皇先輩の死因

@rinkoyoake

第1話. 「さかみちメイリーン」

 私ははるか昔小説家になりたかった。そのまま私の人生はバイトによって賄われるようになった。そして30年がたったある日、私の堕落のスタート地点となった思い出の場所である大学の小説サークル「さかみちメイリーン」のBOX(部活で言う部室的なものである)が取り壊されることになったと聞いた。ソースは母校で研究職に就いた大学の同期だった。信憑性はあった。いろいろ思うところもあったが、自分の怠惰なる学生生活を打ち消して気持ちだけでも新しくなれるような気もした。楽しかったあの頃の一瞬一瞬だけの思い出に私はずっととらわれていた。それがやっと打ち切られる。解放感の塊だ。そういうわけで、私は少しばかり残った情と好奇心に突き動かされ、単発バイトで母校の清掃員に応募することとなった。何も、全く目的がなかったわけではない。卒業の時に同期の間で勝手に埋めたタイムカプセルもどきが残されているか気になった、それだけである。私が埋めたものはいまだに訳が分からない一万円札、周りもろくでもないものばかり埋めていた。そのときの面白さが全てだった。なかった。それなりに探したが見つからなかった。その代わりに面白いものを見つけた。皇先輩の日記である。

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