呼吸も出来ずに溺れゆく

結紀

呼吸も出来ずに溺れゆく

不安定な自分を立て直せない。不安感から抜け出せない。そこからまた負のループが始まる。


もがけばもがく程に水を飲み込み、体中いっぱいに溜まった水の重みで暗い底に沈んでいく。

鼻からも口からも水は入り込み、肺にも胃にも全てが水で満たされていく。


逝き先はどこ?


魚のように尾びれはなく、イルカのように早くは泳げず、シャチのように勇猛でもない。暗がりで目を凝らす事も出来ずに、幾ら暴れても足掻いても手を伸ばしても。


抗う事は叶わない。


底無しの海の中で夢を見る。魚のような尾びれでイルカのように素早く泳ぎシャチのように勇猛果敢な私を。


私を。


それは、本当に私?


思い描いていた自分。幻想の自分。幼い頃、純粋に自分はこうなるのだと。そう、だったのに。


願わくば。


この呼吸の苦しみが消えた先では、どうか安らかな私でいられますように。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

呼吸も出来ずに溺れゆく 結紀 @on_yuuki00

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る