子供のための嘘。

Asahi-Yuhi

純粋を盾に。

──サンタさんを信じている人は見ないで下さい。


 なんて書いておきながら、今頃の子供たちは信じていないのだろう。


 それに、ここはウェブ小説だ。


 そんなサンタさんを信じる子供がこんなところまでたどり着くわけがない。


 子供たちがよく見る動画サイトやらゲームやらならまだしも。


 俺は、サンタさんを今は、信じていない。


 この前、親から告げられた。


 疑ってはいた。


 周りの友達はいないと言う。


 それなのに信じていたのだろうか。


 俺自身は分からない。


 最初に疑ったのは、小四のとき。


 小説の中の前提が六年生はサンタさんを信じていないと言うものだった。


 でも、その小説でサンタさんを信じていた主人公はサンタさんに出会った。


 だから、疑いつつも信じる気持ちを捨てなかった。


 小五、小六と周りの友達はサンタはいないと言う。


 中一で信じているか信じていないか聞かれたときは、信じていると答えた。


 なぜかは分からない。


 ずっと疑っていても、直接見ようと思わなかった。


 知りたかった。


 でも、目を背けていた。


 そんなとき、クリスマスの一週間前。


 サンタはいないことを親から聞いた。


 親はもう俺が信じていないと思っていただろうし、そんなものなのだろう。


 でも、辛かった。


 親の前で普通の笑顔でいるのが。


 苦しかった。


 喉から何かが溢れそうだった。


 なのに、嬉しかった。


 俺が中学生の普通の人と同じように考えられたから。


 俺は、複雑な感情のままその日は寝た。


 そんな感情を覚えているうちにこれを書きたかった。



 ここまでを見たら純粋な子だな、くらいに思うかもしれない。


 でも、そんな期待されるような純粋じゃない。


 この前の春休み。


 「メンヘラ」という言葉を初めて知った。


 その頃から携帯小説にハマっていて、「ヤンデレ」とか「共依存」とかは知っていた。


 他にもスマホの広告に出てくるような漫画を読んだりしていたから、もっとヤバイ言葉を知っていた。


 なら、何で知らなかったのか。


 知る環境になかった。


 これは良い意味でも悪い意味でも思った。


 周りの人には、純粋だと思われ、親は言わない。


 当たり前っぽいことが、俺を狂わしていた。


 同い年なのに。


 俺は大人っぽいのに。


 教えないことがその人にとって良いこととは限らないんだ。


 子供には純粋でいて欲しいなんてことを親が思うのは分かる。


 俺もそれに答えようとしていた気持ちがあったのだと思う。


 純粋だから汚したくない?


 純粋な中学生がいるわけがない。


 そんな年頃だから。


 俺はネットでしか知れなかった。


 昔の人はどうしていたのだろう。


 ふと、そんな疑問も起こった。


 俺は、純粋じゃない。


 知りたいと言ったことに答えて、相手が後悔しようとも、長年の月を見たら、知っておいた方がいいと思う。


 知らなくて生きていけるならいい。


 俺は、知りたかった。


 サンタさんもメンヘラも。


 別に、本当に知らない方が生きていけるようなことならば、つまらないからいらない。


 俺は、嘘をつかれたくないし、でも、嘘はつく。


 人のためっていう建前があるけど。


 矛盾しているけど、嘘は嘘。


 嘘は、人によって変わるんだ。


 そう思った。

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