帝国戦記
@evening
一話
とある島にある研究所。その一室にて二人の人間が話し合っていた。しかし、人間といってもその姿は生きているとは思えないほどに白く、目は鮮血のように赤い色をしている。
この二人が部屋の中で過ごしていると召集のアラームがけたたましい音を発した。魔法により素早く外に出ると軍隊輸送船に乗り込むとインカムから指揮官の声が流れ始めた。
〘今回の作戦は大陸にある敵の要塞を破壊することだ。すでに第一陣が攻撃を開始しているが、成果は出ていない。そこで君たち第二陣を追加し圧倒的な戦力で敵を押し潰す。敵は発見次第射殺だ。〙
そのまましばらく波に揺られていると遠くに海岸が見えてきた。しかし、敵からの砲弾が飛んできていないことから海岸付近は完全に制圧しているようだ。
そして海岸に到着すると船に積んでいたトラックや戦車などの状態を確認していた。個人用銃火器や弾薬の確認を終えると各々車に乗り込み要塞まで出発した。要塞に近付いてくると、連続した砲撃音や銃撃音。悲鳴や怒号などが聞こえてきた。限界まで近づくと戦車やトラックから降り遮蔽物を使いながら少しづつ要塞との距離を近づけていった。そしてその中にはあの2人の姿も存在した。
「要塞の攻略と聞いて嫌な感じはしてたけどやっぱり激戦地だね。少し体をさらしただけで機関銃の射撃がすごく飛んでくる。」
「もう既に一陣は壊滅に等しいほどの打撃を受けているってのにあいも変わらず物量による制圧だなんて上層部は何を考えているんだ。このままじゃ二陣も同じ末路を辿るよ。」
二人は対戦車障害物や砲撃によってできたクレーターに身を潜めながら少しづつ前進していた。その周りは死体が流した血に濡れており敵要塞からの射撃による被害をあらわしていた。二人が要塞を見るとその手前には鉄条網が引かれており鉄条網を破壊しなければその先への進軍は容易ではなさそうだ。要塞攻略には戦車も使われているが射程圏内に入るとすぐに砲撃や火炎弾が掃射されすぐに破壊されてしまっていた。
「わざわざ私達が鉄条網を破壊する必要もないし、むしろこのまま被害が増えたほうが嬉しいくらいだね。このまま静観しておこう。」
「そうだね。こんな中進軍だなんて考えたくもないね。此処は勇敢な他の兵士に任せておこう。それにしても戦車がこんなすぐに破壊されるんじゃ鉄条網の破壊は歩兵戦力で行うしかないけど全然近づけてないね。」
他の兵士も機関銃が他の仲間に向いているときやリロードなどで弾幕が薄くなったときを見計らって前進するがそれでも遮蔽物ごと破壊する砲撃や様々な魔法弾が飛んでくる度に後退を余儀なくされなかなか前進できていなかったが、幾多もの射撃をすり抜けた兵士の一人が爆薬筒を爆破し鉄条網を破壊したことにより続々と内側に兵士が突撃。塹壕に待ち構えていた敵兵と要塞からの射撃により数多くの兵士が撃たれたがそれでも敵塹壕の中に飛び込んだ兵士により注意が逸れたところから更に鉄条網が破壊され戦闘の舞台は要塞前の平地から塹壕内へと移っていた。
敵兵士は慣れた塹壕の中で戦闘を進め体を晒した者から順番に蜂の巣にしていった。さらにはトラップや地雷を用い混乱が広がった。その内に更に後ろの陣地へ後退し、防衛戦を強固にしていった。
あの白い二人は突発的に遭遇する敵兵に警戒しゆっくりと塹壕内を進んでいた。度々地雷を踏み抜くことがあったが、持ち前の頑丈な体には致命傷と言えるほどの傷はつかず、そのまま戦闘を継続していた。その頃になると敵兵は撤退を終えており、塹壕内に砲撃が降り注ぐようになり塹壕内を進軍しておた兵士は慌てて塹壕の外に飛び出した。そして態勢を整えると奥の防衛陣地へと進んだが、そこは地雷原となっており思うような進軍ができていなかった。さらに、その地雷の殆どは跳躍地雷で被害はさらに広がった。手榴弾や重りとなるものを投げ入れることで誤爆を誘発していたが、そんな悠長なことをしている間に機関銃で撃たれ進軍はそこで停滞してしまった。
「私達や私達と似たようなものなら一発二発防いで行けないこともないけど地雷原の長さがわからないんじゃ行こうにもいけないね。まあ行こうとするやつはいないだろうけど。」
「僕達はついさっき踏み抜いたばっかだしね。人海戦術で突破するんじゃない?」
そうして手をこまねいていると味方の術師が到着した。その後ろにはさらなる増援が到着したようで数の増えた兵士が待機していた。術師が地雷原の手前に立つと魔法陣から火炎放射のようなものを発射した。これにより熱された地雷の火薬は誤爆し、安全な道ができ始めていた。更に一気に地雷が爆破したことにより煙幕代わりとなり敵機関銃の精度も低下した。そうして地雷原を突破し、敵陣地への突撃を始めると無力化されたと思われていた地雷原の一部が突如爆破。少なくない被害を受けたが、そのまま突撃。その後も数回爆破したが、五回目以降爆発は発生しなかった。
帝国戦記 @evening
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