Go to 尾行!
「キルシェどういうことポメーーーーーッ!!!!??なんで勝手にシトラスを何処の馬の骨かもわからん優男と二人っきりにしてるポメーー!??!!!?」
「まぁまぁ落ち着いて」
キルシェが宥めるように背中をトントンと叩くと、猫の本能に抗えないのかポメポメは気持ち良さそうに目を瞑り、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
「ポメぇ〜ごくらくごくらく……はっ!いけないポメ!危うく流されるところだったポメ!!キルシェ〜〜〜〜〜!!!どういうつもりか説明するポメぇえええええ!!!!!」
「はいはい、ポメポメもこれ付けて!」
「ポメッ?!」
突然、視界に映る景色が薄暗くなる。全く見えないわけではなく、余計な光や反射物が遮断されているような、不思議な視界。
「なにこれポメ……?」
前脚で自分の目元に触れて確認してみると、それは大ぶりなサングラスだった。
キルシェを見上げると、彼女も同じようなものをかけているのがわかる。どうやらお揃いのようだ。
「これでよしっと……変装完了!行くよポメポメ、レッツゴートゥー尾行ーーー!!!」
「ポメッ……!?」
尾行ってまさか……シトラスとあの男を?
ウキウキした様子でポメポメを抱っこして、キルシェは大量の買い物袋も構わずに軽い足取りでシトラスと男性の歩いて行った方向へ向かったのだった──
***
「キルシェもしかして……最初からシトラスとアイツの後を追うつもりだったらポメ?」
「あったりまえでしょー!シトラスが無茶苦茶カッコよくてミステリアスお兄さんと2人きりなんて、絶対ラブのよか……じゃなくて心配に決まってるじゃん! まぁお兄さんが普通にいい人ならシトラスの初々しい恋路を見届けて〜♡ってなるけど!!もしそうじゃなかったらあたしとポメポメで何とかしなきゃ!」
(とか言っているけど絶対好奇心の方が勝っていると思うポメ……)
恐らく親友として心配する気持ちは本当にあるのだろうが、それ以上にこの状況を楽しんでいることは容易に想像できた。
シトラスと男性はどうやらショッピングモールを出て、別の場所に向かおうとしているらしい。途中でバスやタクシーに乗ろうとしていないところを見ると、目的地は恐らく徒歩で行ける駅前の何処かだろう─余談だが、男性は律儀にシトラスの買い物荷物を持ち、歩道を歩く時はナチュラルに車道側に立っていた。
キルシェは二人から一定の距離を保ちながら、気付かれないように後をつけていく。
前方を歩くシトラスと男性は時折何か会話をしているように見えるのだが、キルシェとポメポメの位置からはその内容までは聞き取れない。
「シトラスってば、クラスの男子と話してるところもあんま見たことないんだけど……ポメポメ、あの人のこと何か聞いてない?」
「知ってるけど知らんポメ、あんな奴」
不機嫌さを隠そうともしない声色で答えるポメポメを見て、キルシェは思わず苦笑する。
「さてはやきもち〜?ポメちゃまはかわいいでちゅね〜」
「違うポメ!何ポメその呼び方は!!あとスリスリするなポメっ!」
抵抗するようにキルシェの腕の中から抜け出そうと暴れるものの、その力の差は歴然だ。
結局ひとしきり頬擦りされたポメポメは、ぐったりと疲れた表情で大人しくなった。そんな様子を微笑ましく思いながら、キルシェは再び二人の様子を伺うため視線を戻す。
「……あ、お店に入ってった!……カフェかな」
シトラスと男性が入ったのは、落ち着いた雰囲気のカフェだった。
黒を基調にしたシックな外観は高級感があるものの、出入りしている客層には若い人も多く見受けられる。外窓から中を覗いてみると、シトラスやキルシェと同じ聖フローラ学園の制服を来た生徒がカウンター席で勉強をしていたり、サラリーマンらしき人がノートパソコンを開いて作業をしていたりする姿も目に入った。どうやら大人っぽい外観ではあるものの、高校生でも利用しやすいお店らしい。
「よっし、ポメポメ行くよ!いざ、潜入ーーーーー!」
シトラスと男性の後に続くように、ポメポメを抱き抱えたキルシェもその店内へと足を踏み入れようとした─その時だった。
「あの、すみませんお客様」
「へ?」
突然背後から声をかけられ振り向くと、そこにはエプロンをつけた若い女性が立っていた。このカフェの店員らしい彼女は、困ったような笑顔を浮かべてキルシェを見つめている。
「そちらの猫ちゃんですが……当店はペットを連れてのご来店はお断りさせていただいておりますので……」
そう言われて初めて、自分達がどういう状況に置かれているのかを理解したキルシェとポメポメはハッと我に返る。
(そうだったーーー!普通の人から見たらポメポメってただの猫じゃんーーーー!!!)
今更気づいたところでもう遅い。一旦ここは仕切り直さなければ。
「ご、ごめんなさいおねーさん!一旦出直しまーす!!」
そう言うと、キルシェは慌ててその場から走り去った。
「はぁ……うっかりしてたぁ……」
路地裏に逃げ込んだキルシェは大きく息を吐いた。
「ポ、ポメポメはペットじゃないポメ……」
「わかってるよ。でも人間の世界じゃ猫ちゃんは大体人に飼われてるから、そう思われちゃっても仕方ないんだよねぇ……」
そう言って腕の中の小さな友人を見つめる。いつもシトラスが学校に連れて行く時のように身体を小さく縮めてもらってカーディガンのポケットに入れることも考えてみたが、それだとポメポメは店内の─もとい、シトラス達の様子を見ることは出来ないだろう。
かといって今の姿では猫だと認識されて今のように入店拒否される……どうしたものかと考え込んでいるうちに、ふとあることを思い出した。
「ん……待ってよ……そっか!!」
「ポメ?」
何かを思いついたらしいキルシェは、うんうん、と一人納得しながら笑みを浮かべる。
「すごい、キルシェちゃん天才かも!よし、これで行こう!」
キルシェはそう言って、先ほどショッピングモールで買い込んだアイテムの入った紙袋をガサガサと漁って何かを取り出すのだった。
数分後、
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