるバラエティ番組では「宇宙人」と呼び、ある報道番組では「森の妖精」と呼んだ。

 しかし、圧倒的多数を占めたのがネットの声で、アニメに出てくるゴブリンが最も似ているという理由で『ゴブリン』と呼ばれる様になり、やがて一大ブームが巻き起こった。


 ある番組の目撃コーナーでは、小さな女の子がテレビでインタビューを受けている。


「私はゴブリンさんにお菓子をあげたの。そしたら、ありがとうって喜んでたの〜!」


「今日のゴブリン情報でした~。最近ほのぼの投稿が多いですねぇ。○○ちゃんにはゴブリンのぬいぐるみをプレゼントしま〜す!」


「うれしぃ〜!」


 ホントかウソか分からない情報が絡み合った結果、いつしか『宇宙から来た森の妖精ゴブリン』というイメージが定着していた……。


♠♠♠♠♠


「なぁ創真、昨日のネットニュース見たかぁ〜?」


「見てねぇよ、俺がスマホ持ってないの知ってるだろ?」


 彼はオレのクラスメートで相模慎吾サガミシンゴ。小学校からの腐れ縁でオレの情報元……もとい親友だ。

 そして、オレは大和創真ヤマトソウマ、都立東大和高校に通う高校3年生17才。


 オレは母と2人暮らし。いわゆる母子家庭で、あまり裕福ではない……いや正直に言おう、はっきり言って貧乏だよっ!

 だから、高校3年にもなって携帯電話を持った事がない。スマホも持っていないオレが、今まで上手くやって来れたのは親友の慎吾がいたお陰である。


「イャ〜ごめんごめん。そうだったなぁ!」


 分かってるくせに、いつも慎吾が言う決まり文句だ。


「隣のクラスの女子がさ〜、一昨日ミンミンに街頭インタビューを受けたんだって。それが全国ニュースに流れちゃってさぁ、学校で大騒ぎになってんだっ!」


「興味ねーよ」


「まぁそう言うな、ちょっと見てみな!」


 慎吾がスマホ画面をオレに見せ、動画を再生する。


「こんにちはぁ〜、ゴブリンコレクターのミンミンで〜す。今日は渋谷でステキなゴブナーを発掘したいと思いま〜す!♡」


 彼女はネットで人気のユーチューバーだ。世の中のゴブリンフィーバーに便乗して、ゴブリンコレクターを名乗っており、今や数本のテレビ番組を持っている。


「あっ、あの子に聞いてみましょう! カメラさん、こっちこっちぃ〜!」


 そこに映し出されたのは、隣のクラスの女子ジョシだった。名前は知らないが、派手好きで有名なので顔は知っている。

 服装はセンスが良くてオシャレなんだが、持っている小物が違和感を漂わせている。


 ゴブリンが刺繍されたバッグを持ち、携帯ストラップはゴブリン人形、ゴブリン時計云々。

 おまけに素敵なベレー帽の上部には、大きなゴブリンが描かれている。隠しアイテムのつもりなのかぁ〜?


「すみませ〜ん。ちょっとお話ししてもいいですかぁ〜?」


「えええっ〜、ミンミン!?」


「今ね〜、テレビの番組で〜、街角のゴブナーを探せってコーナーなんだけど〜、素敵なゴブナーを探してたら〜、あなたを見つけたのよ〜。お話ししてもいいかなぁ〜?」


「感激です! なんでも聞いて下さい!!」


 派手好きな隣のクラスの女子は、嬉しそうにベラベラと喋っていた。


♣♣♣♣♣


 それから1週間後、桜島での撮影中に、特集を組んだテレビ局の女性スタッフ1名が、ゴブリンにサラわれるという事件が起こった……。



✒️✒️✒️

【大和創真のイメージ画像】

https://cdn-static.kakuyomu.jp/image/K9cRfVEo


【妖精の様なゴブリンのイメージ画像】

https://cdn-static.kakuyomu.jp/image/NFvQ9hJJ

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