3.黒い眼鏡、赤い髪飾り。


ああ、年を取ると涙もろくなるのは、こういう事なのかもしれない。

難儀なもんだなぁ、俺も。

目の前で泣きじゃくるのは、もう30超えた立派なレディだってのに。

娘は何時まで経っても娘、ってことかよ。

反抗してばっかだったくせになぁ。

赤い蝶の髪飾り、俺があげてもいらないって突き返してただろ。

なに今になっていっちょ前に綺麗につけてんだ。

給料ためて買ったらしく、つっと差し出された黒い眼鏡、

今は枕もとの棚の中だ。

そんなに泣いたら脱水症状でお前の方が死ぬんじゃないか?

面白い子どもだったよ、お前は。


「幸せにな」

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